本稿は2021年1月8日発行の英語レポート「2021 Global Equity Outlook」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。

年の変わり目とは、マーケット解説者たちがしまい込んでいた水晶玉を取り出し、来る年の予言をする季節である。しかし、2020年を正しく予測できた者はいなかったであろう。2020年を発端とした出来事が世界に影響を及ぼし続けることは避けられず、2021年の予測の誤差をさらに高くしている。数え切れないほどの「来(きた)る年」の展望レポートは、2021年が2020年とは正反対になると予測している。いろいろな意味で、このような予測が当たることを願うばかりである。既承認、未承認を問わず、多くの新型コロナウイルス感染症ワクチンが、これまでに実施された臨床試験の結果と同様に、新型コロナウイルスの変異種に対しても効果を発揮することを願わずにはいられない。

確かに、2021年を楽観視できる理由は存在する。1年間の強制的な自制の後、世界の人々が当たり前だと考えていた多くのことを、再び楽しいと思う日が訪れることが近いと我々は希望を持っている。私たちの多くにとって、海外旅行が解禁になる日は遠くないだろう。投資においては、ロックダウン中に製造能力がゼロになったことにより減少した在庫を再び積み上げることになるため、企業が楽観的になる可能性が十分にある。

しかしながら、再び手にした自由を満喫した後、状況は2019年と比較して大きく変化しているだろうか。米連邦準備制度理事会(FRB)や他の中央銀行は以前同様に本来の役割を果たしているが(下のチャートを参照)、一時的な経済成長はインフレ基調を持続させるほどの力があるのか(市場の「バリュー」的要素を持続的にサポートする)、また、欧米諸国の人口動態と過大な債務負担という不動の実態を考慮した場合、2022年以降も2019年と同じであることを意味するのだろうか。もしそうであれば、経済成長は依然として弱いと言わざるを得ず、投資家は持続的なイノベーションから生まれる力強い売上と利益の成長を達成することが可能な企業を選好するだろう。

我々は引き続き非常に多くの時間を企業リサーチに費やしている。マーケットの予想については我々より適した市場関係者が数多く存在するだろうが、我々は、未来の世界の形は新型コロナウイルス感染症直前と類似したものになる可能性が高いと考える。例えば、各国の中央銀行は近年ますます政治に同調するようになってきている。同時に、多くの国は、政府が課したロックダウン政策が経済に与えている悪影響をすぐに表面化させないために採用した巨額の賃金支援により、これまでにない水準の債務を抱えることとなった。このような状況においては、金利が市場に影響を与えるほど上昇する可能性は当面低いと考えられ、このことは特に銀行株にとって非常に強い向かい風である。

我々のポートフォリオは、景気敏感株とグロース株の両方で「フューチャークオリティ」の特性を有する企業を引き続き特定することができているため、景気敏感株とグロース株の両方を保有し続けている。ここ数ヶ月の間、株価上昇に伴いバリュエーションが割高となったグロース株を一部売却し、景気敏感株を買い増した。当社を含むほとんどの市場関係者は、今後数ヶ月間は引き続きグロース株のプレミアムが縮小すると見ている。相対的なバリュエーションの変化が過度である、又は速すぎると判断した場合、我々は機敏に対応する方針である。この結果、グロース株を再び買い増すことになる可能性は低くないが、対象企業の業況が継続的に改善しており、購入する銘柄が将来的なリターンにつながることに当戦略が確信をもてる場合に限る。多くの場合、このような業況の改善は、社会が抱える、すぐに対応しなければならない長期的な問題の解決に役立つ製品やサービスが寄与することが多い。手の届く価格でのヘルスケアの提供や気候変動対策への貢献は、バリュー株がグロース株より優れているか、またはグロース株がバリュー株より優れているかの問題ではなく、行動を取り続ける必要性がある。

結論として、世界中の科学者がパンデミックによる損失とストレスからの解放策を人類に提供しようとしていることは、私たちに大きな安堵感を与えている。世界の多くの人々にとって、2020年が非常に困難な年であったことは明白であり、2021年は状況が改善されることを願ってやまない。投資の観点からは、絶望的な状況から希望がもてる状況への変化は、市場を再評価することにつながる。このようなときは、方向性を失い、マクロ経済の将来を予測するためにすべての時間を費やしがちになり、新しい投資アイデアをその予測に全面的に依存する傾向がある。これは、望遠鏡を反対側からのぞき込むことと同じであると我々は考える。我々はこれとは反対に、顧客に貢献するために、フューチャークオリティの特性を有する企業の発掘にすべての時間を費やし続けていく。

当資料は、日興アセットマネジメント(弊社)が市況環境などについてお伝えすること等を目的として作成した資料(英語)をベースに作成した日本語版であり、特定商品の勧誘資料ではなく、推奨等を意図するものでもありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社のファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。資料中において個別銘柄に言及する場合もありますが、これは当該銘柄の組入れを約束するものでも売買を推奨するものでもありません。当資料の情報は信頼できると判断した情報に基づき作成されていますが、情報の正確性・完全性について弊社が保証するものではありません。当資料に掲載されている数値、図表等は、特に断りのない限り当資料作成日現在のものです。また、当資料に示す意見は、特に断りのない限り当資料作成日現在の見解を示すものです。当資料中のグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。当資料中のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。なお、資料中の見解には、弊社のものではなく、著者の個人的なものも含まれていることがあり、予告なしに変更することもあります。