IMF(国際通貨基金)が1月26日に発表した最新の経済見通しによると、2020年の世界のGDP成長率は前年比▲3.5%と、大恐慌以降で最悪ながら、年後半の経済活動の再開に伴ない消費が持ち直したことなどから、前回予測を0.9ポイント上回ったとみられています。続く21年の成長率についても、前回予測を0.3ポイント上回る+5.5%と見込まれています。この上方修正には、米・日での昨年末の追加経済対策や、ワクチンの普及といった好材料だけでなく、感染再拡大に伴ない、欧州などを中心に足元で短期的に景気が鈍化していることも考慮されています。

IMFは今回の見通しで、国によって景気回復の度合いに大きなばらつきが出ると指摘しています。例えば、中国が20年10-12月期に19年末の経済活動水準までいち早く回復したのに続き、米国と日本も21年後半には回復する見込みながら、欧州は22年でも下回る見通しです。それでも、より積極的な財政政策とより早いワクチン普及により、先進国は新興国よりも総じて素早い景気回復が見込まれています。また、新興国の中でも、原油輸出や観光に依存している国の場合、市況回復や国際観光の正常化に時間を要することなどが重荷になるとされています。

今回の見通しでは、ワクチンが21年夏までに先進国と一部の新興国で広く普及し、22年後半までには大半の国で利用可能になるとの前提が置かれているほか、変異種の感染拡大防止などに向けたロックダウン(都市封鎖)の影響も考慮されています。また、主要中央銀行が少なくとも22年末まで現行の政策金利を維持すると想定されており、金融環境は先進国で概して現行水準で維持され、新興国にもプラスに働くと期待されています。なお、バイデン米新政権の1.9兆米ドル規模の経済対策案は今回の予測には考慮されておらず、実現すれば、向こう3年で5%の生産押し上げ効果が期待できるとされ、21年の同国のGDPを1.25%押し上げるとの試算が示されました。

【図表】[左図]IMFの世界経済見通し、[右図]GDP予測の推移
  • 上記は過去のものおよび予測であり、将来の運用成果等を約束するものではありません。