2019年11月26日
米主要株価指数が最高値の更新を続けているだけでなく、日経平均株価も年初来高値を更新するなど、足元の市場には明るさが拡がっています。その主な背景として、米中の「第1段階」の合意を受け、合意文書のとりまとめに向けた協議が継続される中、世界景気の改善期待が拡がりつつあることが挙げられます。 世界景気の先行きを見通す上で用いられる指標の一つに、OECD(経済協力開発機構)が発表する景気先行指数(上グラフ)があります。中でも中国の景気先行指数は、日・米・欧などに先立って「天井」「底」をつける傾向があり、注目度が高くなっています。その動きを見ると、昨年から今年初めにかけて主要国の中で中国は特に厳しい状況が続いていたものの、足元では持ち直しを示しています。一方、日・米・欧の景気先行指数はいまだ下降局面にあるものの、米国や独・仏などでは、製造業PMI(購買担当者指数)に持ち直しの兆しが見られることなどから、景気回復期待が拡がりつつあります。また、世界景気の動向を確認する上で役立つ、CPB(オランダ経済政策分析局)集計の世界の貿易量・鉱工業生産(下グラフ)の推移を確認すると、貿易量に下げ止まりから拡大へ転じる兆しが表れたのに続き、鉱工業生産にも下げ止まりの兆しが見られます。 米中協議の「第1段階」の合意は、貿易問題を中心とした部分合意に過ぎないものの、これを機に、米中両国による制裁関税の応酬に歯止めがかかる(あるいは、和らぐ)とすれば、当該2ヵ国にとどまらず、多くの国の企業景況感の改善などを通じて、世界景気の押し上げに寄与すると期待されます。なお、知的財産権の侵害や国有企業の優遇など、「第1段階」の合意では持ち越しとなった中国の構造問題が障害となり、米中協議が最終合意に至るまでにはかなりの時間を要するというのが大勢の見方となっています。しかしながら、中国政府が今月24日、知的財産権の侵害に対する罰則を強化すると発表し、争点の一つに対処する姿勢を示したことは、今後の両国の協議の行方にとってだけでなく、世界景気にとっても良い兆しと考えられます。 ※上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。
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