金の国際調査機関、ワールド ゴールド カウンシルは1月14日、今年の金価格について、昨年の+24.6%(:ロンドン地金市場協会(LBMA)発表の価格ベース)に比べると緩やかとなるものの、上昇が続くとの見通しを示しました。その背景として、世界的な低金利環境の継続に加え、世界の経済状況の改善に伴なう宝飾品需要の回復を挙げています。

金の価格は、19年末に1トロイオンス=1,500米ドル台だったものの、昨年には、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、資金の逃避先として、金ETF(上場投資信託)などに投資マネーが押し寄せたことなどから、8月上旬に2,000米ドル台の史上最高値をつけました。しかし、行動制限などの感染防止対策や強力な財政・金融政策が世界的に採られ、最悪期は過ぎたとの見方が拡がると、金価格は1,900米ドルを下回る水準に後退して年末を迎えました。

金の需要を19年のデータで大別し、そのシェアを見ると、約48%を占める宝飾品が最大で、金ETFや地金・金貨などの投資:約29%、中央銀行・その他機関:約15%、工業品などのテクノロジー:約7%となります。昨年前半は、コロナ禍による景気悪化を受け、宝飾品需要が低下した一方、投資需要が拡大したことなどから、金価格は上昇しましたが、年後半には、投資需要の鈍化などから、価格の上昇も一服となりました。今年は、新型コロナウイルスのワクチン接種が普及するに連れ、経済活動の再開が進むほか、コロナ禍で繰り延べられてきた様々な需要が顕在化することなどもあり、景気回復の進展に伴ない、宝飾品需要も回復すると見込まれます。そして、宝飾品需要を中心として、金の最大消費国である中国が、景気回復で先行している点が特に注目されています。

なお、ワクチン接種の普及が難航するなどの問題が生じた場合には、「景気回復→宝飾品の需要回復→金価格上昇」との見通しの実現性は不透明となるものの、投資需要が再度、高まり、金価格を押し上げる可能性が浮上します。また、米国では、超緩和的な金融政策は長く続く見通しながら、巨額の財政支出によって財政赤字が膨らむ中、長期金利が上昇の兆しを見せています。今後、米長期金利が大きく上昇するようなことがあれば、バリュエーションの高さを指摘されることもある米国株式などを中心に、リスク資産が調整することも想定され、そのような場合にも、投資需要の高まりを背景に金価格が上昇することが考えられます。

【図表】[左図]金価格の推移、[右図]金の主要需要量の推移
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。