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2020年6月8日

Vol.1606 コロナ危機を機に、結束に向けて動き出すEU
~結実すればメルケル独首相のレガシーに~

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、EU(欧州連合)では、各国による流動性支援や財政措置などを中心に、GDP比24%に及ぶ3.39兆ユーロの危機対策が既に準備されています。さらに、EUの行政執行機関である欧州委員会が5月27日、7,500億ユーロの復興基金「次世代のEU」の創設と、21~27年のEU中期予算として1.1兆ユーロを提案すると、EUの結束や成長力が高まるとの期待が拡がり、ユーロが買われました。

今回の提案は、21年以降の復興段階に焦点を当て、単なる景気刺激ではなく、気候変動やデジタル化への対応を中心とする構造転換の促進も狙ったものです。しかも、復興基金については、EUが債券を発行して財源とし、5,000億ユーロ分は返済義務のない補助金として、コロナ禍の影響が大きい南欧諸国を中心に支給するほか、債券の償還にはEU予算を充てる計画です。つまり、財政が良好な国々の高い信用力に支えられる形で調達される資金が、信用力の低い国々に回る、事実上の財政支援となります。2008年の世界金融危機やその後の欧州債務危機の際には、財政規律を重視するドイツなどの反対により、渦中の南欧諸国に対する財政支援がまとまりませんでした。すると、景気の回復度合いがばらつき、EU全体としての回復が抑制されただけでなく、加盟国間の亀裂やポピュリズムの台頭につながりました。そうした教訓に加え、コロナ禍による今回の危機に際してもEUが結束できなければ、一層の弱体化にとどまらず、存続の危機につながる可能性もあるため、メルケル独首相が姿勢を改め、マクロン仏大統領と共に財政支援を推すに至りました。ただし、オーストリアやオランダなどの「倹約4ヵ国」は、EUによる債券発行や財政支援に慎重な姿勢を示しています。

復興基金、中期予算とも、EU首脳会議での全会一致の承認や欧州議会での同意が必要なほか、中期予算への財源拠出については、加盟各国での批准手続きも必要なことから、今回の提案の実現は容易でなく、紆余曲折が予想されます。まず注目されるのは今月19日のEU首脳会議ですが、議論が進展するのはEU議長国がドイツに替わる7月以降となる可能性も考えられます。時間を要することになっても、「倹約4ヵ国」などの慎重派の懐柔に独仏首脳が成功すれば、事実上の財政支援を通じてEUの結束強化が実現するほか、EUの構造転換を促すことにもなるだけに、来秋の引退を表明しているメルケル独首相のレガシーになるとみられます。

【図表】[左図]EUおよび主要国のGDP成長率の推移、[右図]ユーロの推移
ユーロの推移 グラフを拡大

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