当レポートは、英語による2019年12月発行「DEVELOPED MARKETS OUTLOOK 2020」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。

米中間の「第1段階」の貿易合意をめぐる楽観ムードや両国の経済指標の好調さなどを受けて投資家心理が大幅に改善するなか、2020年を控えて世界のリスク資産は概ね好調に推移している。当社では、2020年の先進国市場の出だしについて依然懸念している。例年であれば1月は、年末のタックス・ハーベスティング(損益通算によって税額を抑えるための損出し)やリバランスの動きを受けて良好なリターンが期待されるところだ。しかし、2019年末にかけてリスク資産市場は上昇しており、リターンを先取りした格好となっていることから、新年を迎えても典型的な「1月効果」は発揮されないかもしれない。地政学的情勢は引き続き大きな注目を集めるだろう。11月に米国大統領選挙を控えており、年の後半にはそうした傾向が特に顕著になるとみられる。米国のドナルド・トランプ大統領は、選挙キャンペーンが本格化する前に中国との貿易合意をまとめたいところだろう。とりわけ民主党が一枚岩ではない状況にあって、市場や経済が好調に推移すればトランプ大統領の再選を後押しするとみられる。また、トランプ大統領の弾劾裁判は選挙キャンペーンの場となり、最終的には同氏の再選確率に好影響を及ぼすとみている。

米国の金利については、2020年を通じて米国連邦準備制度理事会(FRB)およびトランプ大統領の動向によって左右される展開が続くだろう。米国のファンダメンタルズは良好であることから金利上昇バイアスがあるとみているが、それが潜在的な政治的リスクやFRBの緩和バイアスによって相殺されると考える。FRBについては、2019年に積極的に利下げを行い、2018年の利上げ分をほぼ完全に巻き戻していることから、少なくとも2020年前半は政策金利を据え置くと予想している。また、そうなれば、政策変更は11月の大統領選挙後まで行われない可能性が高まる。なぜなら、それ以前に行動を起こせば、FRBにはさらなる政治的圧力がかかる可能性があるからである。政治的圧力と言えば、トランプ大統領はジェローム・パウエルFRB議長を公然と批判してきた。当社の見立てでは、トランプ大統領は、自身が再選されればパウエル氏が2022年2月に任期満了を迎えるタイミングで、おそらくよりハト派寄りの新FRB議長を任命しようと試みるだろう。政策金利面で何か動きがあるとは予想していないが、準備預金残高を増加させるために資産購入を継続するなど、FRBは公開市場操作を通じて引き続き強い影響力を及ぼすとみている。2019年12月第1週時点において、FRBのバランスシートは4.1兆米ドルまで拡大している。現在のペースだと、量的引き締めによるバランスシート縮小分が2020年第1四半期中に完全に巻き戻されることになる。FRBは、現在のターム物レポ・ファシリティによる応急処置ではなく、より長期的な解決策を講じるためにQE4(量的緩和第4弾)に踏み切らざるを得なくなる可能性が十分にあるとみられる。また、1兆米ドルを超える財政赤字(債券供給の純増額に基づく)が引き続き逆風要因となり、米国債の利回り低下余地は限定されよう。米ドルは、米国の金利が相対的に高水準であることによって引き続き下支えされるとみているが、足元の相対的なバリュエーション水準からして大幅な上昇は予想していない。2019年における米国債イールドカーブの長短金利逆転を受けて、過去の事例からすると米国の景気後退リスクは高まっているが、当社では、FRBの積極的な政策対応によって景気低迷は回避されると考えている。

英国については、2019年12月に行われた総選挙において2020年1月31日付での英国のEU離脱を支持する有権者の意思が明確に示される結果となり、政治の先行きがより見通しやすくなっていることは好感される。しかし、合意のない強硬離脱となるおそれは残っている。英国のボリス・ジョンソン首相はEU離脱後の移行期限を2020年12月31日に改める構えであり、イギリスポンドの回復が引き続き妨げられる可能性がある。ポジティブな材料としては、保守党が80議席差をつけて下院の過半数を獲得したことで、英国は大幅に強い姿勢でEUとの交渉に臨むことができる状況にあり、より建設的な協議が行われればイギリスポンドの追い風になると考えられる。英国のリスク資産は、米国および欧州市場と比較した相対的なバリュエーションでみると、株式からクレジットに至るまでの様々な資産クラスにおいて割安に見受けられる。

欧州については、鉱工業生産や購買担当者景気指数(PMI)が欧州経済の低迷を示すなか、2020年も年間を通じて低金利が継続すると考えている。足元で鈍化傾向にあるドイツ経済は、最新のGDP成長率も軟調な結果となっており、2020年前半にテクニカル・リセッション(2四半期連続してマイナス成長)に陥るとみている。欧州中央銀行(ECB)は、毎月200億ユーロのペースでバランスシート拡大を継続する見通しである。しかし、マイナス金利環境の悪影響に関する議論が広がりをみせていることから、当社では、今後数年間においてECBが政策金利を調整するとはみていない。クリスティーヌ・ラガルドECB総裁は財政政策による景気刺激策を引き続き求めていくとみられ、ドイツはそうした案に抵抗を示してきているが、自国経済がリセッションに近づくにつれて抵抗が弱まる可能性が高いだろう。経済成長が過去平均を下回る見通しに加え、「無期限」のバランスシート拡大を受けて、低金利は想定よりもかなり長期化する見通しである。過去数十年にわたって低金利そしてマイナス金利を経験してきた日本の事例は、低成長国が低金利環境から脱却することが困難であることを物語っている。

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