当レポートは、英語による2019年8月発行「EMERGING MARKETS QUARTERLY」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。

新興国市場の資産価格を左右する主な材料として、外部環境が国内のファンダメンタルズを圧倒することはよくある。足元では、外部金融環境の緩和が新興国市場に追い風を起こしている。今回、不確実要素となっているのは断続的な貿易戦争で、これが今やサプライチェーンを変化させており、この影響は貿易協定が締結されるか否かにかかわらず今後も継続すると考えられる。

当四半期の主な変化は、米FRB(連邦準備制度理事会)を含む世界中の先進国の中央銀行が金融緩和を実施したか実施しようとしていることで、これを受けて金利が大幅に低下し、2016年のデフレ不安以来の低水準をつけた。この展開は、一方では世界的な景気後退が差し迫っていることを示しているのかもしれないが、当社ではむしろ、本来なら問題のない景気状況であるにもかかわらず中央銀行が異例の政策転換を行ったことによるものと考えている。

足元の景気減速は、FRBが(今や明確にその巻き戻しを行おうとしている)引き締めサイクルの継続タイミングを窺っていた2015年の状況に似ているが、各国中央銀行は以前のサイクルから予測されるよりはより早期に対応を見せている。確かに、貿易戦争の発生は経済バランスや相対リスクを一変させる。しかし、中国の景気刺激策の着実な調整は、狙い通りに奏功しているように見受けられる。

一方、先進国の金融政策の転換を受けて、新興国では、インフレ圧力が抑制されているなか、中央銀行に金融緩和余地が生まれている。さらに、2018年後半から2019年序盤にかけて比較的タイト化していた中央銀行の流動性が、現在は回復してきている。このことも、ドルが堅調なのにも関わらず、利回りを求める資金の新興国への流入を促している。

サプライチェーンの再編成が勝者と敗者を生み出しており、中国が製品輸出機会を失う一方、アセアン地域がその分を補う候補となっている。しかし、中国が消費を含め民間セクターの支援を目指す景気刺激策を実施していることにより、中国国内およびアジア地域全体において消費需要増大の恩恵を受けるセクターが新たな勝者として台頭してきている。

当社では、これまでも示してきたように、クオリティを重視することが引き続き有効であるとみている。確かに、流動性の回復と利回りの追求は興味深い投資機会をもたらしており、例えばトルコは4.25%の利下げを実施した後でさえ実質利回りがキャッシュレートを4%上回っている。それでも、市場環境が何かしらのショックに見舞われればこうした資産への重大なリスクとなることに変わりはなく、当社ではより投資魅力が高くリスクが大幅に低い投資機会が他にあると考えている。

投資環境は上述のように追い風であるものの、当社は手放しで強気というわけでもない。まず第1に、先進国の金融緩和は追い風として評価するが、こうした政策シフトにはリスクが伴う。米国の失業率がこれほど低く経済成長が依然ある程度好調なときにFRBが金融緩和を実施するのは、これまでに前例がない。今後起こり得るシナリオについて確信しているわけではないが、低位安定が広く見込まれているインフレは、最終的に上振れするかもしれない。

当社では、そのようなインフレ対応または政策の誤りのリスクに対するヘッジとして、南アフリカ、中国、ペルーの金鉱株を選好している。また、引き続きクオリティを重視するとともに、勝者と敗者を見極めるにあたって、地域別だけではなくセクター別にも精査を行っていく。

アジアでは製造業よりも消費関連銘柄を選好

北アジアの株式市場は、サプライチェーンのシフトが足元で確実に定着していることや貿易をめぐって新たな小競り合いが起こり続けていることを受けて、貿易戦争が休戦中にも関わらずまちまちの展開となった。日本が最近、韓国へのテクノロジー・ハードウェア製品の輸出を制限する動きに出たほか、米国は韓国産および台湾生産の鋼材を用いたベトナムからの鉄鋼製品の輸入に対し400%の関税を発動した。

中国の製造業は、貿易戦争をめぐる先行き不透明感を背景とした設備投資の低迷が打撃となっている。一方、当社では、民間セクターや消費者にターゲットを絞った政策緩和の恩恵を受ける中国の消費関連銘柄については、引き続き有望視している。MSCIインデックスへの中国A株の採用は、インデックス組入係数が着実に引き上げられる見込みであり、引き続きポジティブな材料となっている。

インド株式については、先の総選挙でモディ首相の改革取り組みの継続に対し強い信認が示されたことから、スコアを引き上げた。最近発表された連邦予算案は、市場予想よりもタカ派的なスタンスの内容であったため、嫌気されて株式市場の下落を招いた。この動きは、向こう数四半期の経済成長を一段と抑えてしまう可能性はあるものの、債券利回りの低下が示すように長期的にはポジティブな材料と言える。

アセアン諸国のなかでは、インドネシアとフィリピンのスコアを引き上げた。両国は、インフレ懸念が後退して対内投資フローも安定化してきており、米FRBによる利下げの可能性が高まるにつれ、自国での金融緩和の道が開かれてきている。

資産クラス別スコア

資産クラス別スコア

スコアについて:各国および各資産クラスのスコアは、中立が白色、プラスが緑色、マイナスが赤色で表されている。総合スコアは右側、個別スコア(バリュー、モメンタム、政治/マクロ)は左側に示されている。灰色の枠線は、対象四半期中のスコアに変化がなかったこと、緑色の枠線はスコアが引き上げられたこと、赤色の枠線はスコアが引き下げられたことを示している。
上記のアセットクラスは、マルチアセット・チームの現在の投資見解を反映したものです。これらは投資リサーチまたは投資推奨に関する助言に該当するものではありません。セクターや経済、市況トレンドに関する予見、予測または予想は、それらの将来の状況またはパフォーマンスを必ずしも示唆するものではありません。

中国は持続可能な成長に向けた取り組みを継続

ドナルド・トランプ米大統領が5月上旬にツイッターへの投稿で貿易戦争の再燃を招いたことから、中国は景気刺激策の規模を拡大したとしてもしかたがなかったのかもしれない。しかし、中国政府は引き続き民間セクターの成長促進に固執している。その方が、生産性向上効果がより疑問視される借り入れベースのインフラ支出を再び実施するよりも、持続可能な質の高い成長を実現するより効果的な手段だと考えているからだ。

広く報じられた通り、中国の2019年第2四半期の経済成長率は1992年来の低水準となった。これは、数字的にはその通りなのだが、重要なポイントを見逃している。現在の中国経済の規模、そして昨年の政策引き締めや貿易戦争による短期的な逆風を考えれば、成長減速は十分予想されていたことだという点である。貿易戦争が設備投資の大幅な後退を通じて製造業に打撃を及ぼしていることは確かだが、消費という形での中国の「ニューエコノミー」は、引き続き好調で勢いを増している。

2019年第1四半期の企業収益は純利益で前年同期比11%増と回復を見せ、雇用の伸びを促している。財政緩和が引き続き減税と銀行貸出しの奨励を中心として行われているなか、雇用創出の約9割は民間セクターとなっている。自動車セクターは底入れした模様で、個人消費支出は依然として比較的低迷しているものの、Eコマース(オンライン商取引)は伸びが続いており、2013年から2017年のCAGR(年平均成長率)で41%の増収となった。

民間セクターと消費に的を絞った景気刺激策は、当然ながら株式市場のセクター別パフォーマンスに乖離を引き起こしている。チャート1が示すように、生活必需品セクターが2017年末比で30%近く上昇している一方で、市場のそれ以外のセクターは横ばいまたは下落となっている。

チャート1:中国A株市場(CSI 300)のセクター別パフォーマンス比較

チャート1:中国A株市場(CSI 300)のセクター別パフォーマンス比較

出所:信頼できると判断した情報をもとに日興アセットマネジメントアジアリミテッドが作成
期間:2017年12月29日~2019年07月23日

5月下旬、中国人民銀行が包商銀行を公的管理下に置いたことで市場は大きく揺れた。この措置により、中国の銀行に対する暗黙の政府保証の廃止が示唆されたからだ。包商銀行は大手の地方銀行であり、今回のイベントが負の連鎖を招く可能性もあったが、対象を絞った介入によって信頼感は回復し、実体経済への信用供給が滞ることはなかった。

中国は、貿易戦争によって製造業が逆風に晒されているなかで成長を維持しながら同時に負債削減を行うという難題に対処しており、大きなリスクがないわけではない。しかし、着実な政策調整と改革継続の合わせ技によって、長期的に持続可能な経済発展に向けた環境作りは徐々に進展しつつある。

半導体関連銘柄は落ち着きを取り戻すも、貿易をめぐる新たな対立の影響には依然脆弱

テクノロジー・ハードウェア・セクターは、半導体を中心に2018年の下落基調から一転、2019年5月の初めまでは大幅な回復を遂げていた。しかし、米国が華為技術(ファーウェイ)向け輸出を禁止する措置を講じるなど、貿易戦争が再燃したことを受けて、半導体セクターの株価は5月に18%超下落した。

6月の初め以降は、貿易戦争休戦の可能性を示す兆候が見られ始め、最終的にはG20大阪サミット期間中に米国がファーウェイに対する輸出制限の緩和に合意するという形で実を結んだため、半導体セクターはそれまでの下落分を取り戻す展開となった。

チャート2:フィラデルフィア半導体株指数の推移

チャート2:フィラデルフィア半導体株指数の推移

出所:信頼できると判断した情報をもとに日興アセットマネジメントアジアリミテッドが作成
期間:2018年7月24日~2019年7月23日

需要面については、電子機器は概ね苦戦しているものの、クラウド・コンピューティングやIoT(モノのインターネット)の成長ファンダメンタルズ基盤は依然損なわれていない。とは言え、貿易をめぐる対立が引き続き表面化するなか、勝者と敗者を判別するのはそれほど容易ではない。

これまでのところ、台湾勢は台湾積体電路製造(TMSC)を含めよく健闘している。反対に、韓国勢はというと、7月4日付での半導体やOLED(有機発光ダイオード)の対韓国輸出制限実施を発表した日本からの新たな逆風に直面している。当社では、より高次元の貿易紛争の標的からは外れる比較的小規模な半導体企業を選好している。

EMEAは外部金融環境の緩和が追い風に

トルコや南アフリカを含めてEMEA(欧州・中東・アフリカ)地域の状況に大した改善は見られないものの、債券利回りの急低下やドルの安定を受けて、リスクを取ってより高い利回りを求める動きが出てきている。トルコは、インフレ率の大幅低下を受けて中央銀行が金融緩和を実施できたことから、スコアを中立寄りのマイナスへと引き上げたが、対外不均衡の継続や政治的リスクの上昇を考慮して警戒的な見方を維持する。

ロシア株式については、バリュエーションの改善を踏まえてスコアを引き上げた。同市場は年初来パフォーマンスが最も堅調な新興国市場の一つだが、企業収益が好調を維持しているためバリュエーションは引き続き魅力的な水準にある。経済成長は依然弱いものの、マクロ・ファンダメンタルズは新興国のなかで最も良好で、財政黒字が10年ぶりに対GDP比3%、経常黒字が同6.9%に達している。一方、6月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比4.7%へと減速しており、金融緩和サイクルを開始する余地が出てきている。

東欧諸国では、インフレの鈍化やECB(欧州中央銀行)の利下げ間近との見通しが追い風となっており、当社がしばらく指摘してきた景気過熱リスクはやや後退している。

資産クラス別スコア

資産クラス別スコア

スコアについて:各国および各資産クラスのスコアは、中立が白色、プラスが緑色、マイナスが赤色で表されている。総合スコアは右側、個別スコア(バリュー、モメンタム、政治/マクロ)は左側に示されている。灰色の枠線は、対象四半期中のスコアに変化がなかったこと、緑色の枠線はスコアが引き上げられたこと、赤色の枠線はスコアが引き下げられたことを示している。
上記のアセットクラスは、マルチアセット・チームの現在の投資見解を反映したものです。これらは投資リサーチまたは投資推奨に関する助言に該当するものではありません。セクターや経済、市況トレンドに関する予見、予測または予想は、それらの将来の状況またはパフォーマンスを必ずしも示唆するものではありません。

トルコは資金流動性の改善が当面の救いに

トルコのタイイップ・エルドアン大統領は、思うように利下げが行われないことに不満を募らせ、7月の初めに同国中央銀行のムラート・チェティンカヤ総裁を解任した。これを受けて、格付け会社フィッチはトルコのソブリン債格付けを「BB-」に引き下げた。後任のムラート・ウイサル総裁は、就任後間もない7月25日に政策金利を24%から 19.75%へと引き下げたが、この4.25%という利下げ幅は前総裁の下での市場予想を大幅に上回るものであった。

通常、中央銀行の独立性が明らかに失われた上に格付けも引き下げられたとなれば、市場に好感されることはあるまい。エルドアン大統領の場合は、(利上げよりも)利下げこそが最善のインフレ対策だとする型破りな持論を持っていることから、なおさらだろう。しかし、チェティンカヤ総裁の更迭以降、トルコリラが1米ドル=6リラ超から同5.7リラ付近まで上昇していることが示すように、市場は辛抱強く見守る構えのようだ。

チャート3:トルコの金利と通貨リラの推移

チャート3:トルコの金利と通貨リラの推移

出所:信頼できると判断した情報をもとに日興アセットマネジメントアジアリミテッドが作成
期間:2017年7月31日~2019年7月30日

そうした忍耐強い姿勢を部分的に正当化している要因は、インフレ率の大幅な低下だ。トルコのCPI上昇率は、2018年10月に25.24%でピークを付けたのち、6月には15.72%まで低下しており、実質金利は4%と引き続き高水準にある。投資家のリスク選好意欲が再び高まっていることや世界的に金利が大幅に低下していることから、市場が差し当たって政治的リスクに目をつぶり、そのリスクさえなければ魅力的と言える水準の利回りを取り込もうとしているのは、驚くべきことではないかもしれない。

トルコ市場で利回りを追い求めることに対して、当社では引き続き慎重な姿勢をとっている。その理由はトルコの政治的リスクが高いからだが、リスクを高めている原因は中央銀行の変容だけではない。7月には、トルコへのロシア製地対空ミサイルシステム「S400」の初回納入が行われた。これは、NATO(北大西洋条約機構)でのトルコの立場を脅かし、米国による経済制裁発動を誘発する可能性が高い。ただし、G20大阪サミットでのトランプ大統領とエルドアン大統領の首脳会談を受けて、少なくとも当面はそうした事態が回避された模様だ。

6月23日に行われたイスタンブール市長選の再選挙は、エルドアン大統領率いる与党AKP(公正発展党)候補が大敗を喫した。その後間もなくしてAKPを離党したアリ・ババカン元副首相は、新野党を結成する見通しだ。エルドアン大統領はその政権掌握力が徐々に弱まってきているが、あらゆる手を使って支持率回復や反対派抑圧を試みるだろうことは間違いない。

景気浮揚策は往々にして支持率を高めるための常套手段であるが、財政状態が悪化しているとともに対外不均衡が依然大きいことから、エルドアン大統領がそのような政策を選択した場合は、それが転換点となってマクロ見通しがさらに悪化する可能性がある。そうしたシナリオが現実化する確率は上昇しており、どう見てもリスクは下方に大きく偏っている。

南アフリカの金鉱株

マクロおよび政治の安定性は、投資における適切な意思決定の材料として常に重要であるが、南アフリカの金鉱株のケースのように、魅力的なバリュエーションと外部マクロ動向によるサポートという組み合わせが妙味のある投資機会をもたらす場合もある。

金鉱株はボラティリティが高いことで知られている。その株価は、金鉱でのストライキや(南アフリカの場合は)電力インフラの老朽化など現地のファンダメンタルズに影響を受ける部分もあるが、最終的には金価格が主なドライバーとなる。

金価格は、1オンス=1,350米ドルを上抜けるとすぐ、2012年以来初めて1,400ドルに達した。こうした展開は金鉱株にとって大きな追い風だ。実際、金鉱株は2018年の夏以降、株式市場全体を大きくアウトパフォームしている。

チャート4:南アフリカの株式市場と金鉱株のパフォーマンス

チャート4:南アフリカの株式市場と金鉱株のパフォーマンス

出所:信頼できると判断した情報をもとに日興アセットマネジメントアジアリミテッドが作成
期間:2014年7月25日~2019年7月23日

金価格のドライバーを見分けるのは難しいが、一般的には世界の実質金利動向、地政学的リスク、そして中央銀行の金融政策が含まれる。足元では、それら3つの要因がみな追い風になっているように見受けられる。

2018年の夏以降、貿易戦争、中東情勢の緊張の高まり、トルコやアルゼンチンの国際収支ショックが組み合わさり、地政学的リスクが高まった。2019年に入ってからは、実質金利の急低下に加え、世界的な金融政策の緩和シフトがさらなるサポート材料となっている。

当社では、マイナス金利や量的緩和のような実験的金融政策は巻き戻しが困難であると長年論じてきたが、その通りになりつつある。各国の中央銀行が再び自国通貨の切り下げ合戦に動いているなか、金および金鉱株は政策リスクや政策ミスに対する有効なヘッジ手段と言える。

中南米はまちまちな状況

中南米地域では、年金改革が大詰めを迎えつつあるブラジルのようにポジティブな展開の見られる国がある一方、メキシコは国営石油公社(ペメックス)の格下げや財政計画に対する不信感から市場の信頼を失いつつある。

当社では、メキシコ市場のリスクは過大評価されていると考える。債務残高は依然低水準にあり、政策金利が8.25%とタカ派的な水準にある一方、6月のCPIは前月の4.28%から減速して3.95%にとどまっているからだ。経済成長は弱いものの、ブラジルのように財政難が続いているわけではなく、メキシコの財政は足元の高水準のリスクプレミアムが正当化されるような状態からは程遠い。

ブラジルは、年金改革に大きな進展が見られており、議会で可決されて大幅な歳出削減が実現すると期待されることから、資産のスコアを引き上げた。チリ株式については、成長減速や銅価格の低迷を受けてスコアを引き下げた。

アルゼンチンは選挙シーズンを迎えている。先日格付け会社ムーディーズによって格付け見通しが「ネガティブ」へと引き下げられたが、今後の資産価格の動きを左右するのはあくまでも選挙の結果となるだろう。

資産クラス別スコア

資産クラス別スコア

スコアについて:各国および各資産クラスのスコアは、中立が白色、プラスが緑色、マイナスが赤色で表されている。総合スコアは右側、個別スコア(バリュー、モメンタム、政治/マクロ)は左側に示されている。灰色の枠線は、対象四半期中のスコアに変化がなかったこと、緑色の枠線はスコアが引き上げられたこと、赤色の枠線はスコアが引き下げられたことを示している。
上記のアセットクラスは、マルチアセット・チームの現在の投資見解を反映したものです。これらは投資リサーチまたは投資推奨に関する助言に該当するものではありません。セクターや経済、市況トレンドに関する予見、予測または予想は、それらの将来の状況またはパフォーマンスを必ずしも示唆するものではありません。

年金改革に取り組むブラジル

十分に意味のある年金改革が立法プロセスを通過することができるかという点について、当社は懐疑的な見方を維持していたが、7月上旬にブラジル議会下院が大幅な歳出削減を盛り込んだ年金改革法案を大差で可決したことから、見通しは明らかに改善した。

8月まで先延ばしされている下院での2度目の採決は可決の見込みで、上院でも大きな修正が加えられることなく可決されそうな様子だ。これが実現すれば、同国の財政再建に貢献する確かな好材料となる。一方、2016年の春にジルマ・ルセフ前大統領の弾劾決議とともに始まった改革の取り組みは、引き続き前進が見られている。

大規模な汚職捜査によって、民間セクターを締め出して国有銀行を利用した不正融資など、様々なレベルの汚職問題への取り組みが進んでいる。新たな節目として、そうした不正な資金調達経路の縮小を受け、2019年第2四半期には国有銀行以外の銀行による融資残高が国有銀行による融資残高を初めて上回った。このことは、同国の生産性向上にとって非常に重要なポイントだ。

チャート5:ブラジルの国有銀行と非国有銀行の融資残高比較

チャート5:ブラジルの国有銀行と非国有銀行の融資残高比較

出所:信頼できると判断した情報をもとに日興アセットマネジメントアジアリミテッドが作成
期間:2014年7月~2019年6月

ブラジルが改革取り組みの恩恵を十分に享受できるようになるまでの道のりはまだ長いが、市場のモメンタムは引き続きプラスである。主なリスク要因は世界の金融環境が再びタイト化するシナリオだが、今のところ状況は引き続き落ち着いている。また、ブラジルは2016年以降複数のショックに耐えてきているほか、これまでのところ改革の計画もなんとか持ちこたえている。

アルゼンチンは選挙に望みがかかる

アルゼンチンでは、世論調査においてマウリシオ・マクリ大統領の支持に弾みがついてきており、8月11日に控えた予備選挙に向けて幸先のいい状況だ。同国のインフレは高水準にとどまっており、6月のCPI上昇率は前月比2.7%となった。一方、中央銀行はタカ派的な姿勢を維持しており、通貨ペソへの信頼を維持するために政策金利を58.7%に据え置いている。

しかし、リスクは依然として高く、これを示すように、7月中旬に格付け会社ムーディーズが「打撃的通貨ショック」のリスクを理由として同国の格付け見通しを「ネガティブ」へと引き下げた。それ以降、アルゼンチンペソは5%を超える下落を見せているが、この先の行方を大きく左右する重要な材料は予備選挙の結果となるだろう。

当資料は、日興アセットマネジメント アジア リミテッド(弊社)が市況環境などについてお伝えすること等を目的として作成した資料(英語)をベースに、日興アセットマネジメント株式会社が作成した日本語版であり、特定商品の勧誘資料ではなく、推奨等を意図するものでもありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社および日興アセットマネジメントのファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。資料中において個別銘柄に言及する場合もありますが、これは当該銘柄の組入れを約束するものでも売買を推奨するものでもありません。当資料の情報は信頼できると判断した情報に基づき作成されていますが、情報の正確性・完全性について弊社および日興アセットマネジメントが保証するものではありません。当資料に掲載されている数値、図表等は、特に断りのない限り当資料作成日現在のものです。また、当資料に示す意見は、特に断りのない限り当資料作成日現在の見解を示すものです。当資料中のグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。当資料中のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。なお、資料中の見解には、弊社および日興アセットマネジメントのものではなく、著者の個人的なものも含まれていることがあり、予告なしに変更することもあります。日興アセットマネジメント アジア リミテッドは、日興アセットマネジメント株式会社のグループ会社です。