2018年6月22日
米中貿易摩擦の激化懸念が引き続き市場を大きく揺さぶっています。米国は、中国による知的財産権侵害に対する制裁措置として、総額500億米ドルに及ぶ中国からの輸入品に追加関税を課す方針を示していましたが、6月15日にはその詳細を明らかにし、まず340億米ドル分を対象に、7月6日に第1弾を発動すると発表しました。これに対し、中国も同程度の報復関税措置を7月6日に発動すると表明しました。その後も米中間での応酬が続き、祝日明けの6月19日、中国本土市場は大幅に下落しました。そうした中、中国政府や中国人民銀行(中央銀行)は様々な方法により、経済や市場の安定化を図る姿勢を打ち出しています。 19日の相場急落を受け、中国人民銀行は投資家に冷静さを保つよう呼びかけるとともに、貿易摩擦の影響に対し、あらゆる金融政策手段を包括的に活用する準備があることを表明しました。また同日には、市場に2,000億元(約3.4兆円*)の資金供給を行なうなど、流動性や貿易摩擦に配慮したとみられる措置を取っています。そのほか、20日には、中国国務院が金融政策を通じて中小企業の支援を行なう方針を発表しました。こうしたことから、市場では政策支援への期待が拡がり、株価の下支えとなりました。 米国では11月に中間選挙があり、トランプ政権はこれを強く意識して、強硬姿勢を示している側面があります。ただし、足元で一部のグローバル企業が業績見通しに貿易摩擦の影響を織り込み始めたように、今後、貿易摩擦が米国企業の株価や業績の下押し圧力となる場合、産業界の反対が強まることも考えられます。また、米国の農産物などを対象とした中国の報復関税に対し、農家を票田に持つ与党・共和党議員からの反発の可能性もあります。いずれにしても、11月の中間選挙を山場に、次第に落ち着きをみせることが期待されます。 一方、強硬な姿勢を続ける米トランプ政権の狙いには、貿易不均衡の是正に加え、ハイテク分野における中国の躍進への強い危機感もあることから、選挙後もハイテク分野への圧力が続く可能性があります。しかし、同分野には、「中国製造2025」を旗印にテクノロジーとイノベーションの推進を図る政府の強力な支援が期待されることに加え、4月に通信機器大手が米企業との取引を断たれた結果、基幹部品の米国依存が明らかになったことを受け、今後、半導体をはじめとするハイテク部品の国産化が加速すると見込まれるなど、危機がバネとして働いている側面もあります。そうしたことから、今後市場心理が回復するにつれ、中国本土市場も落ち着きを取り戻すと期待されます。 *換算為替レート:1中国元=16.965円(2018年6月19日時点)
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