8月の株式市場は、世界的に投資家のリスク回避の動きが強まる展開となりました。原油価格をはじめとする商品の価格が年初来の安値水準となったほか、米国をはじめとする主要先進国で株価の調整が拡がりました。このような中、これまで堅調に推移していた日本株式も下落傾向となり、日経平均株価は、25日に17,806円と、6月の高値から約15%値下がりする状況となりました。

 今回の株価調整の背景は、中国を中心とする新興国の成長率低下に対する懸念と、原油など商品市況下落が、世界の景気や金融市場に与える影響への警戒感が強まったことにあると考えています。6 月後半から7月上旬にかけて急落した後、中国政府の株価・景気対策に支えられていた中国株式が、経済指標の悪化などから、再び下落基調となったことで、先行き不透明感が一気に高まりました。さらに直近では、朝鮮半島の緊張や、ギリシャの政治情勢なども、投資家心理に悪影響を与えた可能性があります。

 当面の日本株式は、中国の株価や経済指標、米国の金融政策、商品市況や新興国通貨などの動向を受けて、不安定な推移が続く可能性があります。ただし、以下の3 つの要因から、日本株の下値は限定的であり、外部環境が落ち着いた局面での反発力は大きいと考えています。

① 好調を維持する企業業績

2016年3月期の企業業績は、2桁増益が予想されており、昨年度に続いて最高益更新が見込 まれています。特に、賃上げなどを背景とした消費の回復や、好業績を背景とした設備投資 の拡大が、収益拡大のけん引役になると期待されています。発表が終わった、2015年4-6月 期の決算でも、業績予想に対して順調な進捗が確認されています。

② 日本企業の構造的な変化

「スチュワードシップ・コード」と、「コーポレートガバナンス・コード」が導入されたことなどを背景に、日本の企業統治改革が動き始めました。これを受けて、多くの企業が、資本効率を重視した経営にシフトし、設備投資や企業買収などの成長投資や、株主還元を積極化し、ROE(自己資本利益率)を高める努力を始めたことは、構造的な変化として中長期的な株価の下支え要因になると考えています。

③ 割安感が強まった株価指標

足元の株価下落で、日本株式の予想PER(株価収益率)は低下しており、主要国との比較や、過去の水準との比較でみても割安感が出てきています。今期の業績予想が上振れる可能性や、企業経営の構造的な変化が来年度以降の収益を押し上げることへの期待などを考慮すると、さらに割安感が強まることから、外部環境が落ち着いた局面での上値余地は大きいと考えています。

 このような市況見通しを背景に、ジパングでは今回の世界的な株価調整局面で、業績が堅調に推 移しているにもかかわらず大きく売り込まれた銘柄を積極的に買い付けています。特に、従来から注目していた、内需関連の小売、サービスなどの関連企業については、外部環境の影響を受けにくく、好業績を維持できる可能性が高いと考え、保有比率をさらに高めることを検討します。一方で、これまでも保有比率が低かった、素材・資源関連については、株価が大きく値下がりしているものの、中国経済の不透明感が当面は続くと想定して、投資を控える方針です。また、輸出関連企業については、足元、電子部品、FA(ファクトリーオートメーション)、自動車など、日本企業の競争力が高い分野に絞って保有していますが、新興国経済が業績に与える影響や、株価水準を見極めながら、やや慎重なスタンスで、銘柄を厳選して投資を行なう方針です。

 中長期的に見れば、非常に魅力的な株価水準まで値下がりした銘柄が増えていますので、個別企業の調査を徹底することで、好業績を背景に今後の市況回復局面で大きく上昇するポテンシャルのある企業の発掘に努めたいと考えています。