中国の経済発展がより洗練され成熟した段階に入っていくなか、20世紀半ば以降当然と考えられてきた現状の多くが課題に直面し始めている。国内市場が大きく貯蓄額が莫大であることから、中国の場合は単純にお決まりのルールを辿るというわけにはいかない。中国とその企業は競争力を増しており、経済規模の大きさや製品の差別化、新規参入者に対する障壁の高さといった様々な競争優位性を活かして、多くの従来の規範を破壊している。

筆者は以前にも中国への投資、そして投資家がバランスの取れた包括的な長期投資の視野を持つことが重要である理由について述べてきた。年を追うごとに、筆者は、中国が現代の大いなる破壊者であり、同国企業が多くの産業において急速に競合する脅威となってきているとの確信を強めている。当社では、投資家はもはや中国およびグローバル市場に対するその影響を無視することはできないと考える。

他のアジア諸国とは異なる中国の経済的興隆

中国は2001年にWTO(世界貿易機関)に加盟することでグローバル経済へのより緊密な統合の第一歩を踏み出し、その後何年にもわたって爆発的な経済成長を遂げてきた。1999年から2013年の間に、中国のGDP(国内総生産)は8倍の規模へと成長した。2000年には2500万世帯であった中国の中間所得層は、現在は2億5000万世帯と10倍に増えている1。1980年以降の中国の経済的成功は、日本や韓国、シンガポール、台湾といったアジアの経済先進国の成長シナリオに似た道を辿ってきた。安価な労働力が豊富であることにより輸出主導で製造業が発展する。貯蓄率が非常に高いため多額の投資資本が生み出されるとともに、金利を低位に規制する金融抑制、為替レートを過度に安い水準に管理するシステム、資本規制といった仕組みが全て、その資本の国内経済への再投資を促進する。初期の発展に貢献する他の要因として、用地取得補助、緩い環境規制、製造業者に有利な労働法が挙げられる。

しかし、アジアの経済先進国が辿った成功シナリオと中国の軌道の間には、顕著な違いが次第に表れてきた。当社では、このことにより、他のアジア太平洋諸国で見られたよりも高い確率で、中国からグローバルな「業界の巨人」が出てくるのではないかと考えている。

中国の積極的なインフラ投資は、製造業や輸送、商品を海外市場に移動させるのに必要な物流における効率性の向上につながった。例えば、1997年に5,000kmであった中国の国道システムは、2014年までに112,000km(米国の州間道路システムの半分)にまで拡大した。2000年に世界第19位の大型港であった上海は、今や世界最大のコンテナ港となっており、2位以下の6ヵ国を合わせたよりも大きい。このインフラの増強はまた都市化も促進し、中国の成長を育む労働力の提供につながっている。今後、中国は「一帯一路」構想への取り組みを支えていくが、この取り組みには、アジア、アフリカおよび欧州にわたる貿易を改善するために、65ヵ国のインフラへの資金提供が含まれる。これらの国々は合わせると世界の人口の6割を占めることから、グローバルな貿易関係や規模の経済が更に強められる可能性が高まっている。

加えて、中国国内市場の総規模は他の国々に比べて大きい。米国の国内市場の大きさは、20世紀半ば以降の米国企業の優位性に関し、その理由の1つとしてしばしば言及される。経済発展や規模の経済からのメリット獲得においては、市場規模が物を言う。巨大な国内消費市場を開拓することによって、中国企業は多くの業界において世界的な競合相手として台頭してきており、1人当たりGDPが、中間層消費者の多くが自動車やそれを超える大きな買い物をできるようになる12,000米ドルのハードルを上回ってからは、それが特に顕著だ。一方、市場規模が大きいことは、国内業者間の競争も激化させる。これによって優秀な企業は、世界の舞台での競争に打って出る前に、国内の舞台での優位性を獲得すべくスキルを磨くことができる。このような国内での競争が、前世紀に米国企業を多国籍企業へと成長させた要因だ。

中国はまた、海外のメーカーにとって本質的に競争しにくくなり国内企業に有利になるような産業政策を取っている。もちろん、これは新しい概念ではない。アジア諸国はみな、工業化の初期の数年において、似たようなことを実施してきた(例:自動車の輸入、主要産業の保護、資本規制など)。しかし、中国が異なるのは、重商主義的および保護主義的な傾向をかなり露骨にしているということだ。中国に特有な点として、国内市場の規模のメリットを利用しながらその市場について保護主義的なスタンスを取り、多くの場合において独特の基準を設けて新規参入障壁をより高くしてきた。UnionPay(銀聯)による銀行系クレジットカードの独占や、中国のメーカーやインターネット検閲当局が支持しているTD-LTE通信基準などがその例だ。そのような戦術によって、中国は世界の競合相手を締め出すか、または強制的に自国のルールに従って競争させている。

競争障壁は2つの方法で打ち立てられている。まず1つは、その業界において海外の業者が不利になるよう、あからさまな取引ルールやそれに代わる基準を設けることだ。もう1つは、国有企業や政府が選んだ国内業者に対し、国内市場で成功できるような競争優位性を付与することだ。他の国々が不満を示す頃には、時すでに遅しというわけである。

中国は今世紀の大いなる破壊者

当社が考えるに、中国の本心として、同国の多くの反競争政策は、第2次世界大戦以後に米国がその影響力を拡大するにつれ確立してきた現状に対抗するよう、作られているのだろう。アジアインフラ投資銀行(AIIB)や「一帯一路」、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)といった取り組み、そして気候変動において取っている主導的役割を見れば、中国の地政学的野心は非常に明確だ。

中国は、米国と米国がその規模や野心、豊富な資本が故に様々な業界で構築してきた多くの現状に対抗することを恐れてはいない。更に、中国は過去の経済モデルが不在で政府が保護・優遇する必要がある既得権益が比較的少ないことから、最新のイノベーションへと飛躍しやすい。この「リープフロッグ(馬跳び)効果」によって、中国では他のどの国よりも早いスピードでスマートフォンが固定電話に取って代わっている理由が説明できるのかもしれない。14億の人口を抱える中国は、世界最大のインターネット・ユーザー基盤を有しており、この基盤が国内ブランドのスマートフォン・メーカーにとってAppleやSamsungから市場シェアを奪うことを可能にしている。同様の急速な取り込みが、インターネットの普及、eコマース、人工知能(AI)、フィンテック、オンライン決済、ビッグデータやその他の破壊的技術にも見られている。

実際、中国政府は破壊的技術を同国のような新興経済国が既存の世界秩序に取って代わる機会として見ているため、新技術の採用を奨励しているようだ。これは、中国が過去15年間で調査・開発(R&D)支出を大幅に増やしていることにも窺われ、医療業界向け出版社のJCI2によると、2000年には米国の12%相当にすぎなかった中国のR&D予算は、今や拡大して同75%相当となっている。当社では、この点で注目すべき分野の1つが電気自動車(EV)であると考えている。中国は、国内の全自動車メーカーに対し、(まさに米国がパリ協定から離脱しようとしている時に)世界の市場の中で最もレベルの高いEV生産規制を設けようとしている。西側の幾つかの政府が化石燃料の気候変動への影響に関する科学的根拠の存在について議論している一方で、中国政府は同国を走る車の大半が電気自動車または無公害車になる日をすでに見越している。そのように先を見通すことに焦点を当てている中国は、(バッテリーや再生エネルギーに加え)自動車の主要輸出企業となるための種を植えているのかもしれない。

投資家が無視できない中国の拡大する影響

中国の経済的興隆はこれまでのところ、WTOへの加盟後や貿易自由化による急速なグローバル化を中心に、概ね予想されたパターンを辿ってきている。しかし、経済の規模や米国とは異なる哲学が故に、中国は現状を脅かし始めることができる最初の経済大国となっている。アジアへのインフラ関連貸し付けにおいてアジア開発銀行(ADB)に、準備通貨のステータスにおいて国際通貨基金(IMF)に、あるいは「一帯一路」計画において地域の影響にそれぞれ対抗するにあたって、中国は多くが予想したよりもはるかに大胆かつ革新的で、将来を見据えていることがわかってきた。同国の外交や政治的野心、産業政策(中国製造2025)は全て、首尾一貫して示されているとともに相互に補強し合っている。

では、投資家にとってのインプリケーションは何であろうか。もし中国が「中所得国の罠」に陥ることなく飛躍的成長に成功し、その1人当たりGDPをOECD加盟国の最低必要水準にまで押し上げることができれば、中国の中間所得消費者層は米国とEU諸国を合わせた規模の2~5倍となる。「一帯一路」の取り組みが成功すれば、アジアは世界の中間層において2020年までに50%、2030年までに66%を占めることになると見られる3

より保守的な想定に立っても、中国の消費者が世界的ブランド企業にとってますます重要なターゲットとなるのは明らかだが、一方では中国のブランド企業は国外市場での影響を強めていくだろう。中国の消費者が自動車から映画製作、食品生産に至るまで、あらゆるものの趣味・嗜好に影響を与え始めるにしたがって、消費者志向商品の大手製造業者はこの莫大な市場に順応・適応せざるを得なくなるものと思われる。

これまでのところ、グローバル投資家に対する中国の影響は、コモディティ・セクターを中心とするマクロ要因に集中してきた。これからの新しい命題は、中国が多くの業界において大いなる破壊者となることにより、消費パターンの需給に対するその影響がミクロ経済レベルにまで及ぶだろうということだ。したがって、銘柄選択を行う運用者にとっては、中国の動向を追わないことが今後は実際にリスクをもたらすことになるかもしれない。現在は知られていない多くの中国企業が、世界の様々な業界で急速に競合の脅威となりつつある。たとえ中国には投資する気がないとしても、グローバルなマインドを持つ投資家はみな、中国の競合を認識し、多くの業界において中国のもたらす破壊に備えるべきべきであろう。

1. Gavekal Research、「Growth Slows, Affluence Accelerates」
2. JCI Insight誌、「Globalization and changing trends of biomedical research output」( https://insight.jci.org/articles/view/95206/table/2)
3. OECD開発センター、Homi Kharas著「The Emerging Middle Class in Developing Countries」