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2012年2月2日【Vol.221】 都市化の加速で中国の需要がモノからサービスへ 中国国家統計局の発表によると、2011年末時点、都市部人口が初めて農村部人口を上回りました。具体的には、総人口13億4,735万人のうち、都市部人口が6億9,079万人、農村部人口が6億5,656万人です。世界一の人口規模を誇る中国からみれば、前者が後者より3,423万人多いのは僅差にすぎないかもしれませんが、日本の首都圏の総人口に相当する「僅差」なのです。また、中国の経済や社会にとってもこの「僅差」は、中国の新たな変化の始まりを示唆していると言えるかもしれません。 一国の経済や社会の近代化の度合いを測る一つの指標として、都市部に住む人口の割合を示す都市化率がよく使われます。産業構造が第一次から第二次へ、そして第三次へと変化するに伴ない、労働人口が農村部から都市部へ移転した結果、都市化率も上昇してくるのは一般的な傾向です。高度経済成長期に大きく都市化率を上昇させた日本はその好例でしょう。 次ページのグラフは中国の総人口に占める都市部と農村部の人口比率の推移を示すものです。都市部人口比率が右肩上がりの傾向を辿っているのは、日本と類似していますが、中国では、その上昇ペースが緩やかとなっているのが特徴と考えられます。 中華人民共和国が成立した1949年には都市化率は10%程度でしたが、2011年になると約51%まで上昇しました。しかしながら、これは、日本の1960年代の水準にすぎません。とりわけ、中国では、1978年以降、改革・開放政策の導入を契機に、その後約30年間、年平均で2桁近いGDP成長率を続けてきました。では、2010年には、GDP規模で日本を抜いて世界2位に躍進したにもかかわらず、なぜ、中国の都市化率は低水準に留まっているのでしょう?その背景には、戸籍制度という大きな障害があると考えられます。
※グラフ・データは過去のものであり、将来の運用成果などを約束するものではありません。 中国では、数千年前から既に戸籍制度が導入されていたと推測されていますが、現行の戸籍制度は1958年に「中華人民共和国戸籍登記条例」の施行によって導入されたものです。国民を農村戸籍と都市戸籍に分けて管理するのが、この制度の最大の特徴です。しかし、1985年までの20数年間、農村戸籍の保有者から移動と職業選択の自由を奪い、機会の不平等や所得格差をもたらしてきたと言われるこの戸籍制度は、想像を絶する過酷なものだったと考えられます。なぜなら、大学進学や国有企業への就職などの「狭き門」をくぐる方法以外は、農村戸籍の保有者が都市部に定住することはほとんど不可能であり、また、その身分は、子供まで受け継がれる世襲的なものだったからです。 1976年の毛沢東氏の死去に伴ない、この厳しい国民管理制度が拘束力を失い始めました。都市部への出稼ぎ労働者が増え始めたのを受けて、1984年に身分証明書制度が導入され、戸籍登録地以外の地域での居住が認められるようになりました。その後、1990年代前半に、食糧などの配給制度が廃止されたことに加え、2001年に中国のWTO加盟実現で海外企業が大量に進出している沿海部が農村部からの出稼ぎ労働者の受け皿としての役割を果たした結果、戸籍登録地以外の地域で常住している人口数が、2011年末時点で、2億人強にまで達したと言われています。 都市化率の上昇は中国の経済や社会に様々な変化をもたらしています。経済面では、1990年以降、耐久消費財や住宅、インフラ整備などのブームが相次ぎ、中国経済の高成長の原動力となっています。社会面では、都市部での定住者が増えるにつれ、これまで逆らえない宿命的なものだと受け止めざるを得なかった差別的な待遇に対し、現行の戸籍制度の改革を求める声が日増しに高まっています。これに対し、政府は、一部の都市で農村戸籍と都市戸籍の一本化改革に乗り出しましたが、こちらは難航していると伝えられています。幼稚園や学校、病院などの公共施設が人口の急増に対応しきれないのが背景にあります。また、北京や上海といった大都市のみでなく、内陸部にある中小都市ですら、交通渋滞が常態化し、ごみや汚水処理施設の不足も深刻化しています。 第十二次五ヵ年計画(2011~2015年)期間中、政府は都市化率の更なる上昇をめざす方針が打ち出されており、都市人口の増加は政府の想定以上のスピードで進行すると予想されます。1994年、米国の研究者であるレスター・ブラウン氏が「だれが中国を養うのか?」と問題提起し、中国の食糧問題に警鐘を鳴らしました。食糧や水、エネルギーなどの確保は人口大国にとっていずれも喫緊の課題ですが、今後、中国人の都市生活、言い換えると、中流社会の到来にいかに対応するかも大きな課題となるでしょう。90年代と比べてモノ不足が大きく改善する中、教育、医療、介護、外食、レジャー、情報など、より便利な生活、より質の高い生活に寄与するサービス需要が本格的に拡大する段階に入ると考えられます。 私どもでは、日本の都市化の経験を参考にしながら加速する中国の都市化に期待し、新たな投資機会の発掘につなげたいと考えています。 チーフ・エコノミスト |