「何が分からないか、分からない!」方のためのFAQ
初心者3分シリーズ:投信イチから編

S&P500やオール・カントリーは8%でまわりますか?

公開日2025年1月30日

今福 啓之

日興アセットマネジメント

当「20年後ラボ」は「これから投資信託を始めよう」または「始めたけど自信ないんだよね」という人に向けて、投信メーカーならではのちゃんとした内容を、でも社員個人の考えを自由にカジュアルにお届けしたい、というサイトです。

・・・なのですが、どうしても皆、長くなりがち。そこで通常のコラムとは別に、3分で読めるくらいのショートシリーズを立ち上げました。さて短く書けますかどうか。

投信積立を始める人の動機は、「将来のある時点で大きなお金が作れている自分」を実現したいという、切実かつ、とても正しい願いだと思います。私もそうです。

その時に私たちの背中を押してくれるのが、「毎月〇万円を利回り〇%で〇年間続けると、〇円になります」というシミュレーションです。金融庁のHPにも、とても使いやすいシミュレーターがあります。

でも、このシミュレーションは要注意です。

計算自体はまったく間違っていませんし、必ず「あくまでシミュレーションであり、将来を保証するものではありません」といったディスクレーマー(注記)が付いています。でも私としては、ひと言付け加えたいのです。そもそも「利回り〇%でまわるとしたら」という仮定自体が正しくないのです。

下図は過去35年にわたる主要株式インデックスの推移。スタート時点を100で揃えたグラフです。

期間:1989年12月29日~2024年12月30日
S&P500とオール・カントリー指数(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)はドルベース。配当考慮せず。
グラフ起点を100として指数化。信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成。データは過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。

主要指数の過去35年の推移

すぐに気付くのは、横軸の「2019/12/29」辺りからのS&P500 の上がり方の凄さ。

横軸は10年刻みになっていますが、例えば1999/12/29から2009/12/29の10年と比べてみると、まったく様子が違うことに気付きます。

もうお分かりでしょう。巷で言われる「S&P500の過去実績は年利回り8%」、のような言葉を受けて、それを固定利回りとしてシミュレーションする際には、一定の理解と注意が必要なのです。

まず、「利回り〇%」という考え方はかなり要注意。本来、利回りを語っていいのは固定利回りの預貯金だけです。

確かに、1989年12月末の始点と終点の2024年12月末の差である「リターン」を、あえて年利に換算すると約8%になります。ちなみに米ドルベースの計算なので、為替の影響は考慮していません。

でも35年前に買って今売った人の成果を年利換算した数値は、その人だけの、いわゆる「n=1」の結果でしかありません。

それを、「これからの35年」に適用していいはずはないですよね。これからの35年や20年や10年は、過去とまったく関係がありません。残念ながら。

そのため、私はセミナーなどで「8%でまわりますか?」と聞かれたら、「まったく分かりません」とお答えするようにしています。

それでも冒頭に示したようなシミュレーションを使って話をすることはあります。ただしそれは、「〇万円になります」といった将来予想を言うことが目的ではなく、

このように、〇万円にするためには、年平均で△%が必要である。

↓↓↓

その△%を平均値として得るためには、その裏にある変動リスクを受け入れる「納得と覚悟」が必要である。

↓↓↓

その△%が最終的に投資期間の年間の平均値として実現するためには、少なくとも□年くらいは放置する時間的な余裕が必要であろう。

つまり焦りは禁物だし、仮に1年2年ですごく上がったとしても、当初目標である〇万円にはなっていないのだから、無駄に利益確定などを考えるべきではない。

という、リスクを取る「納得と覚悟」についてお伝えするために使います。順番が逆なのです。

(シミュレーションの結果)「〇万円になる」ではなく、「〇万円にするためには、どんな条件が必要か」をお伝えしたいのです。

よくSNSの短いコンテンツに出てくる、「10年・5%でXXX万円、7%でXXX万円、10%でXXX万円!」といった表は夢があってワクワクする一方、無責任に煽っているようにしか見えず、問題を感じます。

もちろん「〇万円にしてやる!」という意味での夢は大事。自分はどんな期待と覚悟で見えない未来に臨むのか、という大事な点を固めていただいた上で、ぜひご一緒に夢を見たいのです。

今福 啓之

日興アセットマネジメント



当ページは、一部個人の見解を含み、会社としての統一的見解ではないものもあります。


資産運用に役立つ情報をお届けします。