投資環境概観

米ドルは18ヶ月以上にわたって下落基調が続いてきたが、このところは強いドルが復活しており、年初来5%の下落分をものの数週間のうちに取り戻している。このドル高に加え、米国債利回りが10年物で3%付近に高止まりしていることが、新興国市場にとって逆風となっている。インドネシアの現地通貨建て債券は脆弱性懸念から下落し、トルコリラ安も加速、アルゼンチンは通貨安を食い止めるために政策金利の40%への引き上げを余儀なくされた。米FRB(連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長は最近訪れたチューリッヒで、新興国は米国の金融引き締めに十分に対処できる状態にあると述べる一方、新興国は米国が引き締めを行うのを予期できたはずだとも示唆した。言うなれば、各国はFRBの政策動向を受けて金融引き締めの輪に加わるしかなく、自発的にそうするか、または自国通貨の急落を阻止するために否応なしに参加を余儀なくされるかの選択しかないのかもしれない。だとすれば、新興国に対して弱気な見方に転じるべき時が来たのだろうか。