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2020年7月27日

Vol.1618 コロナ禍を機に結束を示した欧州
~今後の統合深化の可能性に注目~

7月17~21日のEU(欧州連合)首脳会議は、総額7,500億ユーロの復興基金「次世代のEU」を創設することや、2021~27年のEU中期予算を1兆ユーロ強とすることで合意に至りました。これを受け、EUの結束や中長期の成長力が高まるとの期待が拡がり、21日に世界的に株価が上昇するなど、投資家がリスク選好姿勢を強めたほか、ユーロが買われ、24日に対米ドルで一時、2018年9月以来の高値をつけました。

今回の復興基金および中期予算は、21年以降の復興段階に焦点を当て、単なる景気刺激ではなく、気候変動やデジタル化への対応を中心とする構造転換の促進を狙ったものです。しかも、復興基金については、EUが債券を発行して市場から調達した資金を財源とし、返済不要の補助金3,900億ユーロおよび融資3,600億ユーロをコロナ禍の影響が大きい南欧諸国を中心に支給するほか、債券の償還にはEU予算を充てる計画です。つまり、財政が良好な国々の高い信用力に支えられる形で調達される資金が、信用力の低い国々に回る、事実上の財政支援となります。2008年の世界金融危機やその後の欧州債務危機の際には、財政規律を重視するドイツなどの反対により、渦中の南欧諸国に対する財政支援がまとまりませんでした。すると、景気の回復度合いがばらつき、EU全体としての回復が抑制されただけでなく、加盟国間の亀裂やポピュリズムの台頭につながりました。そうした教訓に加え、コロナ禍による今回の危機に際してもEUが結束できなければ、一層の弱体化にとどまらず、存続の危機につながる可能性もあるため、メルケル独首相が姿勢を改め、マクロン仏大統領と共に財政支援を推すに至りました。なお、オーストリアやオランダなどの「倹約4ヵ国」が財政支援に慎重姿勢を貫いたことなどから、補助金の額は当初案の5,000億ユーロから削減されたものの、融資の額を上回る水準で決着しました。復興基金、中期予算とも、今後、欧州議会および加盟各国で承認を受ける必要があります。

通貨ユーロの導入国において、ECB(欧州中央銀行)の下、金融政策が一本化されているように、欧州の統合は金融・通貨面では進んでいるものの、財政面については依然としてバラバラで、域内格差や、財政が脆弱な国々での危機につながってきました。EUの今回の債券発行は、あくまでコロナ禍という危機からの復興に向けた限られたものとされています。しかし、同基金による支援などによって南欧諸国で構造改革や財政健全化が進むか否かは、財政政策の共通化など、欧州統合のさらなる深化、ひいてはユーロの上昇につながる試金石と考えられることから、今後の動向が注目されます。

【図表】[左図]ユーロ圏主要国の10年国債利回りの推移、[右図]ユーロの推移 グラフを拡大

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