株式について知っておくべきこと
今福 啓之
日興アセットマネジメント
結論
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なまじ「知り過ぎない方がいい」かもしれない
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株式は実はシンプル。短期の株価は意味不明だが、長期の株価は利益とリンクする
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長期ならばこそ、利益をあげる企業であるかどうかがポイントに
多くの投資信託には株式が組み入れられています。そして株式は時に平気で1割も2割も下がります。
その影響を受け、皆さんが買った投資信託の基準価額も、思ったよりも大きく変動していきます。
その原因である株式について、私たちは果たしてどこまで知っておくべきなのか――これは当「20年後ラボ」がとても大事にしているテーマです。
株式は実はシンプル
この「3×3のマス」の重要なパーツである株式について、どこまで知っておくべきか(詳しくは、「投資信託は3×3のマスの理解から」をご覧ください)。
その答えは「変に勉強するよりは、知りすぎない方がいいと決める方がよほどいい」――です。
実際、ネット検索したり本屋さんに行ったりしても、結構テクニカルで難しい「ノウハウ系」の情報が多い印象です。
私たち「20年後ラボ」は、そうした情報よりも次のような「原理原則」を知っておいてほしいと考えています。
株価と利益の関係
青い線は日々ニュースで耳にする日経平均株価の推移で、グレーの面は日経平均株価に採用されている225社のその時々の利益です。
まずは結論。この2つ、つまり株価と利益の動きはリンクしています。
2007年から始まっている青い線はすぐに下がり始め、2009年頃に下げ止まっています。その後しばらく同じようなところで推移し、2013年頃からは基本的に右肩上がりの推移を見せています。 そしてグレーの利益も同じような動きです。まさに両者はリンクしています。
グレーが2009年頃にマイナス圏にあるのは、日本企業全体として「赤字」だったことを意味しています。リーマン・ショックという言葉を覚えている方も多いでしょう。
その後日本企業は稼ぐ力を取り戻し、それを評価した海外の投資家が割安だと見て日本株を買い始めたのが2013年頃だったわけです。
2020年のコロナ・ショックでは利益が減った企業も多かったものの、政府の様々な対策のおかげもあって、短期間で盛り返していった様子が分かります。
もう一度、言います。株価と利益のリンク関係は明らかです。
実際には株価は利益の変化を先読み、つまり株価が実態より前に動いている局面が多い。それは、株式というものが、常に「先読み」をし合う市場で取引されているからでしょう。
どう付き合うか、付き合わないか
ニュースでは毎日上がった下がったと報道されますが、その上下は、ただ「買う人が多かったか、売る人が多かったか」という綱引きの結果といえます。
そもそも企業の利益は毎日変わりませんし、発表もされません。企業自体が昨日と今日で大して変わっていない以上、その日の株価の変動とは、世界中の人たちが色んなことで「連想ゲーム」をして買ったり売ったりした結果に過ぎないわけです。
当社も含め、運用会社や証券会社の専門家はその背景を論理立てて説明しますが、それはその時々の「連想ゲーム」を後付けで解説しているようなところがあります。
もちろん変動の理由を知っていることは、投資を頑張り続けるために必要な要素かもしれませんが、猫の目のようにクルクル変わる「連想ゲーム」の解説をキャッチアップするのは、相当に大変なことです。
私は仕事なので頑張って毎日日経新聞を隅々まで読み、関連資料にも目を通しますが、仕事でなければ正直嫌です。
ならば一切関わらない、近づかない――と決めてしまうのは爽やかな割り切りであり、ほとんどの人にとって賢い選択肢だといえます。
そして、近づかない・付き合わないと決めた人ならばこそ、持っておくべきコンセプトがあります。それが先ほど見たシンプルな株式の本質、「原理原則」とでもいえるもの――「利益があがる企業の株価は上がるもの」です。
世の中にあふれる日々の「連想ゲーム」の解説には近づかず、「長期的に利益をあげる企業の株価は上がっていくのだ」――という達観だけを持とう、ということです。
残念ながらマーケットはひとつ
ただ残念なことに、株式市場などのいわゆる「マーケット」はひとつしかありません。短期勝負の人向けと長期志向の人向けで別々の株式市場があるといいのですが、そうではありません。
絵のようにマーケットにはたくさんの人がひしめいています。それぞれに目的やお金の性質が異なる投資家が、それぞれの思惑をもって日々臨んでいます。
グローバル化した今、どの国の株式市場にも参加者の国境はなく、世界中の人が世界中のマーケットに参加しており、情報が伝わるスピードも非常に早くなっています。
その参加者たちが全体として「売りの圧力」を強めた時には、どんなに利益をあげている、または将来あげる企業であっても、他と一緒に株価を下げてしまいます。
古くはリーマン・ショック、近年ではコロナ・ショックといわれた時もそうでした。どの企業の株価もビックリするくらいに下がり、結果として日経平均株価とかS&P500などの指数も大きく下げました。
でもそんな時こそ思い出すべきが、先ほどの「原理原則」です。
株式は実はシンプルであり、その企業が利益をあげていけば株価も上がる――つまり全部が一緒くたに売られるような異常時は、後から見ると「売るどころか買っておくべきバーゲン価格」だった株式が多かったりするわけです。
ファンド(投資信託)選びの視点としては
ここで非常に大事なことは、この原理原則に「利益をあげる企業の株価は~」という但し書きが付いている点です。
いくら長期投資で臨んでも、利益をあげられない企業の株式をいくら持っていても、株価が上がることは難しい。
利益が増えない、あるいは減っていく企業は長期投資すればするほどマズイことになります。できるだけそうした企業は、投資信託の中でも持ちたくありません。
これはつまり、「今後利益をあげる企業を多く含む投資信託」を選ぶことが重要――ということを意味します。
このことはいわゆるインデックスファンドでも、それ以外でも同じことです。
「インデックスファンド」とは、当社のような投資信託の会社ではない機関が発表する指数に、日々連動するよう運用されるタイプの投資信託のカテゴリー名です。
さきほど「3×3のマス」のところで紹介したような、S&P500や日経平均株価、あるいは全世界株式(オール・カントリー)の指数のインデックスファンドが代表です。
忘れられがちなのですが、それらインデックスファンドが対象とする指数も、しょせんは「企業のかたまり」です。
つまり、その指数にはどんな企業がどのような比率で計算されているのか、それらは今後も利益をあげる企業なのか――そうした視点を持つことがとても大事なのです。
一方、「長期で利益をあげる企業を選別します」と謳う投資信託もあります。まさに株式の原理原則に則った理想の投資です。
しかしその「選別」を完璧に実行できるかはまた別の話。これらをインデックスファンドに対して「アクティブファンド」と総称します。
ただ、選択肢から除外するにはもったいないファンドがたくさんあるのも、このアクティブファンドです。関連情報にある記事にぜひ目を通してください。必ず得るものがあるはずです。
今福 啓之
日興アセットマネジメント
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