日興アセットのETFの商品性が改善されます

「TOPIXETFや日経225ETFの設定用バスケットの権利落ちに伴う、設定の不可日が削減されることになります。」と聞かされても、何のことやらと思われる方々も多いことかと思います。日本の現物拠出型のETF(代表的なTOPIXや日経平均連動の、殆どのETFがこのタイプになります)は、基本、毎営業日設定できることとしていますが、設定用バスケットの銘柄のなかに、権利落ち当日と翌日の銘柄があると、設定を止めるようにしています。というのは、持ちこまれた設定用バスケットは、設定申込日当日の株価で評価されるのですが、権利落ち銘柄は配当が受け取れなくなることで、その配当分が値下がりして評価されます。よって、その配当落ちの分、ETFの設定受益権が少なくなります。その配当分を、設定用バスケットを持ち込んだ投資家(指定参加者)が受け取れれば問題がないのですが、残念ながら、その配当はETF自体が受け取ってしまうことになり、投資家(指定参加者)は、少ない受益権を受け取って、配当も受け取れないという結果になります。投資家(指定参加者)の不利益を回避するために、設定用バスケットに権利落ち当日と翌日の銘柄があると、設定を止めるようにしていたのです。

ETFの設定用バスケットの権利落ちに伴う、設定申込の不可日とは

設定の具体的な流れについて、もうすこし説明をしたいと思います。
まず、通常の株式配当の権利が確定するスケジュールを見ます。配当を受け取ることの権利が確定するためには、権利確定日に当該株式を保有している必要があります。多くの日本株式の権利確定日は3月末と9月末(決算日・中間決算日)になっていますが、配当を受け取るためにはその権利確定日の3営業日前の権利付最終売買日までに買付を終えて、権利確定日に受渡が完了している必要があります。 さて、今度はETFの設定ですが、日本では信託実務の要物性の要請から、設定の申込の翌日には、設定の申込者(投資家(指定参加者))は設定用バスケットをETFに受渡をするようになっているのが主流です。この受渡サイクル(T+1)と上述の権利付最終売買日から権利確定日の受渡サイクル(T+3)の差が、ETFの設定を止める原因になっていたのです。

権利落ち日に設定の申込をすると、当該株式は権利落ちの価格で評価されます。が、株式の受渡はその翌日(権利確定日の前日)になりますので、配当は受け取ることができません。権利落ち日の翌日に設定の申込をすると、当該株式は権利落ちの価格で評価され、株式の受渡はその翌日(権利確定日)になりますので、やはり配当を受け取ることができません。これらの日に設定を受け付けてしまうと投資家(指定参加者)にとって不利になります(次表の網掛け部分)。

バスケットの配当評価と投資家の配当受領権
  T T+1 T+2 T+3 T+4
  権利付最終日 権利落ち日   権利確定日  
バスケットの配当評価 × × × ×
投資家の配当受領権 × × ×

株式会社の決算期日の分散化があることもあって、特に構成銘柄数が1,800銘柄を超えるTOPIXのETFでは、ポートフォリオのリバランスに関係の無い月中にも、度々、ETFの設定不可日がでるようになっていたのでした。

上場インデックスファンドTOPIX 設定交換申込不可日
×:設定交換申込不可日

上場インデックスファンドTOPIX 設定交換申込不可日

ETFの設定のできない日が多々あることは、多くの指定参加者、海外のマーケットメイカーから改善要望を受けていました。この問題が指定参加者やマーケットメイカーだけでなく、最終投資家にも影響、ご迷惑をかけていました。というのは、投資を希望する投資家が指定参加者に当該ETF買付を申し出たとき、指定参加者にETFの在庫が無い場合、指定参加者は先物でヘッジしつつ売買約定をつけるのですが、このETFの設定不可日にあたり設定がすぐにできないときは、受渡を通常のT+3から延ばして受渡をしていただいています。投資家のなかには許容の受渡期限を過ぎる場合は買付をあきらめるという事例もあります。

私は2007年からETF業務に携わってきましたが、本件の問題点の整理や改善方法を検討したファイルが2008年11月のものから手元に残っていますので、足掛け7年近い年月を経て、ようやく対応することができることになり、感慨もひとしおです。

改善方法

では、どのような対応をしているのかというと、権利落ち日とその翌日に持ち込まれた株式の評価価格に配当を乗せて評価して、設定を受け付けるというシステム改修を行うものです。配当落ち後の価格が95だとして、配当分の5を上乗せして100で評価して受け付けるのです。

バスケットの配当評価と投資家の配当受領権
  T T+1 T+2 T+3 T+4
  権利付最終日 権利落ち日   権利確定日  
バスケットの配当評価 × ×
投資家の配当受領権 × × ×

このほかに考えた解決方法はたくさんあります。例えば、ETFの設定の受渡をT+1からT+3にするということも考えましたが、決済のフローを大々的に修正するので、多くの関係者を巻き込み、費用も多くかかることが予想されたのであきらめたということもありました。

今回のシステム改修に関しては社内の関係者の多大な尽力があって、ようやく対応が実現するはこびとなりました。この10月9日からスタートすることとなり、投資家の皆様に少しでも円滑にETFの売買をしていただけるのではないかと期待しています。

以上のように日興アセットのETFは新設ETFだけでなく、既設ETFの改良にも積極的に取り組んでおります。ぜひ日興アセットのETFのご愛顧を宜しく御願いいたします。