変異種の登場もあり、新型コロナウイルスの感染が足元で再拡大しています。しかし、世界的な財政・金融政策という支えに加え、欧米を中心にワクチン接種が拡がりつつあること、さらに、米新政権の発足などに伴ない、1月下旬に米国の主要株価指数が最高値を更新するなど、世界の株式相場は概ね堅調に推移しています。

財政支出や減税、資金繰り支援策など、コロナ禍対応として世界で打ち出された財政政策の規模は、IMF(国際通貨基金)の集計で14兆米ドル弱(1米ドル=103.25円で換算して約1,433兆円)に及びます(2020年末時点)。また、金融政策の面では、政策金利の引き下げにとどまらず、中央銀行による資産買入れや銀行部門への流動性供給など、資金の流れを維持するために量的緩和が行なわれています。しかも、資産買入れは、日米欧の主要中央銀行だけでなく、いくつかの新興国でも採用されました。こうした中、世界の主要中央銀行の20年末の資産規模は、同年1月末と比べて約9.1兆米ドル(同約940兆円)も膨らみました。これは、リーマン・ショックのあった世界金融危機の際、07年12月からの2年間で増加した額の3.7倍に及ぶ規模です。さらに、今年1月に発足したバイデン米政権は1.9兆米ドル(同約196兆円)規模の経済対策を提案しており、3月半ばまでの議会通過を目指しています。

IMFは、今後も政策支援を継続する必要性を訴えているほか、コロナ禍後の持続的な成長の実現に向け、財政政策面でグリーン(環境配慮)やデジタルへ注力すべきとしています。既に、カナダやEU(欧州連合)、日本がこれらに重点を置いた経済対策を発表しているほか、バイデン米政権が大規模な環境インフラ投資を掲げていることなどもあり、株式市場でもこれまでのデジタル化関連銘柄に加え、今後はグリーン関連銘柄も注目されると考えられます。なお、新興国では、ワクチン接種の普及に先進国より時間を要するとみられるほか、財政政策の大部分が期限を迎えつつあります。このため、「22年後半までには大半の国でワクチン接種が可能になる」とのIMFの世界経済見通しでの想定以上にワクチン接種の普及に時間がかかるような場合、経済活動の再開の遅れやサプライチェーンへの影響を通じ、世界の経済および企業業績の下振れにつながる恐れもあり、先行きが注目されます。

【図表】[左図]主要国・地域のコロナ禍対応の財政政策の規模、[右図]主要中央銀行の資産規模(左軸)の推移
  • (信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
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