フォローアップ・メモ

2003年5月19日

「りそな銀行」の公的資金注入申請の方針が
及ぼす影響について

【要約】
「株式会社りそなホールディングス」(以下、「りそなHD」といいます。)の子会社である「株式会社りそな銀行」(以下、「りそな銀行」といいます。)は、5/17、2003年3月期決算で過小資本に陥るとして、公的資金の投入を政府に申請することを決定。同行は、内閣総理大臣より、預金保険法第102条第1項に定める第1号措置(金融機関の自己資本の充実のために行う預金保険機構による株式等の引受け等)の必要性の認定を受けた後、預金保険機構に対して公的資金の申込みを行う方針を決定した。
今後金融庁は、「りそなHD」および「りそな銀行」が新たに策定する経営健全化計画の見通しを踏まえながら、最終的な投入額を決める。資本注入の規模及び内容に関しては未定(平成15年5月17日現在)であるものの、その規模は2兆円相当とみられ、預金保険機構が準備している公的資金枠(15兆円)から、政府の関与を強める議決権のある“普通株”などを引き受ける形で投入されるのではないかとみられている。また日銀も、5/17に臨時の政策委員会を開催し、特別融資の実施を決めた。
これにより「りそな銀行」は、国内初の「特別支援金融機関」となり、国の管理下で経営の抜本的な改善を迫られることになる。
(※)預金は全額保護される見通し。
「りそな銀行」による予想外の公的資金投入申請は、短期的には市場に影響を与えると思われるが、政府・日銀によって、金融システムの安定を確保するために万全を期すとの明確なスタンスが打ち出されており、連鎖的な“金融危機”には繋がらないと考える。
当面の株式市況については、りそなの件を措いても、最近発表された内外経済統計の弱さから、もともと株価調整が起こり易い地合いにあると思われる。政府が情報発信等を的確に行ない、市場に不要な動揺を起こさせないかどうかが鍵となろう。

「株式会社りそなホールディングス」(以下、「りそなHD」といいます。)の子会社である「株式会社りそな銀行」(以下、「りそな銀行」といいます。)による公的資金投入の申請は、今後の日本の金融業界を巡る重要な動きの一つと考えられます。そこで、今回の“フォローアップ・メモ”では、「りそな銀行」による公的資金投入申請の方針に至る経緯と、これが今後の株式市況に、どのような影響を及ぼすかについて考えてみたいと思います。

 

1. 「りそな銀行」が公的資金投入申請の方針に至った背景

 5/17、「りそなHD」の子会社である「りそな銀行」は、2003年3月期決算で過小資本に陥るとして、公的資金の投入を政府に申請することを決定。同行は、内閣総理大臣より、預金保険法第102条第1項に定める第1号措置(金融機関の自己資本の充実のために行う預金保険機構による株式等の引受け等)の必要性の認定を受けた後、預金保険機構に対して、公的資金の申込みを行う方針を決定しました。

 これを受け今後金融庁は、「りそなHD」および「りそな銀行」が新たに策定する経営健全化計画の見通しを踏まえながら、最終的な投入額を決めてゆく運びです。資本注入の規模及び内容に関しては現時点未定(平成15年5月17日現在)ですが、同行が経営の健全性を示す目安として求められている自己資本比率4%(国内基準)を大幅に上回る水準を確保するために、2兆円相当規模の資本注入が行われるとの見通しです。資本注入の方法としては、預金保険機構が準備している公的資金枠(15兆円)から、政府の関与を強める議決権のある“普通株”などを引き受ける形で投入されるのではないかとみられています。また同日に日銀も、臨時の政策委員会を開催し、特別融資の実施を決めました。

 こうした結果、「りそな銀行」は、国内初の「特別支援金融機関」となり、今後、国の管理下で経営の抜本的な改善を迫られることになります。

「りそなHD」は、「地域金融機関の連合体(スーパーリージョナルバンク)」との理念を掲げ、関西を地盤とする「大和銀行」と関東(埼玉)を地盤とする「あさひ銀行」を母体として発足した金融持株会社で、本年3月からは、大都市圏をカバーする「りそな銀行」(本店・大阪市)と、埼玉を地盤とする地域銀行「埼玉りそな銀行」(同・さいたま市)の2つの子会社が営業を開始していました。うち、「りそな銀行」は、国内のみで業務を行なうリージョナルバンクとしては最大級の規模を誇っておりました。

 今回、「りそな銀行」が公的資金注入の申請方針に至った主な背景には、(1)株価下落による保有株式の評価損拡大と、(2)2003年3月期決算の会計監査において、監査法人が“税効果会計”適用の厳格化を求めた結果、による当期利益における赤字額の大幅な拡大がありますが、特に(2)の“税効果会計”の適用の厳格化、が、大きく影響したと思われます。

 ここで、その“税効果会計”について少し詳しく解説しますと、企業は、不良債権処理のために貸倒引当金を計上した場合、その引当金が損失として確定するまでは税法上の損失とは認められないのですが、一方では、一旦税金を支払わなければいけない場合があります。しかし、損失が確定し税金の払い過ぎが認められた場合、これを向こう5年間の収益のうち当該損失の範囲内の部分にかかる税金を支払わないことで調整します。こうした税法上の処理を見込み、将来支払わずに済む税金額をあらかじめ「繰延税金資産」として資産に計上する会計処理を“税効果会計”と言います。そして、税効果会計によって計上した資産額を自己資本額に加えることができます。

 実は、2002年秋に竹中金融・財政担当相のもと発足した「金融分野緊急対応戦略プロジェクトチーム」(竹中PT)において、この“税効果会計”を巡り、銀行の将来の収益計画とそれに基づき算出されている税効果額の妥当性、および税効果額を加えた自己資本額の取扱いについて論議が交わされ、その後打ち出された“金融再生プログラム”(竹中プラン)では、“税効果会計”を見直す方針が打ち出されました。

 また、2003年3月期決算より「ゴーイング・コンサーン」(企業の存続可能性)の開示制度が導入され、監査法人の会計監査がより慎重になされている模様です。おそらく、このような経緯が、今回の監査法人による“税効果会計”の適用厳格化に繋がったとも考えられます。

 因みに、4大メガバンクの2002年9月中間期における自己資本比率、および税効果会計の影響額は以下のとおりとなっております。

2002年9月中間期自己資本比率
 自己資本比率
(%)
自己資本
(億円)
連結繰延税金資産
(億円)
自己資本に対する
繰延税金資産の比率
(%)
三菱東京フィナンシャル・グループ10.4960,02011,20718.67
UFJホールディングス11.2054,38615,73328.93
三井住友フィナンシャルグループ10.3765,33419,99130.60
みずほフィナンシャルグループ10.4284,83921,86425.77
りそなホールディングス7.9221,6158,36238.69
※三井住友フィナンシャルグループは三井住友銀行、
 みずほフィナンシャルグループはみずほホールディングスの数値

 

2.「りそな銀行」の公的資金注入申請の方針が及ぼす影響

 今回、「りそな銀行」が公的資金注入の申請決定に至った経緯は、市場にとっては予想外であったこともあり、短期的には株式市場に動揺が走るものと思われます。しかしながら、政府、日銀の素早い対応による“金融危機を起こさせない”という強く明確なメッセージから、“金融危機”といった最悪なシナリオは回避されると考えられます。

 今後は、「りそな銀行」への資本注入額の規模や内容、減資の行方ほか、前3月期をなんとか乗り越えたとされる4大メガバンクの決算(5/26に発表予定)における税効果会計の影響など、「りそな銀行」の行方と他行への波及効果を注視しておく必要があるでしょう。

 一方、内閣支持率の高さなどから一旦後退していた政治リスクが、今回の件をきっかけに再度高まる懸念があります。自民党・守旧派は、株安を放置していた小泉政権の失政として、政策転換(財政追加など)や竹中金融・財政担当相の更迭をはじめとした内閣改造をこれまで以上に強く要求していく方向を打ち出しております。仮に竹中金融・財政担当 相の更迭が現実のものとなった場合、金融・経済政策に一時的な空白期間が生まれる可能性があり、これを嫌気する形で、昨今日本への投資を徐々に再開してきた海外投資家の資金流入が停滞することが考えられます。

 また、当面の国内株式市況については、先週発表の内外経済指標(日独のGDP、米国の物価統計など)の弱さから調整しやすい地合いにあると思われ、短期的には株価の波乱要因と想定せざるを得ません。ただし、過去不十分であった政府による情報発信が的確になされ、市場との対話が十分に行なわれれば、市場心理の改善につながることを期待できます。

以上

 
日興アセットマネジメント株式会社
執行役員調査部長 馬渕治好



当サイトは、日興アセットマネジメントが経済、市況他、投資環境に関する情報をお伝えすること等を目的として作成した資料であり、証券取引法、投資信託及び投資法人に関する法律に基づく開示資料でも特定ファンドの勧誘資料でもありません。また、当サイトに掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。
当サイトの情報は信頼できると判断した情報に基づき作成されていますが、情報の正確性・完全性について日興アセットマネジメントが保証するものではありません。
当サイトに掲載されている数値、図表等は、特に断りのない限り当サイト作成日現在のものです。また、当サイトに示す意見は、特に断りのない限り当サイト作成日現在の弊社の見解を示すものです。
当サイト中のいかなる内容も、将来の市場環境等の変動を保証するものではありません。