当レポートは、英語による2019年12月発行「GLOBAL EQUITY OUTLOOK 2020」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。

ノイズのなかにあっても『フューチャー・クオリティ』に焦点を絞る

中央銀行の政策ミスと政治面の不透明感という2つの組み合わせは、それまでの約10年間にわたるグローバル株式市場の強気相場を2018年末までにあやうく終わらせるところだった。その組み合わせは、サンタクロースに年末恒例の上昇相場というプレゼントを届けるのをやめさせるに足る、明らかに十分な材料だった。現在、2019年が終わりに近づくなか、世の中の将来に対する見通しは明るさを増しており、慎重ながらも楽観的なムードが高まりつつある。

経済指標は比較的軟調に推移しているが(ただし、米国の消費は例外だが)、今後の改善を示す兆候が出てきており、悪化のペースも際立って鈍化している。最も重要なのは、米FRB(連邦準備制度理事会)がバランスシート拡大を再開するとともに利下げを実施し、全般的に大きくハト派寄りのスタンスを取ったことである。トランプ米大統領のツイッター投稿のおかげで、FRBの現体制に対する政治的圧力は今年、極めて高い水準に達した。その激しさは、2019年6月にイールドカーブの長短逆転が起きたことによってもヒートアップした。下のチャート1が示す通り、イールドカーブの逆転は、米国にリセッション(景気後退)が迫っていることを警告する前兆として、これまで、かなり確度の高いものであった。最近のより拡張的な金融政策への回帰が、FRBが政治的圧力に屈したことを示しているのか、それとも2018年の引き締めが過度な「やり過ぎ」であったという政策ミスを遅ればせながら認めたことを示しているのか、現時点で把握するのは困難だ。しかしながら、その動機が何であれ、これら一連の金融政策は、FRBが資産価格の下支えに全力を注いでいるという投資家の間に広がる確信を回復するのに寄与した。

チャート1:イールドカーブの逆転と米国のリセッション(景気後退)

チャート1:イールドカーブの逆転と米国のリセッション(景気後退)

出所: 信頼できると判断した情報をもとに日興アセットマネジメントヨーロッパリミテッドが作成
期間: 1977年3月31日~2019年11月28日

2019年は概ね、政治が一貫して投資家の不安の元凶となってきた。しかし、この点についても、迫る選挙に焦点が向けられつつある感があり、これはリスクが少なくとも緩和されることを示唆している。例えば、トランプ大統領は1987年に出版された自伝「The Art of the Deal」を明らかに再読した模様だ。同書で大統領は「素晴らしいプロモーションを行って、ありとあらゆるマスコミに取り上げてもらうことは可能である…しかし、期待に沿い成果を達成することができなければ、結局のところ人々にはわかってしまうものだ」と述べている。中国との貿易戦争をエスカレートさせたことは、当初は自身の支持者の中核層には受けが良かったものの、2019年12月に発動を予定していた関税は、米国の一般大衆向け小売企業のコストを増大させる恐れがあった。一方、米国の農業経営者は、中国への輸出が激減したことですでに打撃を受けている。2020年の大統領選まで1年もないことから、「期待に沿う」ことの圧力は間違いなく高まっている。

噂されているエスカレーションの緩和と中国による米国農産品の多額購入は、確かに期待に沿う動きと言える。しかし、懸案の貿易協定が「ミニディール」あるいは「第一段階」と呼ばれている事実からわかるように、米中が二国間の隔たりを本格的に解決するには、対処すべき問題が山ほどある。選挙までの残り時間が迫っているというプレッシャーが引き金となって、トランプ大統領のアプローチはより融和的なものに転じているように感じられる。2020年11月の選挙は次期大統領が何らかの「第二段階」のディール(協定)を合意するまでに4年間の猶予を与えることになる。当社では協定合意は容易ではないと見ており、今年の夏に市場を覆った懸念が再び繰り返すことになったとしても決して驚かない。

FRBが方針転換を行った際、スタイル・ローテーションが急速に発生し(チャート2参照)、これを受けて金融や資本財・サービス、素材、ならびに一般消費財・サービスの一部といった従来型「バリュー」セクターの良好なパフォーマンスに繋がった。この動きはその後失速したものの、米中が実際に貿易協定に署名する運びになれば、再び発生する可能性がある。そのようなスタイル・ローテーションが再び発生するか否かは、ディール(協定)が企業の設備投資を大幅な回復に転じさせられるような内容であるかに、おそらく依存するだろう。

チャート2:バリュー株対グロース株のローテーションとFRBのバランスシート

チャート2:バリュー株対グロース株のローテーションとFRBのバランスシート

出所: 信頼できると判断した情報をもとに日興アセットマネジメントヨーロッパリミテッドが作成
期間: 2018年12月13日~2019年11月28日

当戦略では、これらマクロ上の問題を注視しながらも、高いキャッシュフロー投資収益率を長期的に維持できる企業に引き続き焦点を絞っていく。当戦略が選好するのは、明確な競争優位性を有し、それを維持すべく経営陣が多くの投資を継続している企業だ。そのような「フューチャー・クオリティ」企業は、前述の景気敏感セクターを含め、市場の大半のセクターに見出すことができる。そのような企業の好例の1つが、最近ポートフォリオに加えたGentexだ。同社は自動車用自動防眩ミラーの市場で90%のシェアを有し、売上の6%を研究開発に投資している。自動車市場全体の健全性に対する不安感が同銘柄のバリュエーションを押し下げており、同社株を魅力的な水準で購入できる機会をもたらした。

ヘルスケア・セクターに対する投資家心理は政治的ニュースに敏感な状況が続いている。同セクターは最近、幾分かの回復を見せているが、米国において民主党が主導する更に大規模な業界再編案が実現する可能性は低いであろうという市場参加者の推測に支えられており、これら大規模な変化を実行に移すコストの大きさが明らかになってきたことが背景にある。

米国にヘルスケア支出の抑制対策を講じる必要があることは間違いなく、当戦略ではそのような考えに基づきポートフォリオにおいてAnthem、ResMed、PhilipsおよびLHC Groupを保有している。支出側にはまさに実際の圧力がかかっているものの、米国が世界のヘルスケアの研究開発における主要なプレイヤーであることに変わりはなく、同国の消費者は依然として最良・最新の治療を求めている。当戦略では、そのようにイノベーションを後押しするようなフューチャー・クオリティ企業への新たな投資機会の発掘を継続する。最近ポートフォリオに加えたBio-Techneはその好例だ。同社のタンパク質解析技術は、細胞・遺伝子治療のような新しい治療法の成功にとって不可欠なものとなるだろう。

まとめると、市場センチメントは引き続き移ろいやすく、政治的イベントや短期的なマクロ経済活動指標がもたらす頻繁な変化に左右されやすい状況が続くと思われる。当戦略は、持続可能なフューチャー・クオリティに注目し続けたことで、2019年夏のリセッション懸念に動じることもなく、したがって、今となってはそのようなリセッション懸念が見当外れであったことが明らかになった現時点でもポートフォリオに大きな変更を加えずに済んでいる。

(注) 個別銘柄への言及は、当運用戦略に基づいて運用されるポートフォリオにおいて当該銘柄の保有が継続されることを保証するものではなく、また当銘柄の売買を推奨するものでもありません。

グローバル株式戦略の概要

【投資対象】
日興アセットマネジメント株式会社のグローバル株式戦略に合致した有価証券
【報酬等の概要】
お客様には以下の費用をご負担いただきます。
<投資顧問報酬等>
固定報酬(投資信託に投資する場合を含む):年率0.715%(税抜き0.65%)以内
その他費用 : 組入れ有価証券の売買委託手数料など。また投資信託に投資する場合、信託財産留保額、組入れ、解約等に際しての手数料等、組入れ有価証券の売買委託手数料、有価証券の保管などに要する費用、管理費用、監査費用、設立にかかる費用、借入金の利息、借株の費用などがかかる場合があります。
※その他費用については、運用状況などにより変動するものであり、事前に料率、上限額などを表示することができません。
契約に関してお客様が預託すべき委託証拠金はございません。
当戦略の投資に際しては、投資一任契約に基づき投資信託に投資する場合があります。

当戦略にかかるリスク情報

  • 当戦略の投資にあたっては、主に以下のリスクを伴ないます。お申込みの際は、当戦略のリスクを充分に認識・検討し、慎重に投資のご判断を行なっていただく必要があります。
  • 当戦略は、主に株式を実質的な投資対象としますので、株式の価格の下落や、株式の発行体の財務状況や業績の悪化などの影響により、運用資産の評価額は変動し、損失を被ることがあります。また、外貨建資産に投資する場合には、為替の変動により損失を被ることがあります。したがって、投資元金は保証されているものではなく、運用資産の評価額の下落により、損失を被り、投資元金を割り込むことがあります。当戦略の運用による損益はすべて投資者の皆様に帰属します。
  • 当戦略の主なリスクは以下の通りです。運用資産の評価額の変動要因は、下記に限定されるものではありません。

【価格変動リスク】
一般に株式の価格は、会社の成長性や収益性の企業情報および当該情報の変化に影響を受けて変動します。また、国内および海外の経済・政治情勢などの影響を受けて変動します。当戦略においては、株式の価格変動または流動性の予想外の変動があった場合、重大な損失が生じるリスクがあります。一般に中小型株式や新興企業の株式は、株式市場全体の平均に比べて価格変動が大きくなる傾向があり、運用資産の評価額にも大きな影響を与える場合があります。さらに、一般に新興国の株式は、先進国の株式に比べて価格変動が大きくなる傾向があり、運用資産の評価額にも大きな影響を与える場合があります。

【流動性リスク】
市場規模や取引量が少ない状況においては、有価証券の取得、売却時の売買価格は取引量の大きさに影響を受け、市場実勢から期待できる価格どおりに取引できないリスク、評価価格どおりに売却できないリスク、あるいは、価格の高低に関わらず取引量が限られてしまうリスクがあり、その結果、不測の損失を被るリスクがあります。また、一般に中小型株式や新興企業の株式は、株式市場全体の平均に比べて市場規模や取引量が少ないため、流動性リスクが高いと考えられます。さらに、一般に新興国の株式は、先進国の株式に比べて市場規模や取引量が少ないため、流動性リスクが高まる場合があります。

【信用リスク】
一般に投資した企業の経営などに直接・間接を問わず重大な危機が生じた場合には、当戦略にも重大な損失が生じるリスクがあります。デフォルト(債務不履行)や企業倒産の懸念から、発行体の株式などの価格は大きく下落(価格がゼロになることもあります。)し、運用資産の評価額が値下がりする要因となります。また、金融商品取引所が定める一定の基準に該当した場合、上場が廃止される可能性があり、廃止される恐れや廃止となる場合も発行体の株式などの価格は下がり、当戦略において重大な損失が生じるリスクがあります。さらに、当戦略の資金をコール・ローン、譲渡性預金証書などの短期金融資産で運用することがありますが、買付け相手先の債務不履行により損失が発生することがあります。この場合、運用資産の評価額が下落する要因となります。

【為替変動リスク】
外貨建資産については、一般に外国為替相場が当該資産の通貨に対して円高になった場合には、運用資産の評価額が値下がりする要因となります。一般に新興国の通貨は、先進国の通貨に比べて為替変動が大きくなる場合があります。

【カントリー・リスク】
投資対象国における非常事態など(金融危機、財政上の理由による国自体のデフォルト、重大な政策変更や資産凍結を含む規制の導入、自然災害、クーデターや重大な政治体制の変更、戦争など)を含む市況動向や資金動向などによっては、当戦略において重大な損失が生じるリスクがあり、投資方針に従った運用ができない場合があります。一般に新興国は、情報の開示などが先進国に比べて充分でない、あるいは正確な情報の入手が遅延する場合があります。当戦略の投資対象資産が上場または取引されている諸国の税制は各国によって異なります。また、それらの諸国における税制が一方的に変更されたり、新たな税制が適用されたりすることもあります。以上のような要因は、運用資産の評価額に影響を与える可能性があります。

この提案書に記載されているパフォーマンスの数字は全て予測によるシミュレーションおよび過去の実績によるものです。
よって必ずしも将来同様の結果がもたらされることを保証するものではありません。

当社がインサイダー情報を入手した場合には、当該情報が公開されるまでの間、運用に制約が加わることとなり、運用パフォーマンスに悪影響を及ぼすおそれがあります。お客様より当社の役社員にインサイダー情報を伝達することのないようにご注意下さい。

当資料は、日興アセットマネジメント株式会社が「グローバル株式戦略」についてお伝えすること等を目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料ではありません。内容に関する一切の権利は弊社にあります。事前の了承なく複製、第三者への配布または転載等を行わないようお願いいたします。当資料の情報は信頼できると判断した情報に基づき作成されていますが、情報の正確性・完全性について弊社が保証するものではありません。当資料中のグラフ、数値等は過去のもの、またはシミュレーションの結果であり、将来の運用成果等を約束するものではありません。当資料中のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。