「リバース・イノベーション」という概念が足元で注目を集めています。従来、イノベーションは先進国で生まれ、時間の経過とともに新興国へ伝播するという流れが一般的と考えられていました。しかし、近年では、新興国でイノベーションが生まれ、先進国がその技術やサービスを逆輸入するという、従来とは逆の流れが起きており、これがリバース・イノベーションと呼ばれる所以です。
リバース・イノベーションの代表例として挙げられるのが、米ゼネラル・エレクトリック(GE)社が新型の超音波画像診断装置を中国で開発した事例です。同社の診断装置は、高額かつ大型で持ち運びが困難だったほか、新興国国内では電力や通信インフラが未発達だったことなどから、新興国市場では普及していませんでした。そこで同社は、中国で研究開発を行ない、小型で持ち運びがしやすく、低廉な価格の診断装置の開発に成功しました。機能的には従来製品に比べ劣るものの、地方の農村部などでも導入可能になったことから、中国国内で広く普及しました。それだけでなく、同装置の低価格で持ち運び可能という特徴が先進国でも評価され、米国などでも普及するに至りました。インフラが未発達なことや所得水準が低いことなどから、新興国には先進国とは異なるニーズが存在しており、そうした環境下だから、先進国とは異なるイノベーションが引き起こされると考えられます。
こうした新興国特有のニーズに着目したイノベーションは、新興国企業の成長につながるとみられ、新興国も研究開発に積極的に取り組んでいます。主要国の研究開発費の規模を比較すると、中国は米国に次ぐ規模になっているほか、インドやロシアなども先進国を上回る規模の支出となっています【グラフ左】。また、世界の株式時価総額上位の顔ぶれを見ると、2000年時点では先進国企業ばかりでしたが、足元ではトップ10に中国企業が2社ランクインするなど、先進国企業を凌駕する技術・サービスで成長する新興国企業も現れています【グラフ右】。
新興国の経済成長要因として、人口増加や豊富な資源などが注目されることが多い一方で、リバース・イノベーションは、新興国や新興国企業の新たな成長の柱となることが期待されます。
![【図表】[左図]主要国の研究開発費(2018年)、[右図]世界の株式時価総額 上位10銘柄](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1679.jpg)
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