安定性の台頭

2019年は、アクティブな銘柄選択、もしくはアルファにおいて重要な年となるだろう。当社は、リスクが高まる環境においても安定して成長する質の高い企業を選定することにより、銘柄選択に基づくリターンを提供することに注力して行く。

2018年と比べて2019年はアジアにとってより厳しいマクロ経済を予見している。貿易をめぐり高まる緊張と世界的な保護主義に加えて、国内の引き締め政策による財政の緊縮と世界的債券利回り上昇とが、2019年初頭の投資家の懸念事項である。当社では、これが2019年の企業収益の伸び鈍化という形で現れると見ている。良いニュースとしては、株式市場は既にこうした成長懸念と収益についてのリスクを織り込み始めているということが挙げられる。その結果、2018年4月以来、シンガポールの株式市場は既にほぼ20%も下落している。PBR(株価純資産倍率)は2015年以来の低水準に近づいており、現在バリュエーションは魅力的である。

これらの要因が2019年のシンガポール株式のパフォーマンスにとっての興味深い背景である。マクロにおける逆風の強まりを警戒しつつも、ボトムアップでの銘柄選定に建設的意義が増している。クオリティ・バリュー銘柄と売られ過ぎたシクリカル・グロース銘柄の中に投資機会が見出せる。2019年にEPS成長率がさらに大幅に悪化したとしても、株式市場は今後12ヶ月のうちに底を付けると考えている。もう1つの主な見解はシンガポールの収益成長の軌道がますます二極化し、格差が広がっているということである。2019年には、さらに幅広いセクター間、銘柄間での格差拡大に直面するだろう。工業セクターには、優れたバリューと収益の安定性があり、貿易の緊張が解消されるならば成長も期待できるかもしれない。その他のセクターは、業績予想のさらなる下方修正と資本収益の悪化を示唆する脆弱性を示している。この様な状況はストックピッカーに利があり、2019年は相対リターン戦略とアクティブ運用にとって最良の環境となる可能性があると見ている。

2018年と2017年の振り返り

2019年についてより理解を深めるため、2018年と2017年との戦略を振り返ることで、2019年の シンガポールについての思考プロセスと考察を提供したい。

2018年の振り返り:拡大を越えて、持続性に注目

2018年の見通しでは、持続可能な成長に注目することの必要性と、成長リスクの高まり、流動性の逼迫、バリュエーションの低下による2018年のリターン減退に対する防御、について議論した。これらへの懸念から2018年4月をピークに株式市場は20%近く下落した。また、経済が成熟化する見通しから二極化の拡大が結果として起こり、相対リターンの重要性が大幅に高まると説いた。2017年のレポートでは、工業(資本財)セクターと消費関連セクターが魅力的になると予測した。(そして、その予測の通り)2018年のベスト・パフォーマンス銘柄の上位10社のうち、8社が工業セクターと消費関連セクターであることを2018年10月末の時点で報告した。2018年に高いリターンを生み出した銘柄には、「ComfortDelgro」や「ST Engineering」のような工業セクター銘柄に加え、「Wilmar」や「Dairy Farm」のような消費関連セクター銘柄が含まれる。

2019年においては、成長の安定性が銘柄選択を決定付ける特徴となるだろう。シンガポールの工業セクターは、収益が金利の上昇に対して弾力性を持つ景気拡大局面後期のシクリカル銘柄であり、それに対して、消費関連セクターは、通常ディスインフレからインフレに移行する時に力を発揮する。

シンガポール市場のベスト・パフォーマンス銘柄

シンガポール市場のベスト・パフォーマンス銘柄

Note: Market Capitalisation >SGD1bn
出所: Bloomberg

2017年の振り返り:拡大の年

2017年は、収益、バリュエーション、流動性の3つの市場の推進力がすべて連動して前向きな動きをした拡大の年だった。シンガポールの株式市場は、収益モメンタム、バリュエーション、政策のすべてに支えられていたと思う。2013年以来、収益の拡大あるいは業績予想の上方修正のモメンタムが初めて加速したのが2017年だった。バリュエーション倍率も魅力的で、ROEの改善により倍率上昇の余地もあった。金融緩和で流動性も高く、リスク資産のパフォーマンスが上がりやすい環境だった。 MSCI シンガポール・トータルリターン・インデックスによれば、2017年のシンガポールの株式市場は25.5% 上昇し、2012年以来最高の年となった。

同様の3つの推進力を2019年のシンガポールで見てみよう。結論としては、バランスが良い。最も前向きな指標はバリュエーションで、PBR(株価純資産倍率)は中心値から-1標準偏差に近く 、2015年に見られた最低水準にほぼ戻っている。しかし、収益はそれほどポジティブでなく、モメンタムは2017年末から失速しており、2018年を通じて減少傾向が続いていた。この企業業績が株式パフォーマンスの重石となるだろう。金利敏感セクターと景気敏感セクターにはダウンサイドリスクがあり、2019年は概ね厳しい状況が続くと見ている。 最後に、国内の政策調整から2018年を通してタイト化していた流動性指標は、2018年の利上げと資本市場からの資金流出の後、現在では比較的バランスを取り戻している。

2019年の市場見通し

業績

成長軌道にあった2017年が終わると、業績予想は下方修正される傾向が強くなった。2018年の予想EPS(一株当たり利益)成長率は2018年4月をピークに3%〜4% 下落している。同様に2019年の予想EPS(一株当たり利益)成長率も2019年の成長鈍化の可能性により減速気味である。現在、EPS(一株当たり利益)成長率は、2018年の13.0%から2019年には6.8%へと低下することが見込まれている(出所: IBES、クレディ・スイス)。

図表1:決算後の予想EPSは、2018年は1.3% 、2019年は1.8%下方修正された

図表1:決算後の予想EPSは、2018年は1.3% 、2019年は1.8%下方修正された

出所:I/B/E/S

図表2:シンガポールのEPS成長率は、2018年の13%から2019年には6.8%に減速すると予測されている

図表2:シンガポールのEPS成長率は、2018年の13%から2019年には6.8%に減速すると予測されている

出所:I/B/E/S

2018年の業績予測の一般的な傾向は下方修正であったが、セクターにわたりより顕著な二極化が見られた。工業、金融、消費関連の一部のセクターでは、2019年に上方修正の可能性が高まっており、反対に通信関連は概ね下方修正されるだろう。シンガポールのユニバースにおいては、個別銘柄レベルでの格差拡大も顕著であり、2019年のEPS修正にも大きなばらつきが出てくると予想されている。一般的に個別銘柄とセクターの格差拡大は、株式市場のサイクル終盤を示唆する現象であり、セクター選択、銘柄選択がリターン実現に重要な役割を果たすこととなる。

図表3:ほとんどのセクターで決算後のEPSは下がったが、特に大幅な修正が入ったのはTelcos であった

図表3:ほとんどのセクターで決算後のEPSは下がったが、特に大幅な修正が入ったのはTelcos であった

出所:I/B/E/S

図表4: 2019年のST指数構成銘柄のEPSの3ヶ月先予想コンセンサス

図表4: 2019年のST指数構成銘柄のEPSの3ヶ月先予想コンセンサス

出所:NikkoAM

2019年のEPS成長率は3%〜5%と控えめながらプラスになるが、リターンの格差拡大は今後も続き、さらに進んでいくものと見ている。成長鈍化を背景にセクターの選択がカギとなり、成長が乏しい時期においては、セクターと銘柄の選択がリターンを左右することになる。バリュエーションに優れ、成長における周期的なアップサイドが見込める、厳選した工業セクターの銘柄をオーバーウェイトとする。また、収益の安定性が強く、質の高い成長が見込める一部の消費関連セクターもオーバーウェイトとする。

バリュエーション

2018年4月以来20%近く下落したことで、PBRは魅力的な水準(実績PBRは1.2倍)となっている。現在の水準からさらに10% の調整が入れば前回の2015年と2008年の世界金融危機頃の低水準に近づき、その場合は、その後12ヶ月〜18ヶ月の株式市場の回復について自信を持つことができるだろう。業績下方修正後の予想PER(株価収益率)も11倍に近づいており、魅力的になりつつある。

シンガポール株式のバリュエーションの魅力は増しているものの、当社判断をポジティブに引き上げるには、マクロでのプラス要因もしくは業績下方修正の底打ちが必要と考えている。今後6ヶ月状況を注視し続ける。その間の 当社の注目点は引き続き、バリュエーションが魅力的でありながら、現在の環境下で安定した収益と質の高い成長である。

図表5と 6:

図表5と 6:

図表5と 6:

出所:NikkoAM

流動性

世界的な流動性縮小と利上げを受け、2018年シンガポール市場の流動性は低下した。国内的には、7月の不動産を対象にしたマクロ・プルーデンス政策の導入と、通貨バスケットに対してシンガポールドル高のバイアスをかけるシンガポール金融管理局の10月の金融政策の影響も受けている。当社独自の流動性先行指標(チャート参照)にみられるように、2018年には流動性低下の基調があり、シンガポール株式にとっては厳しい環境だった。

2019年を見通すと、流動性指標はより均衡が取れており、流動性が幾分正常化することを示唆している。金利の上昇が続き、流動性が一段低下したとしても、状況は安定化してきており、これは株式市場にとってはプラスである。

図表7:

図表7:

出所:NikkoAM

2019年はアルファが期待できる年 – 銘柄の選択で大きな違いが生まれる

マクロ的には楽観できる見通しで、銘柄選択効果(アルファ)が、さもなければ低ベータになりかねない環境で、特に威力を発揮すると思われる。安定的な収益成長、高く持続可能な配当利回り、強固なバランスシートという、安定性をテーマとして重視する。金利上昇、流動性の縮小、リスクプレミアムの高まりを背景に資本コストが増大し、充分なキャッシュフローに支えられていないアセットヘビーなセクターや金利敏感セクターにリスクを及ぼすと見る。

その一方で、高いキャッシュフローを有し、安定的かつ持続性のある利益を計上できる、質の高い企業を選択することで、資産配分の効率は向上するだろう。低金利環境が終わるにつれ、株式のリターンとパフォーマンスはROC(資本利益率)とキャッシュフローとの連動を高める。さらに、バリュエーションに加えて、収益力、透明性、質の高さが個別銘柄レベルでのパフォーマンスに重要な役割を果たすようになると考えている。こうした投資環境はボトムアップによる銘柄選定にとても相性がよく、今後12ヶ月間はアルファとアクティブリターンが優勢になると見込む。

2019年の主なコンヴィクション:

  1. 収益の安定性に着目、消費関連セクターと工業セクターがアウトパフォームする見込み
  2. ニューシンガポール、将来のサービス・エコシステムにおける勝者探しは続く
  3. 配当がリターンを支配、金利上昇環境では配当成長銘柄がアウトパフォームする

収益の安定性に着目

シンガポール市場での銘柄選択には前向きであり、中でも工業及び消費関連サブセクターについてそうである。金融セクターについて銘柄を厳選し、不動産と通信についてはアンダーウェイトとする。

金融セクターではより銘柄選択を重視し、不動産開発業のような金利敏感セクターはアンダーウェイトとする。REITにおいても、金利上昇環境下での財務レバレッジに加えて、収益の持続可能性やDPU(1口当たり分配金)の伸びをより意識する。国内政策に関わるリスクと金利コストの上昇が今後12ヶ月間に逆風となるだろう。

2019年は工業及び消費関連銘柄で選択的にポジティブである。シンガポールの工業株は、コングロマリット、運輸や海洋・オフショア企業といった幅広いカテゴリーで構成されているが、そのほとんどの企業の収益が経済サイクル後期と結びついており、設備投資のような実体経済の改善から恩恵を受ける。一部工業株は、バリュエーションが複数年の最低水準に近い上に、純資産を大きく割り込んでおり、魅力的である。質の高い商品・事業を持つそれら以外の工業株と消費関連株は、2019年においてもEPS(一株当たり利益)成長を持続し、厳しい環境においてもROC(資本利益率)の維持と向上を実現するだろう。

2019年と2020年の収益予想において、工業セクターと生活必需品セクターとがその成長率でリードすることが明確に見て取れる。また、2019年と2020年の予想EPS 成長率では二極分化がさらに進んでおり、業種選択によるリターン格差がさらに拡大すると見込まれる。

2019年は消費関連・工業セクターにポジティブなファンダメンタルズの変化(成長)とリターンの持続性が見られる

2019年は消費関連・工業セクターにポジティブなファンダメンタルズの変化(成長)とリターンの持続性が見られる

出所: dataCentral、 ブルームバーグ

金利上昇環境では工業株のパフォーマンスが相対的に良好

景気循環の後期もしくは終盤に差し掛かってきた兆候が多く出てきており、工業株が2019年の勝ち組になると考えている。工業株は通常景気サイクル後期に強いセクターであり、一般的に雇用の創出と実体経済にリンクした企業の設備投資サイクルに結び付いている。経済活動の活発化と事業見通しの改善に基づく企業支出の増加と相関する金利上昇を背景に、工業株はこの景気サイクル後期に優れたパフォーマンスを発揮する傾向がある。

世界の工業銘柄の幅広い評価基準であるMSCIワールド・インダストリアルズは、経済状況の改善と金利環境の引き締まりにつれ、過去3年間において MSCIワールド・ファイナンシャルズをアウトパフォームしている。

図表8: MSCIワールド・インダストリアルズ/MSCIワールド・ファイナンシャルズの相対パフォーマンス

図表8: MSCIワールド・インダストリアルズ/MSCIワールド・ファイナンシャルズの相対パフォーマンス

出所:NikkoAM

しかし、シンガポールの工業株においては、状況はまったく違い、MSCIシンガポール・インダストリアルズが過去3年間においてMSCIシンガポール・ファイナンシャルズと比べて大幅にアンダーパフォームしている。これが、工業セクター企業の間で業績の上方修正が出始め、バリュエーションも引き続きサポーティブであることから、ここ3ヶ月の間に逆転し始めている。他方、流動性の低下と国内不動産セクターに対する政策引き締めにより、金融セクターの業績修正は減少した。工業株が金融株をアウトパフォームするという最近の傾向は今後も続くと思われる。

図表9: MSCIシンガポール・インダストリアルズ/MSCIシンガポール・ファイナンシャルズの相対パフォーマンス

図表9: MSCIシンガポール・インダストリアルズ/MSCIシンガポール・ファイナンシャルズの相対パフォーマンス

出所:NikkoAM

インフレの再来は生活必需品セクターの潜在的な追い風

生活必需品と食品セクターも2019年は投資先として説得力を持つと考えている。売り上げ(価格)は通常インフレと正の相関があり、必需品の需要(量)の変化も低く、経済のスローダウンに耐性がある生活必需品セクターにとって、収益環境は全般にサポーティブである。中産階級の台頭とアジアの消費増の流れに乗り、アジアの生活必需品は、構造的にポジティブな局面にあるとの考えを維持する。また、経済がスローダウンする環境下、食品サプライチェーンを担う生活必需品株をインフレの上昇と連動して価格マージンを上げやすいディフェンシブ銘柄と捉えている。一例として、2018年には、米中間の貿易緊張に起因する貿易混乱の可能性と市場における新しい投資機会としてアジアの一部生活必需品銘柄が恩恵を受けた。

また、2004年〜2008年と2009年〜2010年の2つのインフレ上昇期間でも生活必需品はアウトパフォームしていたことが分かっている。

図表10:

図表10:

出所:NikkoAM

ニューシンガポールは2019年も引き続き焦点

ニューエコノミーにおいて生き残るべくイノベーションや事業改革を進めているサービス産業における新しい事業や企業をニューシンガポールと称している。シンガポールの技術サービス、データセンター、ヘルスケア、物流、観光、消費者サービス等、サービス・エコシステムの一翼を担うセクターを引き続き選好する。これらのセクターは、長期的に構造的な成長力を持ち、今後数年その成長力においてアウトパフォームすると思われる。

成長エンジンの再構築、組織・資本構成の調整、サービス業としてのプレゼンス構築を目指す工業銘柄において、事業改革の動きも顕著である。最近の例は「Keppel Corp」による、データセンターと物流子会社「Keppel T&T」の非上場化、「MobileOne」における通信事業統合、「Keppel Infrastructure」における買収を通じた成長事業 の取り込みである。

我々はこのセクターにおいて、ビジネスモデルを改革していたり、現在の環境に合わせて再構築している企業や、サービスのエコシステムに根を張ることで成長機会を与えてくれるような企業を選好する。現在我々は、ヘルスケア、技術サービス、観光といったセクターの一部銘柄をオーバーウェイトとしている。

高配当投資がアウトパフォームする

不確実性の時代において、シンガポールはディフェンシブな投資先であり続けるだろう。耐久力のある経済と安定した通貨、それに加えて最も重要な要因である潤沢なフリーキャッシュフロー、安定した配当支払い、ディフェンシブなバランスシートに支えられた4%〜5%の配当利回りを誇る魅力的な市場だからである。低ベータあるいは低リターンの市場環境では、配当は力強いリターンの原動力であり続ける。利回りと成長を加味した確信度の高い配当戦略が、今日の金利上昇環境下でアウトパフォーマンスする可能性が最も高いと考える。シンガポールの配当利回り水準は、現在アジア地域で最高水準の4〜5%にまで上昇しており、大変魅力的になっている。これは、株価の下落、安定した配当支払い、銀行の増配といった要因からもたらされている。これが2018年に予想配当利回りが実際に上昇し、業績予想の下方修正を埋め合わせるというシナリオにつながった。これは我々の、配当利回りが市場のダウンサイドリスクを和らげるという見解及びシンガポールはアジア地域においてディフェンシブ・グロース銘柄を提供するという見解を裏付けるものである。

図表11: 2018年と2019年のシンガポールの予想DPS(1株当り配当金)は安定かつ上昇

図表11: 2018年と2019年のシンガポールの予想DPS(1株当り配当金)は安定かつ上昇

出所: IBES、クレディ・スイス

当社は安定した配当金の成長が見込めるディフェンシブで高い利回りの企業に引き続き着目する。高配当セクターの中では、配当利益の源泉となるROE(自己資本比率)の伸びが高い企業や、フリーキャッシュフローの増加と強い資本力からより増配の可能性がある企業を金融、工業、消費関連セクターで探していく。REITでは、DPU(一口当たり分配金)が伸びているオフィスREITやホスピタリティREIT、インダストリアルREITに加えて、一部のインフラ事業ファンドにも投資機会があると見ている。

サマリー

要約すると、2019年の銘柄選択のカギは引き続き安定性にあると考える。当社では、安定性を、利益成長、事業モデル、バランスシートにおける利益の持続可能性という形で計測している。利益成長の持続力、ディフェンシブで質の高い成長が見込める事業モデル、及び経済がスローダウンし、流動性が低下する環境で成長のチャンスを掴むことができる財務力を持つ企業から、アクティブ・パフォーマンスが生まれると考えている。リターンの持続力、または安定性が2019年のパフォーマンスのカギとなる。

このため、特に金利に依存しながらも収益見通しが成長軌道に乗っており、事業の質と価値に建設的な企業については、相対的に慎重かつ選択的に対処する。特に工業株では、設備投資の状況が今後も成長を予期させ、景気サイクル後期の設備投資支出が今後も収益を支えると見ている。同様に、消費関連セクターは、インフレ上昇に比較的うまく対応でき、利幅拡大による収益のポジティブ・サプライズの余地がある。

さらにシンガポールのサービス経済においても構造的な要因からポジティブなスタンスを続行する。観光、インフラ、ヘルスケアといった工業・消費関連セクターのサブセクターには長期的・構造的な成長力があり、今後数年間において市場をアウトパフォームする可能性がある。 また、ニューエコノミーにおける競争に備えて改革を行う企業に大きな投資機会があると考えており、ヘルスケア、技術サービス、観光といったセクターの一部銘柄をオーバーウェイトとする。

最後に2019年は高配当投資が継続的に利益をもたらすと考えている。シンガポールの配当利回りは、現在アジア地域で最高水準の4%〜5%にまで上昇しており、潤沢なフリーキャッシュフロー、安定した配当支払い、ディフェンシブなバランスシートに支えられた大変魅力的な市場である。低ベータあるいは低リターンの市場環境では、配当は引き続き力強いリターンの源泉となる。今日の金利上昇環境においては、利回りと成長を加味した確信度の高い高配当戦略がアウトパフォームする可能性が高いと考えている。