5月下旬に、横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展」を見学してきました。この展示会は、自動車、自動車部品などの関連企業が、最先端の技術を発信する場で、新型車やコンセプトカーが発表される「モーターショー」のような華やかさはないものの、今後の自動車業界の方向性を確認するには非常に有益な機会となっています。

 今回の見学で改めて実感したことは、ここ数年のトレンドである、環境規制対応、安全対策、情報化の3つのテーマの重要性がさらに高まっており、これらを実現するために電装化の動きが加速していることです。将来的には、自動運転の実現も視野に入れていることから、車載用電子機器の市場が大きく拡大する可能性が高まっていると思われます。

 自動車の電装化の動きを捉えようと、多くの電子部品関連企業が、この展示会に出展していました。前回のメッセージ(「ITバブルから15年」)では、海外ブランドのスマートフォンに多くの日本企業の電子部品が採用され、成長を続けていることをご紹介しましたが、スマートフォンの普及が進み、長期的には成長ペースが鈍化する可能性を睨んで、各社とも成長性が高い車載向け電子部品の開発に注力しています。車載用の電子部品は、家電製品やパソコンなどの電子機器向けと比較して、耐熱性、耐久性などの面で高い品質が求められており、日本企業が技術優位性を発揮できる可能性が高い分野であると考えています。

 特に注目している分野は、衝突防止用自動ブレーキや、車線逸脱防止などの「先進運転支援システム(ADAS)」に関わる電子部品です。このシステムでは、自動車の周囲の状況を認識するために、カメラ、レーダー、センサーなど、数多くの電子部品が使われています。これらは、自動運転においても必須の技術であることから、自動車、自動車部品、電子部品などの各社が注力しています。日本の電子機器、精密関連企業は、2000年代の初頭に高い画像技術や小型化技術によって、デジタルカメラの分野で強みを発揮してきましたが、スマートフォンの登場によってデジカメ市場が大幅に縮小する中で、苦戦を強いられてきました。しかし、衝突防止などの安全技術や、将来の自動運転技術では、人間の目の役割を担う機能として、カメラやイメージセンサーなどが複数使われる見通しで、デジカメに変わる新たな成長分野となる可能性が高いとみられています。展示会場では、サイドミラーの代わりに小型カメラを取り付け、社内のモニターで後方を確認する製品などが紹介されていました。サイドミラーをなくすことで、空気抵抗が減少し、燃費が向上することに加え、ドライバーの目線の動きが少なくなることや、死角が減ることで、安全性が高まることが期待されています。規制の見直しで実用化が可能になれば、カメラの新たな用途として注目が集まるとみられます。

 ジパングでは、従来からグローバルな競争力が高い分野として、電子部品関連企業を重点投資対象としていますが、スマートフォン向けに続く大きな柱として、足元では、自動車の電装化による恩恵を受けるとみられる企業に注目しています。具体的には、モーター、コンデンサー、イメージセンサー、カメラユニット、レンズ、半導体などの分野で強みを持つ企業などが挙げられます。また、日本や新興国での販売が低迷していることなどを受けて、年初来の株価パフォーマンスが相対的に見劣りしている自動車関連企業についても、環境対応や、安全対策装備の充実などで、新車の魅力を高め、販売増に結び付けることができる企業の選別を行なっていく方針です。