最近、新聞や雑誌、ウェブなどでETFについて色々な情報やコメントが増えてきたように感じます。さらにETFの関心が高まり、利用も広がればと期待しています。しかし、その中にはETFの価格について混乱がある情報などもあり、少し気になっています。今回はその価格について整理してお伝えします。

ETFには「市場価格」と「基準価額」があります。

通常、個人投資家の皆さんがETFを買ったり売ったりするのは東証など市場での売買になりますが、その価格は市場でつけられている「市場価格」と呼ばれます。これは、その時点の売り手と買い手の需要と供給の均衡した価格です。
一方、ETFは投資信託でもあり、非上場の投資信託と同様に「基準価額」と呼ばれる価格もあります。ETFの基準価額の算出目的は、非上場の投資信託と同様に、指定参加者が設定と解約(一部のETFは交換と言います)をするときに使われる価格です。つまりETFの発行口数が増減するときの価額になります。基準価額の算出は、投信信託の保有資産を評価時点の価格で評価し直して、未収入金や費用を勘案して算出されます。通常は1日に1回算出されます。

「市場価格」と「基準価額」の計算時間について図で見てみましょう。

まずは国内資産(日本株やJリート等)を対象にするETFですが、市場が開いている時間帯(9:00~11:00、12:30~15:00(大証15:10))にETFの市場価格が作られます。基準価額は、保有資産の評価時点(15:00(大証15:10))の引け値を使って計算され、Webなどで公表されるのが19:00くらいになります。

国内資産対象のETF

次に海外資産を対象にするETFをについて見てみます。
市場が開いている時間帯(9:00~11:00、12:30~15:00(大証15:10))にETFの市場価格が作られます。これは国内資産を対象にするETFと同じです。ただし基準価額の算出は様子が違います。保有資産の評価時点は海外市場の引け値を使って計算されるのですが、時差の関係から、入手できる最新の引け値は前日のものになります。また、海外資産なので為替評価も必要になります。為替の評価時点は日本時間10:00のTTM(電信中値相場)となっています。よって海外資産を対象にするETFは、前日引け値と当日のTTMを使って計算され、ウェブサイトなどで公表されるのが19:00くらいになります。

海外資産対象のETF

さて、「市場価格」と「基準価額」の関係は?

「基準価額」の単位は、かならずしも一口当たりの価格で表示されているとは限りません。交換・設定の便宜上、10口単位や100口単位で表示されることもあります。一方、東証などのウェブサイトで公表している「市場価格」の表示単位は一口当たりの価格となっていますので、基準価額を一口単位に揃えたものを(ここでは「一口当たりの純資産価格」と呼ぶことにします)、市場価格と比べることがあります。これは市場価格が一口当たりの純資産価格に対して割高なのか割安なのか判断するためです。割高を「プレミアム」、割安を「ディスカウント」と言われることも多くあります。ただ、市場価格は、現在の情報を織り込みながら需要と供給が均衡したところで形成される連続的な価格である一方、一口当たりの純資産価格は一時点の評価額であり、両者には時間のずれが存在することに注意が必要です。
国内資産を対象にするETFについては、引けで売買が成立していれば、その市場価格と一口当たりの純資産価格は、同じ時点での比較になりますので、その差額をプレミアムまたはディスカウントとして判断して構わないと思います。ただし、このETFが前場に一回売買が成立し、その後、売買が成立しなかったとしたら、その基準価額から求められる一口当たりの純資産価格と比較しても、時点が大きく違い2つの価格差が大きくなる可能性があり、厳密には比較対象にならないということがご理解いただけると思います。

指数値とETFの市場価格の推移

一方、海外資産を対象にするETFについては、ETFの取引時点が、保有資産の評価時点である引け値の時間とも為替の評価時点である中値の時間とも一致するところが全くありません。市場価格と一口当たりの純資産価格を比較してもずれているのが当たり前になってしまいます。

ETFの指数との連動性を表す物差し「トラッキングエラー」の留意点

指数に連動するファンド(ETFを含む)の連動性を測る「トラッキングエラー」という言葉があります。連動対象とする指数の収益率とファンド(ETFを含む)の収益率との差のばらつき具合を標準偏差で表現したもので、少ないほど連動性が高い運用がなされていると判断される物差しです。ETFの場合、市場価格と基準価額(一口当たり純資産価格)があるので、やはり混乱しやすいようです。指数に連動する運用を行なった結果は基準価額(一口当たり純資産価格)に表れます。よって、指数に連動させようとする運用の成果を測定する場合、市場価格ではなく基準価額(一口当たり純資産価格)の収益率を使って測定する必要があると思います。

今回は市場価格と基準価額の関係について整理してきましたが、まだまだETFの価格については注意することが必要です。次回は、3つ目の価格「推定一口当たり純資産価格(インディカティブNAV)」についてお話しする予定です。

以上