自動車産業は、歴史的に大きな変革の時期を迎えています。電気自動車、自動運転などの開発は、長期的に強化される方向にある燃費規制、排ガス規制、安全規制への対応に後押しされ、加速しています。今回は、これらの規制に対応した動きが、完成車や自動車部品とその周辺業界に及ぼす影響と、関連銘柄に対する当ファンドの投資スタンスについてご紹介します。

 まず、燃費規制と排ガス規制です。燃費規制については、エネルギー消費とCO2(二酸化炭素)排出の削減を目的として進められています。これまでは、環境意識の高い欧州が先行して厳しい規制を導入してきましたが、最近では環境汚染問題が深刻化している中国などでも規制強化の動きが進んでおり、世界的な流れになっています。各自動車メーカーは、燃費効率の高いエンジンンの開発や車体の軽量化に取り組んできましたが、ガソリン車やディーゼル車の燃費向上だけでは、規制に対応することが難しくなってきました。排ガス規制については、米国最大級の自動車市場であるカリフォルニア州において、販売台数の一定比率を排出ガスの出ない電気自動車などにしなければならない「ZEV(ZeroEmissionVehicle)規制」が2018年から拡大されます。そのため、電気自動車の開発が急ピッチで進められていますが、航続距離の制約などの問題が残っているため、普及にはまだ時間がかかる見込みです。このような中、過渡的な技術として注目されているのが、充電が可能なプラグインハイブリッド車です。プラグインハイブリッド車は、ZEV規制に対応できる他、燃費規制の基準となるメーカー別のCO2排出量を計算する際に有利であるなど、従来のハイブリット車と比較して規制対応の面で優位性があることから、今後各社で導入が進む可能性があります。この観点からは、プラグインハイブリッド車の開発で先行する完成車メーカーや、車載用の電池、モーターなどに関連する企業に注目しています。

 次に、安全規制です。これについても大きな変化が見られます。従来は、衝突時の安全性能が重視されてきましたが、今後の規制の重点は、「ぶつからない」ことをめざす、予防安全に移っています。日本では、自動ブレーキ搭載車の普及が進んでいますが、欧米では今後自動ブレーキの搭載が義務化される予定になっています。また、新興国では、二輪車による死亡事故の増加が大きな問題となっており、事故防止効果が高いとされているABS(アンチロックブレーキシステム)の装備を二輪車に義務化する規制の導入が進んでいます。ブレーキシステムは、今後の自動運転実用化に向けても重要な役割を担っており、関連企業に注目しています。

 このように、規制強化への対応に後押しされて、電動化、自動化の動きは長期的に続くものと見られます。その過程では、電池、モーター、センサーなど、新たに需要が増えていく部品がある一方で、エンジンやトランスミッション関連の部品など、徐々に置き換えられてしまう可能性がある部品もあります。そのため、長期的な視点での投資にあたっては、電動化や自動化で新たに採用される部品や、付加価値が上がる可能性のある部品に関連する企業に絞って選別投資を行なう必要があると考えています。具体的には、ブレーキ、ステアリング、電池材料、モーター、車載用半導体、車載カメラなどの関連企業に注目しています。また、自動運転への対応など、自動車のIT化が急速に進展する中で、自動車メーカーは社内に不足するリソースを外部から補う必要が出てきています。こうしたことから、完成車メーカーと提携しているIT関連企業や、技術者派遣でメーカーの研究開発をサポートする企業など、幅広い分野で関連する企業に注目していきたいと考えています。