本レポートは、2020年7月22日発行の英語版「GLOBAL INTERNET COMPANIES: SET FOR A QUANTUM LEAP」の日本語訳です。内容については英語の原本が日本語版に優先します。

2020年のグローバル株式は、値動きの荒い展開となっている。世界の金融市場は、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)のパンデミック(世界的流行)が発生した当初に大幅に下落し、S&P500指数は2020年2月から3月にかけての下落幅が米ドル・ベースで33%を超えた。その後、各市場は急反発を見せ、大半は6月末までに下落の大部分を取り戻している。

しかし、より詳しく見てみると、打撃の深刻さは業種によってばらつきがあることがわかる。インターネット株は2月から3月にかけて相対的に持ち堪え、iEdge-Factsetグローバル・インターネット・インデックスの下落幅は米ドル・ベースで25%にとどまった。これに対して、航空会社株は最も大きな打撃を受けた部類となり、NYSE Arcaグローバル・エアライン・インデックスの下落幅は57%を超えた。インターネット・セクターは相場の回復局面でもアウトパフォームを続け、同セクターのインデックスは足元でCovid-19流行前の最高値を10%近く上回っている。これは意外なことではない。インターネット企業は概して、負債比率が低くバランスシートが強固であるとともに、製品サイクルが短く、必要人員数が比較的少なくて済むという特性があり、難局を切り抜けやすいからだ。

インターネット・セクターの優位性は新しい話ではない。FacebookやAlphabet、Amazonは、S&P500指数の構成銘柄のなかで以前から時価総額トップ5入りしているお馴染みの顔ぶれだ。 しかし当社では、これらの企業がコロナ後の世界でより優位性を増すと見ている。インターネット株は、この先何年もの世界を作り変えると予想される3大テーマ、「eコマース」、「オンライン広告」および「モノのインターネット(IoT)」の中心的存在だからだ。

eコマース

iEdge-Factsetグローバル・インターネット・インデックスに占めるeコマース・サブセクターの比率は約30%である。売上げの大部分がeコマースからもたらされている主要構成銘柄は、阿里巴巴(Alibaba)、Amazon、京東商城(JD.com)、eBay、百度(Baidu)、拼多多(Pinduoduo)、Zホールディングス (前ヤフー)である。

企業が消費者の購買パターンをオンライン購入チャネルにシフトさせることができれば、eコマースの成長ポテンシャルは極めて大きいものとなる。バンクオブアメリカ・メリルリンチの推定によると、世界でのeコマースの普及率は長期的に11%から25%超へと高まる可能性がある。これを裏付けるのは以下のような要因だ。

  1. 大きな潜在成長余地:eコマースの普及率が最も高いのは韓国と中国だが、その両国でも小売りに占めるeコマースの割合は2019年時点で約25%にすぎず、他の国ではさらに低い水準にあることから、非常に大きな成長余地があることを示している。

    チャート1

  2. 利便性とスピード:利便性は常にeコマースのセールスポイントとなってきた。人々は実店舗を訪れることなく、いつでもどこでも商品やサービスを購入することができる。 サプライチェーンの最適化が進めば、eコマース企業は消費者に届けるスピードをより向上させることが可能になるだろう。

  3. オンラインで提供できる商品・サービスの拡大:実店舗でしか提供できない商品やサービスの数は減少傾向にある。こうしたアイテムはオンラインで購入できるものがますます増えており、そのような購入の利便性とスピードも向上している。

  4. 実店舗・オンライン間における購入体験格差の縮小:拡張現実などオンラインのユーザー・エンゲージメント・ツールが出てきたことによって、実店舗とオンラインのあいだにおける購入体験の格差が縮小するとみられる。

  5. eコマースの顧客ロイヤリティの高まり:eコマース企業のあいだで一般的となっているサブスクリプション(定額制サービス)・モデル(Amazonが提供するアマゾン・プライムなど)が拡大することによって、長期的な顧客ロイヤリティおよび顧客維持につながるとみられる。

オンライン広告(ソーシャル・メディアおよび検索エンジン)

iEdge-Factsetグローバル・インターネット・インデックスは、その約27%をオンライン広告サブセクターが占めているため、オンライン広告への長期的なシフトやデジタル広告への支出割合の拡大が追い風になるとみられる。売上げの大部分をオンライン広告から得ている主要構成銘柄は、Alphabet(Google)、Facebook、TwitterおよびNaverである。

当社では、ソーシャル・メディア(Facebook、Twitterなど)および検索エンジン(Googleなど)における広告の成長余地は依然として大きいとみている。これらのプラットフォームは、消費者データの徹底した分析を通じてより適切な広告ターゲット設定を提供できるため、その結果としてコンバージョン率(ユーザーの広告閲覧が商品購入などその広告が目的とする成果につながった割合) が向上する。また、従来型のメディアと比べてより豊かなコンテンツ(インタラクティブ広告など)の提供やオンライン会話の生成が可能であることから、顧客エンゲージメントを高めて広告の可能性を広げている。当面の売上げを牽引するのは2020年の米国大統領選挙だろう。政治広告の総支出額は60億米ドルにのぼると予想され、その大部分がFacebook、Google、Twitterなどのプラットフォームのオンライン広告に向かうと見られる。

この成長は経験的実証によっても裏付けられている。シティ・リサーチの予想によると、世界の広告支出は今後も増加を続けるとともに、デジタル広告分野の伸び率が従来型のプラットフォームの伸び率を上回る。

チャート2

さらに、データによると、広告支出の割合がメディア消費の割合を上回っており、(テレビ、新聞、雑誌といった)従来型の広告プラットフォームへの支出が過剰であることを示しているように見受けられる。したがって、マーケティング予算が世界的にインターネット広告やモバイル広告といったデジタル分野へとシフトする余地がある。

チャート3

モノのインターネット(IoT)

IoTの軸となる原理は、インターネットを通じて様々な異なる機器を接続し、これらの機器すべてでデータを収集し・共有することである。あらゆる固有のデータの流れがリアルタイムで統合されることでデジタル知能の水準が高まり、ハイテク度や反応性のより高い世界が生み出される。それらの機器が個別に作動していたら実現しなかったであろう世界だ。

マッキンゼー&カンパニーはIoT投資が2022年まで年率13.6%の伸びを見せるとの予想を示しており1、スタティスタは世界中のエンド・ユーザーによるIoTソリューションへの支出が2025年までに1兆5,670億米ドルに達するとしている。IoT革命の主な促進要因としては、以下が挙げられる。

1 出所:https://www.mckinsey.com/industries/private-equity-and-principal-investors/our-insights/growing-opportunities-in-the-internet-of-things

  1. 大きな潜在成長余地:eコマースの普及率が最も高いのは韓国と中国だが、その両国でも小売りに占めるeコマースの割合は2019年時点で約25%にすぎず、他の国ではさらに低い水準にあることから、非常に大きな成長余地があることを示している。

  2. 5G(第5世代移動通信システム)テクノロジーの発展:帯域幅の拡大とネットワーク・パフォーマンスの向上を通じてインターネット接続が向上することにより、IoTの成長に拍車が掛かるだろう。特に恩恵を受けると見られるのが地理的に広いエリアにわたる広域IoTネットワークで、これまでは遠距離の大量データ送信を効率的に行えないことが主な障壁となっていた。

  3. センサー・テクノロジー:データを収集するためにIoT機器に埋め込まれているもので、今後も性能およびコスト効率が高まるとみられる。

  4. データ処理能力:過去15年間で100倍向上している。これによって収集されたデータのリアルタイムでの処理・分析が可能となり、実用的な知見が生み出される。

チャート4

Covid-19によりデジタル革命は飛躍的に前進

Covid-19のパンデミックによって、世界はソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)と新たな生活習慣の形成を余儀なくされた。また、今回のパンデミックがなかったら向こう10~20年は実現しなかったであろうという水準のデジタル化が、世界的にもたらされた。その加速の規模について、ShopifyのCEOは、ビジネスニュース専門サイト「ビジネスインサイダー」の最近のインタビューで、「2030年に起こると想像していた未来が現在へと引き寄せられた」と述べた。デジタル革命が来るのは皆わかっていたことであり、Covid-19はそれを早めたにすぎない。このシフトから恩恵を受ける立場にある主要プレイヤーの1つがインターネット企業だ。

人々がウイルスに晒されるリスクを最小化しようと実店舗へ行く回数を減らしているため、パンデミックによってオンライン小売りへの転換が加速している。最近の米国のクレジットカード/デビットカード総合データも、年初には15%にすぎなかったeコマースの普及率が4月の最終週には最高で35%まで拡大したことを示した。このような加速は英国でも非常に際立っており、2020年3月にオンライン販売が急増した。

チャート5

当社では、パンデミックが消費者のオンライン購買方法をより長期にわたって変える可能性があるとみている。具体的に言うと、以前はオンライン購入に消極的であった年齢層や、食料品、家庭用パーソナルケア製品、日用品などこれまでオンライン購入の占める割合が低かった特定の商品カテゴリーにおいて、普及が拡大する可能性がある。例えば、Amazonは最近、約10万人の人員を採用して医療用品および生活必需品の提供を優先する計画を発表したが、これは明らかにオンライン食料品ビジネスへの需要が拡大していることを示すポジティブなサインだ。

さらに、eコマース・プラットフォームが成長するにつれ、企業はネットワーク効果を利用して収益化機会を拡大することができる。その証拠に、Alibabaはモバイル決済プロバイダーの大手となり、Amazonは独自の音楽配信事業を立ち上げている。

TikTokなど新たなソーシャルメディア・プラットフォームの台頭とパンデミック下でのデジタル・メディアソースの消費拡大によって、広告主が予算のより多くをデジタル広告へとシフトさせる動きが促進されるものとみられる。

チャート6

最後に、当社では、Covid-19によりIoTの採用が個人や企業のレベルでスピードアップするとみている。ウイルスの流行を封じ込めるために、各国政府は理想として個人の健康データをリアルタイムで収集・処理しできるだけ早く対応したいと考えるであろうが、それに適していると思われるのがIoTだ。動きはすでに始まっており、シンガポールは全国民向けに接触追跡用のウェアラブル・デバイスを開発中であり、世界中の研究者がウェアラブル(FitbitやApple Watchなど)にCovid-19の症状を発症前に検知するような改造を加えられないか検討している。

準備はいいか

Covid-19のパンデミックは、我々の生活や交流のし方に対して持続的な影響を及ぼす可能性がある。この「ニュー・ノーマル」においては、恩恵を受ける企業もあれば急速に重要性を失う企業もある。デジタル革命の加速に伴って、eコマース、ソーシャルメディア、検索エンジンおよびIoT企業が「ニュー・ノーマル」による成長の最前線に躍り出るだろう。世界のインターネット企業は未来に向けて飛躍的前進を遂げようとしており、投資家はそれに備えるべき時が来ていると当社では考える。

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