2024年も過ぎようとしているなか、資産市場のパフォーマンスを中期的に予測することがいかに難しいかを改めて思い知らされている。2024年を迎えたとき、多くの識者は依然として債券市場にとって追い風となる米国の景気後退が訪れると考えていた。
当月は大半の資産クラスにとってマイナス・リターンの月となり、債券と株式はともに下落した。グローバル株式市場はMSCI Worldインデックスで2%強、米国株式はS&P500指数で0.99%の下落となったが、企業決算への反応は好悪混合で、例えば「マグニフィセント・セブン」(Apple、Microsoft、Alphabet、Amazon、Nvidia、Meta Platforms、Tesla)のなかでは、AlphabetとAmazonが上昇する一方、Microsoftは決算が上振れしながらもフォワード・ガイダンスがネガティブに受け止められたため下落した。
9月の株式市場は、前月と同じく軟調なスタートとなった後に上昇に転じて、世界の先進国株式市場の月間リターンは1.69%となった。8月に発表された米国の非農業部門雇用者数が低調な結果となるなか、月初は同指標の発表を控えて投資家のあいだで労働市場の状態に対する懸念が広がり、世界の株式市場は下落した。
8月は序盤に市場のボラティリティが急激に高まったものの、最終的にグロース資産は概ね上昇し、世界の先進国株式市場の月間リターンは2.51%となった。月初には日本株式市場を筆頭として世界の株式市場が大幅に下落した。TOPIXは1日で12%下落し、日次の下げ幅としては1980年代以降で最大となった。
株式市場は7月も続伸した。しかし、当月は好調なスタートを切ったものの、ボラティリティが高まる兆しも見られ始めるなか月末にはそれまでの上昇分がほぼ帳消しとなった。企業業績見通しは良好に推移し、米国内では大半の企業の業績が市場予想を上回った。
株式市場は上昇し、米国市場は大手テクノロジー企業の業績上振れと好調な見通しを受けて史上最高値を更新した。経済指標が軟化を見せインフレが下振れするなか、米FRB(連邦準備制度理事会)が早ければ9月にも利下げを行う可能性が高まったことも、市場センチメントを下支えした。米国の雇用統計も、失業率が2021年11月ぶりの水準に戻るなど、好材料となった。今では市場はFRBによる利下げを年内2回と予想しており、相場が難なく上昇できる環境が整っているようだ。リスク資産の方向性を左右するのは来たる決算シーズンとみられるが、11月に米国の選挙が控えていることから、今後数ヵ月は市場のボラティリティが高まると予想される。しかし、FRBは「ノーランディング」(景気が減速も後退もしない状態)シナリオを首尾よくやり遂げた模様であり、市場ではこれが歓迎されリスク資産の追い風となるだろう。
中央銀行がインフレを抑制しながら世界的な景気減速を回避できる可能性が引き続き高まっているなか、市場は2024年に入って以降力強い上昇を続けている。米国ではインフレが市場予想を上回る水準にとどまっているが、個人消費と雇用に若干の軟化が見られるようになってきた。これを受けて金融引き締め環境の終焉が視野に入ってきており、米FRB(連邦準備制度理事会)は現在年内に1回の利下げを予想している。
インフレの上振れにより米国で金利が近い将来引き下げられる可能性に疑問が投げかけられたため、市場ではボラティリティが再び高まっているようだ。米国が大幅な財政赤字を抱えながら好景気を維持しているなか、今や米FRB(連邦準備制度理事会)は市場が従来予想してきたほどの利下げを行えないものとみられる。こうなると、長期の米国債は多くのストラテジストが考えているほど魅力的ではない。
インフレの先行き不透明感はますます強まっており、米国債をはじめ先進国ソブリン債全般にとって不利な状況となっている。米国は非常に大きな財政赤字を抱えており、米FRB(連邦準備制度理事会)は、インフレ圧力が継続的な低下から上昇に転じる可能性が十分にあることから、今や利下げ時期の決定にあたって難しい立場に立たされている。
世界では製造業PMI(購買担当者景気指数)の好転が続き、韓国等の国々で輸出が回復するなど、製造業(在庫)のサイクルに弾みがつきつつあることが示唆されている。在庫補充の必要性は常であるものの、金融環境の緩和とリスク許容度の全般的な回復が発注の早期化を促進しており、これがサプライチェーンの再活性化に伴って自己増強される傾向にある。
歴史上最も積極的な金融引き締めサイクルの1つとなった今サイクルの先行きシナリオとして、一見不可能なように思われたソフトランディング(リセッションを回避した緩やかな景気減速)は、可能であるばかりか実現の可能性が高まっている。米国の経済指標は、まずまず好調な労働市場や金融環境の緩和、そして足元では世界的な製造業サイクルの好転を追い風に、(またしても)好調さを増している。世界の需要は総じて堅調であり、上向く可能性のある経路も増えつつある。
金融環境は2023年10月後半以降、大幅に緩和している。過去2年間において米FRB(連邦準備制度理事会)は早計な金融緩和へと傾く市場の期待を何度も押し返してきたが、12月のFOMC(連邦公開市場委員会)会合ではそうせず、インフレが目標に向かって順調に減速傾向を辿っているとの市場の見方と実質的に同じ見解を示した。
「高金利の長期化」シナリオを織り込む市場の調整は、株式と債券の下方相関性が強かった10月をピークに、流れが一巡した感がある。潜在成長率を上回る成長を続けている米国経済が企業収益を堅調に下支えしていることから、当社では「高金利の長期化」は株式にとって必ずしもマイナス材料ではないとの見方を維持している。
過去1年を振り返ってみると、投資の世界では2023年に関する予測の多くが外れることとなった。2023年の初めには、中国は政府の景気刺激策と経済活動の再開に支えられ、景気回復を迎えるように見受けられたが、そうとはならず、経済成長は期待外れに終始した。
「高金利の長期化」シナリオを織り込む市場の調整は、株式と債券の下方相関性が強かった10月をピークに、流れが一巡した感がある。潜在成長率を上回る成長を続けている米国経済が企業収益を堅調に下支えしていることから、当社では「高金利の長期化」は株式にとって必ずしもマイナス材料ではないとの見方を維持している。
景気減速が「そろそろ」やってくるとの一般的な見方に反して、米国経済は堅調な足取りを維持しており、債券利回りは景気の強さに応じて長期金利の再調整が必要という金融の現実を織り込み続けている。この調整は積極的かつ早急に進み、10月初旬にかけては節操のない展開になりつつあった。
米国債10年物利回りが2022年10月の最高水準である4.24%を超えて上昇するなど、市場は「高金利の長期化」を織り込みにいっており、グローバル株式を取り巻いていた熱いセンチメントは中立領域へと後退しつつある。
経済の車輪は前進を続けているが、これは、米FRB(連邦準備制度理事会)の翌日物金利誘導目標が2001年以来の高水準となる5.5%まで引き上げられていることを考えると、多くの人にとって予想外の状況と言えるだろう。
市場のポジショニングがよりポジティブな見通しへとシフトした一方で、マクロ経済の雰囲気は変わっていない。むしろ、株式市場への上昇圧力が根強く続いたことにより、投資家がベンチマークや同業者に大きく遅れを取らないよう株式エクスポージャーの再構築を余儀なくされた格好だ。
株価に反映された成長見通し格差は拡大し続けている。その背景として、テクノロジーやAI(人工知能)の発達という形での長期的な経済成長が市場全体の方向性を決定付ける材料として優勢な模様である。これは、テクノロジー・セクターが(そして理由は異なるが日本市場も)上昇する一方、他の大半のセクター・地域市場が月間で下落したことからも明らかだ。
2022年初頭以降、インフレ・金利ショックから戦争・コモディティ・ショック、英国の年金危機、そして今回の米国の地方銀行危機に至るまで、市場を動かす重大な出来事が立て続けに発生してきた。こういった歴史的な出来事は、予想通り、市場センチメントと株価バリュエーションの重石となった。
3月半ばに米国で地方銀行が破綻して以来、続いてすぐにCredit Suisseが混乱に陥り結果的にUBSとの合併を余儀なくされるなど、市場の状況はかなり大きく変化してきた。政府が迅速かつ大規模な対応を見せる一方、中央銀行はある程度通常運行で金融引き締めに戻るメッセージを発しようとしたが、市場はそれを信じてはいないようだ。
新型コロナウイルスの世界的感染拡大が始まって以来、投資家は資産価格のボラティリティの高まりに直面してきた。状況を混迷させ続けている一因は、コロナ関連の歪みによる経済指標の変動である。さらにここ数ヵ月は、特に米国で、季節外れの天候パターンの影響により経済の先行きを読むのがより困難になっている。
景気見通しは改善しつつある模様で、2023年は前半に景気が鈍化して後半に回復するとの確信が市場で強かった2022年終盤に比べると、大きな変化である。米FRB(連邦準備制度理事会)が積極的な引き締めを行ってきたのは確かだが、資金流動性と民間部門のバランスシートの強さという点からすると、システムには景気刺激策の余波がまだ結構残っていると言えるだろう。
2022年はインフレが上振れした年であったが、2023年は先進国の多くにとってリセッション(景気後退)の年になるだろうとの強力なコンセンサスが形成されつつある模様だ。投資家は強い確信を抱いているようだが、これは経済指標がコロナ禍の混乱した影響を依然受けており予測困難であることとは相容れないように思われる。おそらく、過去のリセッションを先取りしたのと同じ先行指標が同様の警告を示すだろうが、今回の「コロナ禍の10年」ではそのような予測に伴う不確実性がより大きくなると考えられる。