2月下旬以降、世界的に株式市場の変動性が高まっています。特に、これまで上昇基調が続いていたハイテク株などの値下がりが目立っています。
その背景として、足元で10年債で一時1.6%を超えた、米長期金利の上昇が挙げられます。昨年、世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大し、人の移動を含む経済活動の抑制が求められたことに伴ない、景気に先行き不透明が強まったものの、各国・地域の大規模な金融緩和や財政出動などに支えられ、世界の株式市場は堅調に推移しました。
しかし、米国で新型コロナウイルスの感染ペースの鈍化やワクチン接種の進展、追加経済対策などにより、経済の回復期待が高まると、インフレ懸念も強まり、金融緩和の縮小が従来の想定より早まるとの観測から、米国債が売られました(債券利回りは上昇)。
今後、実体経済の回復とともに、金利へ上昇圧力がさらに加わり、短期的には、株式市場の変動性の高い状況が続く可能性があります。しかし、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は「インフレ率は、前年の物価が低かった影響などから目先、高まるが、一時的の公算大」との見解を示しているほか、イエレン米財務長官も「米長期国債利回りの上昇はインフレ懸念の高まりではなく、市場参加者がより強い回復を期待している兆しだ」と述べるなど、FRBが長期的な平均インフレ率として掲げる2%のインフレ目標を上回って物価上昇が続く状況になるとは想定されておらず、しばらく低金利政策は続くとみられます。また、バイデン政権の1.9兆米ドルの大規模な追加景気対策が間もなく実現すれば、物価の押上げにも作用するものの、消費拡大などを通じて米国経済の更なる改善につながるとみられます。
こうしたことなどから、中長期的には、米国経済の回復とともに、コロナ禍のもとで悪影響を大きく受けていた企業の業績も改善し、市場の物色対象がハイテク株以外にも広がることで、株式市場も持ち直して行くと期待されます。
![【図表】[左図]日・米株価指数と米長期金利の推移、[右図]米・消費者物価指数の推移](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1684.jpg)
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