患者への負担が少なく、高精度な手術が実現できることから普及し始めた手術支援ロボット。この市場で高シェアを誇るのが、米Intuitive Surgicalの「ダヴィンチサージカルシステム」(以下、ダヴィンチ)ですが、2019年に基本特許の期限を迎えたことで、新規参入が相次ぎました。
日本では2020年、川崎重工業が持つ産業用ロボットの技術・ノウハウとシスメックスの医療分野における検査・診断の技術・ノウハウを活用した、「hinotori™サージカルロボットシステム」(以下、hinotori)の製造・販売が始まり、昨年末、神戸で1例目の手術が無事終了しました。
hinotoriは、ダヴィンチ同様、内視鏡カメラや鉗子(ハサミのような形状で組織などをつかむもの)などを装着した4本のロボットアームを備えたオペレーションユニットと、執刀医がロボットアームを操作するサージョンコックピットで構成されていますが、日本の手術室の大きさに合わせて、ダヴィンチよりもコンパクトに設計されています。ロボットアームも、小柄な日本人の体形に合わせて人間の腕と同じくらい細くしてアーム同士が干渉しない工夫と、アームの自由度(可動部)を8つ(人間とダヴィンチは7つ、一般的な産業用ロボットは6つ)にすることで、よりスムーズな動きを実現させています。加えて、手術全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現させるネットワークサービスを標準装備することで、外部からでもロボットの動作確認やトラブル解決を容易にするなど、使い勝手を追求しているようです。
hinotori以外の医療ロボットでは、AI(人工知能)を活用して医療画像を基に臓器を自動抽出するシステムや、がんの発見を支援するAI搭載の消化器内視鏡などが実用化されています。さらに、ロボットで従来は再現できなかった患部に触れた時の感覚を執刀医の手元に再現する“力覚(人間が感じる力感覚)フィードバック”の実用化に向けた開発も進んでおり、手術支援ロボットとの融合が期待されます。
世界の手術支援関連ロボット市場は、米調査会社によると年平均12.1%成長が見込まれており、ロボット普及により遠隔治療や遠隔手術が日常的に行なわれる日もすぐそこまで来ているのかもしれません。
![【図表】[左図]手術支援ロボットの構成、[右図]手術支援関連ロボットの世界市場規模](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1681.jpg)
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