私たちの健康を維持・回復・増進するために欠かせない医療。近年、AI(人工知能)などロボティクスの活用で、医療の発展・進化が加速し、高齢者・患者のケア向上や関連コストの削減など、さまざまな効果をもたらしています。

例えば、多くの臨床現場では、患者のカルテや医療画像、保険請求などの大量の情報が、異なる形式で記録され、さまざまなシステムで共有されているため、使い勝手に課題を抱えています。この大量の情報を構造化し、業務効率化を支援するサービスの一つが、米Amazon Web Serviceの「Amazon HealthLake」(以下、AHL)です。

AHLは、AIや機械学習モデルを用いた患者情報の自動標準化に加え、利用価値がある医療情報の自動抽出も可能にしています。医療機関は、AHLの活用により患者情報の分析時間を数週間から数分に短縮することができるため、疾病の早期発見や大規模な健康調査などが容易になり、臨床の質の向上につなげることが可能です。なお、米マイクロソフトも、クラウドサービスを活用した類似のサービスを提供しています。

このほか、ロボティクス技術の早期浸透を後押しする取り組みとして、医師向けに医学関連情報、製薬会社向けに治験支援サービスなどを提供する日本のエムスリーと画像処理半導体を手掛ける米NVIDIAが共同で、臨床現場に短期間で画期的な製品やサービスが投入できるよう“医療×AI分野のプロジェクト”を支援しています。

また、新型コロナウイルスの患者治療で人員不足が深刻化する医療現場においても、ロボティクスの技術が活用されています。ハード面では、離れた病棟にいる患者を診断する遠隔操作型ロボットや病棟内の空気中のウイルスなどを殺菌する紫外線消毒ロボット、遠隔地の病院に医薬品を配達するドローンなどがあります。AIや機械学習などを活用したソフト面では、ウイルス拡散経路の予測や胸部CT画像から新型コロナウイルスを識別するシステム、ワクチン接種の適格性や副作用などの問い合わせに対応するAIアシスタントなどがあります。

世界のヘルスケア関連のIT市場は、米調査会社によると年平均15.6%成長が見込まれており、ロボティクスの技術が医療現場に組み込まれることにより、私たちにより安全で快適な医療が提供されていくことでしょう。

【図表】[左図]新型コロナウイルス対応で導入・開発された医療ロボティクスの事例、[右図]世界のヘルスケアIT市場規模
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