2016年度の決算が出そろいました。全体としては、2017年3月期の実績、2018年3月期の予想とも大きなサプライズはなく、堅調な業績が続いています。今期の予想については、コストの増加などを保守的に見積もっている企業が多く、上振れの余地が十分にあると考えています。今回も多くの決算説明会に参加しましたが、その中で変化の兆しを感じたのが、建設セクターでした。

 建設セクターは、バブル経済崩壊以降、20年近く業績の低迷が続きました。しかしながら、2020年の東京オリンピック開催に向けたインフラ整備が進められていることや、景気の回復を背景に、今回の決算では、1990年代前半に記録した過去最高益を更新する企業が出始めました。これは、工事案件が増えたことで競争が緩和し、無理な安値受注をする必要がなくなったことなどから工事採算が大幅に改善したほか、一時期心配された人手不足による労務費の高騰や資材費の上昇も一巡し、利益が出やすい状況になっていることが背景と考えられます。2017年3月期の利益水準が高かったことから、多くの建設関連企業では2018年3月期について減益を予想しています。ただし、事業環境が特に悪化している状況にはないことから、上振れの余地が十分にあるとみています。株式市場では、減益予想の発表を悪材料出尽くしと捉えて、決算発表後に株価が大きく上昇する建設セクターの銘柄が多くみられました。

 2020年に向けては、オリンピック関連の工事が本格化することに加え、インバウンド需要を背景としたホテルの建設ラッシュなどもあり、好環境が続くと見込まれる一方、一部には、オリンピック後の反動減を懸念する声もあります。ただし、多くの建設関連企業との面談を通して、オリンピック後に建設需要が大きく落ち込む可能性は低いとの印象を持っています。例えば、オリンピック後には、首都圏を中心とした大型の再開発案件が期待されています。2020年の開業が予定されている品川新駅(仮称)を中心としたエリアや、東京駅周辺の八重洲、大手町エリア、渋谷駅周辺など、大型のプロジェクトが計画されています。また、政府が進める国土強靭化計画などによって、道路、橋梁、トンネルなどの老朽化したインフラの更新や、防災対応の工事が進められることも、建設需要を下支えする見通しです。このように、一定の建設需要が見込まれる一方で、建設業の就業者数は減少傾向が続くことが想定されていること、そして、昨今の「働き方改革」で労働時間も削減されることから、工事能力が制限されるため、過去のような工事量を求める安値受注が起こりにくく、建設会社の採算は維持される可能性が高いと考えています。

 ジパングでは、中期的に良好な環境が続くと見られる建設セクターの中から、技術力が高く大型の開発案件を手掛けることが期待される大手ゼネコン、そして新規のオフィスビル竣工や中期的なリニューアル工事の受注増加が見込まれる空調設備工事会社や電気設備工事会社などに注目しています。

 特に、大型開発案件が集中する首都圏に強い企業や、IoT(モノのインターネット化)の活用などで生産性を高められる企業、道路や空港の運営など収益の多様化を進めている企業など、個別の成長要因を持つ企業を選別して投資を行なう方針です。また、収益の安定性が高まるにつれて、これまで他の業種と比較して大きく見劣りしていた株主還元についても、徐々に前向きな姿勢を示す企業が出始めました。企業との対話を通じて、増配や自社株買いのポテンシャルについても精査していきたいと考えています。

ジパングの業種別構成比(対TOPIX)、2017年4月28日現在
ジパングのパフォーマンス、2010年1月4日~2017年5月25日
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • グラフ、データは過去のものであり、将来の運用成果などを約束するものではありません。