2018年8月30日
アセアン(東南アジア諸国連合)経済は、一時期の高成長からやや鈍化傾向がみられるものの、堅調な成長が続いています。その背景には、好調な内需と貿易の拡大があります。 主要加盟国の内需をみると、域内最大の経済規模を誇るインドネシアでは、政府が公務員の賞与を大幅に増やしたことで、消費が好調となっています。フィリピンでは、政府のインフラ整備計画の本格化から、建設投資が拡大したことや、政府の増税負担軽減策により消費が後押しされています。マレーシアは、5月に発足したマハティール政権が選挙公約通りに消費税廃止を決定するなどして消費喚起を図り、消費の伸びが続いています。タイは、国内景気の回復を背景に、自動車販売などの好調が続いています。ベトナムでは、好調な外需による製造業の生産拡大が、雇用環境の改善につながり、内需を後押ししています。 アセアンの輸出は、世界景気の回復などを背景に、17年は大きく伸びました。近年、対中貿易が拡大しており、その背景に、人件費の高騰が続く中国から人件費のより安いアセアン諸国に製造拠点を移し、中国と生産を分業する「チャイナプラスワン」の動きが続いていることがあります。また、中国とアセアンのFTA(自由貿易協定)によって、05年から段階的に関税が引き下げられ、今年1月までに工業製品を中心とする一般品目の関税が撤廃されたことも貿易拡大に寄与していると考えられます。このため、アセアンの域外貿易相手国(輸出と輸入の総額、17年)で、中国は最大規模となっており、加盟国の主要貿易相手国でみても、加盟10ヵ国中、8ヵ国で中国がトップになっています。 足元では米中貿易摩擦問題が続いており、米国の関税導入により、中国の貿易減少や景気への悪影響が懸念されています。米中間の貿易が減少した場合、アセアン諸国も影響を受ける可能性が考えられるものの、貿易摩擦問題を契機に、米国へ輸出する際の高関税を避けるために、製造などの拠点を中国からアセアンに移す流れが加速する可能性も考えられます。アセアン域内の内需の堅調や、一帯一路に代表される中国との経済連携の進展や貿易拡大などを背景に、アセアン経済のさらなる成長が期待されます。 ※上記は過去のものおよび予想であり、将来の運用成果等を約束するものではありません。
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