米国では、自らは事業を営まず、未公開企業の買収などを目的とする“空箱”のようなSPAC(Special Purpose Acquisition Company:特別買収目的会社)の株式上場が2020年に急増しました。その資金調達額は前年の6倍強の約830億米ドルと、従来型のIPO(新規株式公開)の約900億米ドルに迫る規模となりました。
SPACは、調達資金を2年以内に他社の事業の買収などに使うことを原則として、株式を発行します。そして、有望な未公開企業などを見つけると、これを買収し、その買収先が存続企業、つまり、最終的な上場会社となります。高い将来性が見込まれるビジネス・モデルや商品などを擁する未公開企業は、SPACに買収されることにより、IPOに伴なう手続きや時間を省き、より簡単に上場することができます。一方、投資家は、有望な未公開企業などを発掘する目利きに期待して、SPACに資金を投じます。なお、SPACの設立主体は、著名投資家やベンチャーキャピタルなどが中心で、ソフトバンクグループ傘下の投資ファンドなども名を連ねています。
SPACの急増や堅調なIPOを背景に、創業間もないような赤字企業の上場が増えると見込まれます。赤字企業の場合、EPS(1株当たり利益)がマイナスであるため、株価水準を評価する際にPER(株価収益率)を用いることができません。そこで、利益の代わりに売上高に注目し、当該企業の株式時価総額を年間売上高で割ったPSR(株価売上高倍率)がよく用いられます。2010年にIPOを行なった、米EV(電気自動車)大手テスラを例にすると、PSRは足元では24倍強と高水準で、業績に対する評価より、将来への高い期待が株価に反映されていることが示唆されています。なお、PSRもPERと同様、あくまで相対評価の指標の1つに過ぎませんが、同業他社比較や水準の変化など、PSRを有効活用することにより、投資判断の一助になると考えられます。企業の上場が加速すれば、投資機会が拡がる反面、玉石混交の度合いも強まる可能性があり、銘柄の見極めが一層重要となります。
![【図表】[左図]米国でのSPAC上場の推移、[右図]ご参考:テスラの株価と主要指標の推移](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1678.jpg)
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