新ETFの設定・上場です

平素、日興アセットのETF、上場インデックスファンドシリーズをご活用いただき、誠にありがとうございます。本日は、当社としては2017年6月29日の上場アジアリート(1495)以来となる新ETF「上場インデックスファンド米国株式(S&P500)為替ヘッジあり<愛称:「上場S&P500米国株(為替ヘッジあり)」>」商品概要/留意事項)の設定・上場をお知らせいたします。

今回の新ETFは為替ヘッジ付の米国株ETFです。当該ETFの原指数は、市場・投資業界関係者であれば知らない人はいない、S&Pダウジョーンズ社が算出・発表するS&P500指数になります。この指数に連動するETFで為替ヘッジのない上場S&P500米国株(1547)は2010年10月29日に東京証券取引所に上場させていただいて、ご活用いただいていますが、為替リスクを排除した米国株式へ投資を行いたいという投資家様のご要望を受けて、今回、上場S&P500米国株(為替ヘッジあり)(2521)を設定・上場させていただくことになりました。「なんだ、為替ヘッジ付商品の追加か」と思われるかもしれませんが、その投資特性は大きく違います。その点を解説してまいりますので、よろしくご確認いただければと思います。

ぜひ知っていただきたい新ETFの特性-為替ヘッジの留意点と効果

下のグラフは、S&P500指数、S&P500指数(円ヘッジ)(為替ヘッジ付指数と原指数のS&P500指数)、円換算したS&P500指数(円で投資した場合のS&P500指数)、TOPIX(東証株価指数)を比べたものです。

過去の指数の推移(2013年7月1日~2018年6月29日)

過去の指数の推移(2013年7月1日~2018年6月29日)

  • ※2013年7月1日を100として、公表値をもとに、日興アセットマネジメントが指数化しています。

まず、S&P500指数(円ヘッジ)とS&P500指数を比べてみますと、両指数は、差異はあれども、同じような値動きになっていることが分かります。S&P500指数(円ヘッジ)が若干劣後したパフォーマンスになっていますが、これは、為替ヘッジに伴うコスト(日米金利差等)が反映されるためです。ヘッジ付といえども、必ずしも原指数と同じパフォーマンスになるものではないことに、ご留意ください。

一方で、S&P500指数(円ヘッジ)と円換算したS&P500指数では、かなり大きな違いがあるのが見てとれます。実際、両指数の相関は0.04と、ほとんど無相関を表すレベルです(ちなみにS&P500指数(円ヘッジ)と日本株(TOPIX)の相関は0.20)。価格変動性でみても、同グラフの期間のS&P500指数(円ヘッジ)の価格変動性は年率12.56%に対し、円換算したS&P500指数は年率18.36%です。これらの違いは、為替変動によるものです。為替という一つの要因で、同じ原指数をもつ両指数でも、全く別物の資産クラスと思えるほどの差異が生じていることが見てとれます。

このため、S&P500指数(円ヘッジ)に連動する上場インデックスファンド米国株式(S&P500)為替ヘッジあり(2521)は、為替ヘッジのない上場S&P500米国株へ投資されている方にも、分散投資対象のツールとして十分に意味のあるものではないかと考えております。また、為替リスクを限定的なものとすることで、比較的価格変動性を押さえた運用を行いたい投資家のニーズにもマッチするのではないかと期待しております。

為替リスクの実感・新ETFの設定にあたって心掛けたいこと

為替と聞くと、ご自身とは無関係のものと感じられる方もいるかもしれません。ただ私自身の経験を振り返りますと、案外身近なところにあるものだと感じています。年齢がばれてしまうような大昔の話になりますが、子供のころに友達の家でテレビニュースを見ていたとき、固定為替相場制のもと1ドル=360円のドル円レートが308円に切り下げられたというニュースを聞いて、子供心に日本の円が強くなるのはいいことではないかと感じました。しかしながら、私の田舎町の産業は繊維産業でしたので、大人たちはこのニュースに驚愕していたのだと思います。これが1971年年末のことでした。そして、大学卒業を控えた1985年年初に米国にホームステイをする準備で、当時の東京銀行にトラベラーズチェックを買いにいったときのことです。銀行窓口が当日はたいへん混んでいましたが、後日、もう少しドルを買い足しておこうと銀行の窓口に行ったら、がらがらの状態でした。というのは、この日は円安でドルが高かったのです。このとき初めて自分自身に関わることとして為替変動というものを実感しました。そして痛みを伴う為替リスクの洗礼も受けました。銀行に就職した私は、銀行員たるもの為替を理解しなといけないということで、なけなしの貯えを米ドル定期預金にしました。その後、プラザ合意がなされ、みるみるうちに円高になって、虎の子の米ドル定期預金の価値が下がったのです。為替相場はおそろしいものだと痛感いたしました。

私が投資・運用業界に入った1990年代では、その当時の資産配分政策を考えるにあたって分類されていた資産クラス、外国株式や外国債券ですが、為替と原資産のリスクはセットで取るものとされていました。その後、為替のリスクコントロールをするということで為替のオーバーレイが導入され、またヘッジ付の資産クラスも整理されるようになりました。一方で、このように資産クラスを細分化してゆくトレンドを見たときに、懸念も感じたことがありました。運用コンサルタント会社や運用会社にとっては細分化されたほうがビジネスをやり易い一方、投資家にとっては分かり難くなるのではないかと思ったからです。

さて、日本のETF市場も、200本を超える国内籍、外国籍ETFとなりました。カテゴリーも、日本株(市場別、規模別、業種別、テーマ別)、外国株、債券(国内債券、外国債券)、不動産(REIT)、商品・商品指数、商品(外国投資法人債券)、レバレッジ型・インバース型、エンハンスト型と多様になってきています。これは、基本的な資産クラスが立ち上がった今、細分化が進んでいる表れだと思われます。一方で、ちょっと連動対象指数のあつらえを違えたものの投資特性等にあまり違いのないようなETFも出てきています。仕方がないところもあるかもしれませんが、分かり易い、透明性が高いといったETFの特性を弱めてしまわないか危惧しています。

当社としては、分かり易く、なおかつ投資特性に違いのあるETF商品づくりを心掛けていきたいと思っています(しかしながら投資家ニーズがあり、また、利便の観点で既存のETFと類似の商品を立ち上げてしまうような場合もあるかもしれません。そのような場合はしっかりとご説明をさせていただきますのでご容赦をお願いいたします)。

余談になりますが、S&P500指数に連動するETFを組成するのにあたっては、ちょっとした緊張感を感じています。29.1兆円(2018年7月9日現在)の世界最大のETF、SPDR S&P500 ETF Trust (SPY)の競合商品を立ち上げることになるのですから。高校球児の甲子園球場入り、かるた競技者の近江神宮行きの緊張感はこんなものかなとも想像したりします。ともあれ、SPDR S&P500 ETF Trustと比較できない小さなETFの立ち上げです。しかしながら、しっかりと育ててゆきたいと思っています。

引き続き日興アセットのETF、上場インデックスファンドのご愛顧をよろしくお願い申し上げます。