2020年を振り返ると、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を背景に、世界の株式市場は、春先にかけて急落したものの、年後半は総じて上昇する展開となりました。そして、2020年の世界の株式時価総額が18%増加する中、その増加分の約3割を中国が占める結果となりました(S&P発表の株価指数(米ドルベース)に基づく)。
昨年、早い段階で新型コロナウイルスの抑え込みに成功し、世界に先駆けて経済活動の正常化に向けて動き出した中国では、景気回復期待などから夏場にかけて株式市場が上昇基調となりました。これに加え、IPO(株式の新規公開)が相次いだことが時価総額を押し上げる背景になったと考えられます。会計・コンサルティング大手のKPMGの調査資料によると、上海証券取引所における2020年のIPOによる調達額は、2019年に創設された新興ハイテク企業向け市場「科創板」での好調がけん引し、米国ナスダック、香港証券取引所に続いて高い水準となりました。アリババ傘下の金融会社であり、史上最大級の調達額になるとして注目を集めていた「アント・グループ」の上場は延期となったものの、米国上場からくら替えした(2019年に米国での上場を廃止)半導体受託生産大手の「SMIC(中芯国際集成電路製造)」が世界でトップの調達額となり、上海証券取引所全体の調達額を押し上げました。
そもそも、上海証券取引所に「科創板」が創設された背景には、米中対立がハイテク分野に及びその長期化が見込まれる中、新たな資金調達のプラットフォームを中国国内に立ち上げ、同国のハイテク分野のスタートアップ企業を支援することにあったと言われています。そのため、「科創板」では、IPOの審査基準が緩和されたほか、当局から認可を受ける方式ではなく、上場の是非などが市場の判断に委ねられる、米国方式の「登録制」が導入されました。これに伴ない、審査期間の短縮などを通じて、スタートアップ企業がより資金を調達しやすい場となりました。また、「科創板」での成功を受け、深セン証券取引所の新興企業向け市場「創業板(チャイネクスト)」におけるIPOについても昨年「登録制」が導入され、8月には第1弾となる企業群が上場しました。こうしたことを追い風に、深セン証券取引所においても「創業板」が中心となりIPOによる調達額が増加していくことが見込まれます。
資本市場改革が進められている中国では、昨年から習近平国家主席が唱えている「双循環*」という考え方のもと、第14次5ヵ年計画(2021年~2025年)の開始とともに、対外開放が一段と推進されていくとみられます。こうしたこともあり、今後も中国におけるIPOの好調は続くと見込まれ、本土市場の発展・成長の推進力となることが期待されます。
内需と外需の双方を好循環させて質の高い成長につなげるといった概念。

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