機関投資家の間で注目されている「ESG投資」。この投資をどのように考えるべきなのか、少しずつまとまりつつある中、個人投資家のみなさまにも、この投資機会について考えて欲しいと思います。
ESG投資とは
投資家が、企業の持続的な成長をE(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)の視点から精査して銘柄を選び、投資開始後も投資先と対話を続けていくことをESG投資と呼びます。環境と社会について各課題に適切に対応して経営しているか、ガバナンスではその課題を解決する事業を推進する上で戦略を立てる基盤となる経営の枠組みがあるのか、といった点に注目します。
引退後の「潤いのあるくらし」を送るために投資をする長期投資家は、世界が求めている環境問題や社会問題の解決策を提案できる企業に投資したいと思うのではないでしょうか。そのためには、企業が長期的な視点でESGにおける説明責任を果たしていることを見極める力が必要になるのです。
ファンドマネジャー(運用者)は、企業の業績や短期的な株価動向だけでなく、企業の目指す姿が事業環境の変化に対応できているか、事業機会とリスクを適切に認識し対応しているか、それを実行する土台となる取締役会の構成や報酬、実効性への評価、などに注目して投資します。
普通の株式投資と何が違うの?
例えば、台風や水害などの自然災害が増えてきた日本では、被災により直接影響を受ける工場を持つ製造業に加え、損害保険会社や融資をしている金融機関なども、気候変動を事業環境の変化として考えざるを得なくなっています。さらに、人手不足の問題解決と女性・高齢者の活躍を求める社会のつながりも、経営の視野に入るでしょう。このような企業なら、長期成長が期待できそうですね。
このように、環境や社会に対して機動的かつ規律を持った経営が求められる時代には、株式投資において、プロの投資家が投資先の選定や投資期間中にも、ESGの視点から丁寧に企業をモニターし、かつ社会を代表して対話をしていくことが求められるのです。その分リターンが低いと前もって想定していることは(特にそう謳っていない限り)ないはずです。
特別に探して投資しないといけないの?
すでに運用されている株式投信などの中にも、将来において企業の財務にインパクトがあるESG分野に焦点を絞って企業を分析し、投資する手法を導入するようになってきました。このような変化は、新しい投信だけではなく、既存投信の運用報告書の中でも、見つけることができます。
ファンドマネジャーは、企業の統合報告書やホームページにあるサステイナビリティの情報などを競合他社と比較し、特に長期的な売り上げや費用、資産、負債にどう影響するかを読み取ろうとします。ESG投資を謳う商品を選ぶ場合、単に寄付など世の中に良いことをする会社の集まりではなく、長期的に世界の課題解決を担おうと工夫して経営する企業に投資する機会がある、という視点で見ていくと良いでしょう。

- イラストはイメージです。