日興アセットマネジメントの13本目のETF、分配に焦点を当てた3本目のETF、「上場高配当」を設定します。

分配に焦点を当てた上場投資信託(ETF)は一部投資家に評価が芳しくありません。その評価の根拠となっているのが分配により再投資効果を受けられず運用効率が低下してしまうことのようです。投資による果実を回収しなければならないタイミングが相応に長い先にある投資家にはこの考え方はあてはまりますが、投資果実の回収をある程度の期間で行なう必要のある投資家にはあてはまらないことかと思います。もし無分配のETFしかなかったとしたら、投資果実の回収をある程度の期間で行なう必要のある投資家にはETFに投資していただくことが難しくなってしまうかもしれません。もし投資していただいたとしても、資金が必要なときに都度、ETFを売却していただく必要がありますし、売却価格も一定にならないので不便な運用対象になってしまいます。ETFが日本の市場に普及するには様々な資産運用ニーズの存在を認めて、その各々のニーズに応えることのできる様々なETFを立ち上げていくことが必要ではないかと考えています。

今回の東証配当フォーカス100指数を対象としたETF「上場インデックスファンド日本高配当(東証配当フォーカス100)(愛称:上場高配当)商品概要/留意事項)」の開発・組成にあたっては、投資家に売買を積極的にしていただくというよりは、買って中長期的に保有していただくことをイメージしています。ETFの投資期間中も四半期毎に分配金を受け取ることができるので、投資果実の回収をある程度の期間で行なう必要のある投資家にも保有していただくことができ、運用果実を分散して回収することが容易になるのではないかと思っています。また、運用果実を回収するのがETFの売却だけに限られているのではないので、保有される期間が長くなるのではとも期待しています。

現在の日本の株式・リート市場の環境を見てみると、大きな保有主体であった金融機関が会計ルールの見直し等により、株式・リートといった価格変動資産を保有し続けることが難しくなってきています。これにより売却される株式・リートというのは、その現在の価格が業績等に対して割高とか割安という投資判断から売られるというのではなく、単に保有主体が保有できなくなったから売却されるという性質のものです。売却される価格は需給の偏りによって形成される価格ですから、割安な価格が形成されることが考えられます。そのような環境下で、中長期で投資しやすいETFを設定し投資家を呼び込むことができれば、日本の株式・リート市場にとっても有意なことだと思いますし、投資家にとっても有益なことではないかと思っています。

分配に焦点を当てたETFの開発ポイントは「希薄化」と「濃縮化」

さて、ETFの分配については面白い現象が起きます。ETFは日々設定・償還(交換)が行われ、発行済口数が変動します。収益分配原資がETFの発行済口数に応じて均等に分割、分配されるという制度は、特に決算期直前に大きな設定や償還(交換)が行われると、指数の利回りと比べて利回りが低下(分配金希薄化)したり、上昇(分配金濃縮化)したりすることが起きてしまいます。分配に焦点を当てたETFを組成するにあたって、この現象をうまくコントロールする仕組みを作らなくてはなりません。

ETFの収益分配

ETFの決算時には収益分配金が払われます※。収益分配原資はETFの発行済口数に応じて均等に分割、分配されます。よって収益分配金の増減は、(1)収益分配原資の増減、(2)ETFの発行済口数の増減によります。この原則を押さえておくことが重要です。

※分配原資が無い場合は当然分配されません。

そこで、収益分配の範囲について確認してみましょう。
ETFは、信託の計算期間中に、信託財産について生じた配当、受取利息その他これらに類する収益の額から支払利子、信託報酬その他これらに類する費用の合計額を控除した額の全額について行なわれることとなっています。留意点としては、ETF内で株式を売買したことによる収益(キャピタルゲイン)が発生した場合は収益分配の範囲に入らないということです。当該収益はファンド内に留め置かれ再投資されます。

収益分配金の希薄化とは

まず、希薄化についてですが、当初一口当たり100の資産のETFに10の分配原資が溜まって、一口当たりの純資産額が110になっていたとします。ここで1口追加設定をすると110の価額で追加設定することになり、110の資産を払って220の純資産総額(資産210と分配原資10)になります。ここでは分配原資はあくまでも10しかありません。決算、分配時にはこの10を2口で分け合い、一口当たりの分配金は5となってしまいます。これが希薄化です。分配金を10得られるところが5となってしまったことから損をしたように受け止められることがありますが、ETFには210の純資産が残っており、一口当たりでは105の純資産となっています。分配金として受け取ることができなかった5はETFの内部に留保されていることになり、経済的には損得が無い※ものとなっていることに留意する必要があります。

希薄化例

※追加設定した投資家にとっては、純資産110を払って1口のETF受益権を得て、5の分配金を受け取り、純資産105のETF受益権1口が残るということになります。実質、5の分配金は元本を払い戻しただけのことになるのですが、投資家にとっては収益と認識することができるものの、課税対象となってしまいます。厳密に言えば、経済的には当該投資家にとって損得が無いということは言い切れないことになります。

収益分配金の濃縮化とは

次に濃縮化ですが、当初2口あたり210の資産のETFに10の分配原資が溜まって、一口当たりの純資産額が110になっていたとします。ここで1口償還(交換)をすると110の価額で償還することになり、110の資産を払った後、ETFは110の資産総額(資産100と分配原資10)になります。ここでは分配原資はあくまでも10なので、決算、分配時にはこの10が払出されます。一口当たりの分配金は10となり、これが分配金の濃縮化です。

濃縮化例

東証配当フォーカス100指数を対象にしたETFの開発

以上見てきたように、分配金の濃縮化はともかく希薄化については、分配に焦点を当てたETFを組成する際には何とか解決しなければならない課題です。ETF内に分配原資が溜まっていないときに設定・償還(交換)を行ない、分配原資が溜まったら早く決算をして分配金を出してしまうという仕組みにすれば課題をクリアすることができます。上場高配当が連動対象とする東証配当フォーカス100指数の採用されている銘柄の決算日は3、6、9、12月末になっています。それぞれの翌月に上場高配当の決算日を設定する仕組みにするなどにより、上場高配当は分配金の希薄化を抑えるようにしています。これで、分配金の変動は主に投資対象銘柄の配当額の変動によることになります。

日興アセットマネジメントのこれからのETF開発

日興アセットマネジメントは投資家の方々の様々なニーズにお応えするべく、これからも様々なETFを立ち上げていきたいと考えています。今回は、分配に焦点を当てたニーズにお応えするETFを立ち上げました。これからもお応えすべきニーズを明らかにして、そのニーズに合った指数を探し、指数の内容を詳細に検討してETF の仕組みを作っていきます。引き続き当社の開発するETFにご期待いただければと思います。よろしくお願いいたします。