本レポートは、2020年8月18日発行の英語版「ASIAN EQUITY MONTHLY」の日本語訳です。内容については英語の原本が日本語版に優先します。

サマリー

  • アジア株式は、前月に続き当月も力強いパフォーマンスとなった。世界の市場センチメントは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン開発に対する楽観的な見方が強まったこと、大手テクノロジー企業の収益が市場予想を上回ったこと、米FRB(連邦準備制度理事会)が当面のあいだ非常に緩和的な金融政策を維持するとしたことを受けて楽観ムードが続いた。アジア株式(日本を除く)の月間市場リターンは米ドル・ベースで8.5%となった。
  • 当月、最も好調なパフォーマンスを示したのは、台湾、インドおよび中国だった。台湾市場は、指数構成比率の高い台湾積体電路製造(TSMC)の好調なパフォーマンスによって押し上げられ、月間リターンが米ドル・ベースで16.3%と大幅に上昇した。インド株式は、低迷した経済を支えるために政策当局が引き続き対策を講じるだろうとの楽観的な見方から約4カ月ぶりの高値をつけ、また中国株式は潤沢な市場流動性や景気回復の兆しによって押し上げられた。
  • アセアン地域の株式市場は、米ドル・ベースの月間リターンがまちまちとなった。マレーシア市場は相対的に好調となり、インドネシア市場は良好なパフォーマンス、シンガポール市場はほぼ横ばいとなった。一方、タイおよびフィリピン市場は下落した。
  • 市場は、経済的打撃の予想以上の深刻化や長期化、高止まりする失業率の高止まり、ワクチン開発の遅れや難航、COVID-19感染者の再増加といった様々な起こり得る失望に対処しなければならないため、第2四半期は慎重さが必要となるかもしれない。当社では、バリュエーションに留意しながら、ソフトウェア、ヘルスケア、5G(第5世代移動通信システム)、産業オートメーション、再生可能エネルギーなど構造的な追い風のある分野を引き続き見出している。

アジア株式

市場環境

アジア株式は大幅に上昇し、グローバル株式をアウトパフォーム
アジア株式は6月に大幅に上昇したのち、当月も引き続き力強いパフォーマンスとなった。世界の市場センチメントはCOVID-19のワクチン開発に対する楽観的な見方が強まったこと、大手テクノロジー企業の収益が市場予想を上回ったこと、米FRB(連邦準備制度理事会)が当面のあいだ非常に緩和的な金融政策を維持するとしたことを受けて楽観ムードが続いた。また、ドルインデックスは、月間の下落幅が約10年振りの大きさとなった。従来ドルが下落する局面で見られるように、リスク資産の価格が上昇している。アジア諸国の複数の国でCOVID-19の感染者数が再び増加し、また米中間の緊張が高まったにもかかわらず、当月のアジア株式(日本を除く)の市場リターンは米ドル・ベースで8.5%と大幅なプラスとなり、グローバル株式のリターン(4.8%)をアウトパフォームした。

国別のパフォーマンスでは、台湾、インドおよび中国が最も好調となる一方、タイ、フィリピンおよび香港が最も劣後した。

台湾、インドおよび中国はアウトパフォーム
台湾株式は、月間リターンが米ドル・ベースで16.3%と大幅に上昇した。株式市場を押し上げたのは指数構成比率の高い台湾積体電路製造(TSMC)で、同社が良好な2020年第2四半期決算を発表したことや競合のインテルが主要ノードの開発の遅れに苦戦していることも追い風となり、好調なパフォーマンスを見せた。その他、韓国株式は、世界のテクノロジー株が相対的に堅調となったことを受けて、アジア地域の全般的な上昇に追随し月間リターンが米ドル・ベースで7.2%となった。台湾と韓国の経済は、2020年第2四半期に前期比および前年同期比ベースで縮小した。

インド株式は上昇し、月間リターンが米ドル・ベースで10.4%となった。国内の新型コロナウイルス感染者数が増加しているにもかかわらず、低迷したインド経済を支えるために政策当局が引き続き対策を講じるだろうとの楽観的な見方から、インド株式は約4カ月ぶりの高値をつけた。

中国株式は、潤沢な市場流動性や個人投資家の旺盛な投資意欲を受けて上昇し、米ドル・ベースの月間リターンが9.4%となった。2020年第1四半期に縮小した中国経済が持ち直して、第2四半期は前年同期比3.2%増となり、回復の兆しが見られたことも株式市場の上昇要因となった。しかし、香港株式は米中間の緊張の高まりや域内における新型コロナウイルス感染者数の急増によってアジアのその他の市場に対して劣後し、月間リターンは米ドル・ベースで-0.7%と下落した。

アセアン市場のリターンはまちまち
アセアン地域の株式市場は、米ドル・ベースの月間リターンがまちまちとなった。マレーシア市場は相対的に好調となり(+8.3%)、インドネシア市場は良好なパフォーマンス(+4.4%)、シンガポール市場はほぼ横ばいとなった(+0.1%)。一方、タイおよびフィリピン市場は下落した(ともに-2.9%)。フィリピン政府は、COVID-19の感染者数が10万人超に増加していることを受けて、マニラにより厳しいロックダウン(都市封鎖)を再び課すと発表した。タイの財務相は、同国の経済が今年8.5%縮小する可能性があるとの見通しを示した。シンガポールの経済は、2020年第2四半期に前期比で41.2%縮小し、またマレーシアおよびインドネシアの中央銀行は自国経済を支えるために利下げを実施した。

今後の見通し

2020年後半は慎重さが必要となる可能性
金融市場は、スペイン風邪以来最も深刻なパンデミック(世界的流行)や第2次世界大戦以降で最も縮小した経済について、次に挙げる理由の1つ以上を用いてもっともらしく説明し、材料視してきていないように見える。その理由とは、中央銀行による緩和策、給付金、早期のワクチン開発、TINA (there is no alternative:他に選択肢がないこと)、FOMO(fear of missing out:機会を見逃してしまうことへの恐れ)だ。当社もこうした理由の一部を当てにしてきたが、頭文字言葉が否応なしに広く使われ始めているときは、精査するときだと言える。

市場は経済的打撃の予想以上の深刻化や長期化、失業率の高止まり、ワクチン開発の遅れや難航、COVID-19感染者数の再増加(「COVID-19の問題」よりも一時休業やロックダウンなどの「対処」の方が経済を悪化させることから、経済の再開を余儀なくされるため)といった様々な起こり得る失望に対処しなければならないため、第2四半期は慎重さが必要となるかもしれない。一方、これらが起こらなかったとしても「普通のこと」としか受け止められず、リスク・リターンのバランスは魅力のないものとなる。したがって、当社ではバリュエーションに留意しながら、ソフトウェア、ヘルスケア、5G、産業オートメーション、再生可能エネルギーなど構造的な恩恵を受けられる分野を引き続き選好し、見出している。

5G、デジタル化、自動化、ヘルスケア、環境インフラを選好
米国大統領選挙を控えるなかドナルド・トランプ大統領が反中国発言を強めるとみられることから、中国が継続している「量よりも質」を重視する政策への取り組みは試されるだろう。しかし、反中国的な発言が強まったとしても、中国政府はこれまでのところ比較的慎重なアプローチをとっており、高い柔軟性がある。中国政府は、改革、経済的な自立の強化、そして5G、デジタル化、自動化、ヘルスケア、環境インフラといった新たなインフラ構築の加速に現在も注力しており、これらの分野を当社では引き続き選好している。

韓国や台湾には多くの革新的な優良企業があるにもかかわらず、華為技術(ファーウェイ)をめぐる米中間のテクノロジー覇権争いによって混乱が深まるリスクが高まっていることから、韓国や台湾のテクノロジー・ハードウェア・セクターに対しては選別的な姿勢が必要とされる。

インドの長期見通しについてはポジティブ
世界最大の民主主義国家であるインドはCOVID-19への対処に引き続き苦戦する可能性が高く、また、モンスーンによる季節的な押し上げ要因が今年は「弱まる」と見られる。短期的には経済への痛手が大きいものの、当社では過去2年にわたり実施された改革による追い風に基づき、インドのより長期の見通しについてポジティブな見方を維持している。当社では引き続き民間銀行、デジタル・サービス、物流、一部の消費関連サブセクターに対して明るい見方を持っている。

アセアンはサプライチェーンの再編から恩恵を受ける可能性
アセアン市場もインドと同様にCOVID-19の打撃を大きく受けたが、厳しい崩壊的状況から徐々に回復しつつある。ベトナムなど一部の国は難局を切り抜けて耐性や安定性への評価を新たに獲得しており、世界のサプライチェーンの再編に関連する投資に明るい兆しとなっている。一方、インフラが不十分であるために緩慢な回復基調となることが示唆される国もあるが、これらの国はそうした不十分な点に対処できれば機会が高まるだろう。

当資料は、日興アセットマネジメント アジア リミテッド(弊社)が市況環境などについてお伝えすること等を目的として作成した資料(英語)をベースに、日興アセットマネジメント株式会社が作成した日本語版であり、特定商品の勧誘資料ではなく、推奨等を意図するものでもありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社および日興アセットマネジメントのファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。資料中において個別銘柄に言及する場合もありますが、これは当該銘柄の組入れを約束するものでも売買を推奨するものでもありません。当資料の情報は信頼できると判断した情報に基づき作成されていますが、情報の正確性・完全性について弊社および日興アセットマネジメントが保証するものではありません。当資料に掲載されている数値、図表等は、特に断りのない限り当資料作成日現在のものです。また、当資料に示す意見は、特に断りのない限り当資料作成日現在の見解を示すものです。当資料中のグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。当資料中のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。なお、資料中の見解には、弊社および日興アセットマネジメントのものではなく、著者の個人的なものも含まれていることがあり、予告なしに変更することもあります。日興アセットマネジメント アジア リミテッドは、日興アセットマネジメント株式会社のグループ会社です。