本レポートは、2020年7月8日発行の英語版「SEEING BEAUTY IN ASIAN SMALL-CAP STOCKS」の日本語訳です。内容については英語の原本が日本語版に優先します。

サマリー

アジアの小型株は潜在収益性の高い投資テーマである。しかし、この分野で持続的に成功を収めるには、巧みで経験豊富なアクティブ運用力が必要であり、その広範なリサーチの知見と実地の知識によって、小型株という十分なリサーチが行われていないユニバースで潜在的な「勝者」を見出し「敗者」を回避することが可能となるだろう。

隠れた小さな宝石たち

「よく見なさい。美とは時に小さいものかもしれない」という格言を生んだ18世紀のドイツの哲学者イマヌエル・カントは、美学の概念の探求にあたって一定の小さなものに美しさを見出していたようだ。念のために言うと、「小さいことは美しい」との見方をしているのは哲学者だけではない。小型株の投資家も、時価総額面で過小評価されている相対的に小規模で認知度が低い上場株に、長期的な潜在リターンは言うまでもなく「美しさ」を見出している。

機敏で成長が早く発展の初期段階にある小型企業は、市場機会を素早く捉えて極めて高い利益成長をもたらすとともに、大型の競合他社に比べて早いペースで自ら資本を増大させることができる。堅固なビジネスモデルと革新的な戦略を有する小型企業は、特にそのニッチな製品やサービスが成功を収めている場合、飛躍的な成長を遂げる可能性がある。実際、成功している世界中の大型企業の多くは、際立った成長能力を有する小さな起業家的・革新的企業として出発した。

潜在リターンは高いがリスクも高い

その一方で、製品の失敗や売上げの急激な鈍化、資本コストの急増が起きた場合、特にニッチ市場への特化性が強い小型企業にとっては非常に大きな打撃となり得る。また小型株は、主要幹部を失った場合に脆弱となりやすい。

一般的に、小型企業は株式アナリストに十分にカバーされておらず、大型企業に比べて公開されている情報が少ない。これが小型株セクターに市場非効率性と株価のミスプライシングの可能性をもたらす。小型株に伴う他のリスク要因としては、ボラティリティや低流動性が挙げられる。小型株は大型株に比べ、出来高が薄くて売値・買値のスプレッドが広く、日中の価格変動幅が大きいからである。流動性が低い小型株の株価を急落させるには、例えば、投資家から大規模な売り注文がいくつか出れば十分だ。反対に、大規模な買い注文が入れば、小型株はそれだけで株価がかなり急速に上昇する。

小型株投資はその潜在的好リターン機会に対して広範なリサーチ活動・分析を行う用意がない投資家には向かない、というのが当社の見方だ。小型株投資で持続的な成功を収めたければ、経験豊富なアクティブ運用者による十分な技量が必要である。そのような運用者には、小型株という十分なリサーチが行われていないユニバースで潜在的「勝者」を見出し「敗者」を回避することを可能とする、広範なリサーチの知見と実地の知識が備わっている。

投資機会が豊富なアジア

世界の経済成長のエンジンであり「機会の地」であるアジアは、株価が2倍以上になる可能性のある小型株を探し出そうとする投資家にとって、引き続き世界のなかで最も魅力的で多様な地域の1つである。アジア株式のポートフォリオにおいて別の特性の分散および超過収益を求めている投資家にとって、小型株は実に検討する価値のあるセクターだ。MSCI Asia Small Capインデックス(除く日本)とMSCI Asiaインデックス(除く日本)でみると、一定の年ではアジアで小型株が大型株に対して十分にアウトパフォームしており、特に2001年や2009年のように大幅な下落相場後の回復局面ではそれが顕著となっている(チャート1参照)。

チャート1

より重要な点として、アジア小型株のユニバースは、アクティブ運用者にとってボトムアップの銘柄選択を行うのに幅広い投資機会群を提供している。例えば、同地域の代表的インデックスに含まれていない無数の小型株銘柄に加え、MSCI Asia Small Capインデックス(除く日本)のユニバースには1,400を超える銘柄があるが、これに対してアジアの大型株および中型株セクターの銘柄数は、MSCI Asiaインデックス(除く日本)によると約1,190銘柄(2020年6月30日現在)となっている。

アクティブ運用が超過収益をもたらす

つまるところ、アジアの小型株投資は株式におけるアクティブ投資の神髄を包含している。アジア小型株は、アクティブ運用での銘柄選択が真の付加価値をもたらし超過収益(一般的にベンチマークのパフォーマンスを上回った部分のリターンと定義される)を生み出す独特の株式分野だ。一方で、アジア小型株式分野のパッシブ運用は近年、MSCI AC Asia Small Capインデックス(除く日本)に連動するインデックス・ファンド「iShares MSCI All Country Asia ex Japan Small-Cap ETF」が2015年8月に運用停止となり、その後2016年から2019年にかけてアジアの小型株インデックスが同地域の大型株インデックスをアンダーパフォームするなど、投資家を失望させている。

アジア小型株の「勝者」へのエクスポージャーを取りたい投資家にとって、保有銘柄数が1,000を超えるETF(上場投信)は、域内の収益性の低い小型株を含むことから適切ではないかもしれない。潜在的「敗者」が潜在的「勝者」を数で上回ってきたアジアの小型株セクターにおいては、パッシブ運用では銘柄選別による最良の収益機会を捉えられないというのが当社の考えだ。市場リターン(またはベンチマーク・リターン)の先を見てアクティブ運用による銘柄選択を行うことが、アジア小型株から最良の長期リターンを獲得する最も有効なアプローチであると、当社ではみている。小型株投資の本質は将来の「勝者」を見出すことにある。優秀なファンド・マネジャーはベンチマークを超えて大幅な超過収益を付加すると期待される。

まとめると、当社では、アジアの小型株市場には非効率性が存在し、企業の真の価値が株価に正確に反映されていないとみている。その結果、アクティブ運用の運用会社にとっては、投資家に超過収益をもたらし得る余地が大きくあると言える。優良なバランスシートと持続可能な収益を有し、ファンダメンタルズにポジティブな変化が見られるといった有望なアジア小型株は、財務諸表の徹底した分析を経て、また業界のカンファレンスや経営陣とのミーティング、企業訪問を通じて収集した知見を通じて、特定することが可能となる。

当社では、アジア市場の現地の言語を話せる能力が、ファンド・マネジャーにアジア小型株分野における優位性をもたらすとみている。同分野では、経営陣がそれぞれの国の母国語でコミュニケーションしようとする傾向にあるからだ。例えば、中国の小規模企業は、経営陣の多くが英語を話さない。彼らとコミュニケーションするには、中国語を介するのが唯一の方法である。この点で、複数の言語を話すファンド・マネジャーやアナリストを有していることは、運用チームに優位性をもたらす。またさらに、アジアの小規模企業と現地の言語でコミュニケーションすることによって、それらの企業の経営陣との信頼関係構築が促されるとともに、運用チームが個別市場の微妙な差異を理解できるようになる。

一言でいえば、アジア小型株への投資は潜在収益性の高い投資テーマである。十分なリサーチが行われていないこれらの小規模企業に対してリサーチを実施するスキルセットを有していない投資家は、収益機会が豊富であるものの不確実性も強いアジア小型株のユニバースで潜在的「勝者」を見出し「敗者」を回避する能力を持った、経験豊富なアクティブ運用の運用会社に投資を委託するのが得策と考える。

当資料は、日興アセットマネジメント(弊社)が市況環境などについてお伝えすること等を目的として作成した資料(英語)をベースに作成した日本語版であり、特定商品の勧誘資料ではなく、推奨等を意図するものでもありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社のファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。資料中において個別銘柄に言及する場合もありますが、これは当該銘柄の組入れを約束するものでも売買を推奨するものでもありません。当資料の情報は信頼できると判断した情報に基づき作成されていますが、情報の正確性・完全性について弊社が保証するものではありません。当資料に掲載されている数値、図表等は、特に断りのない限り当資料作成日現在のものです。また、当資料に示す意見は、特に断りのない限り当資料作成日現在の見解を示すものです。当資料中のグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。当資料中のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。なお、資料中の見解には、弊社のものではなく、著者の個人的なものも含まれていることがあり、予告なしに変更することもあります。