トルコでは3月18日、中央銀行が金融政策委員会で追加利上げを決定し、主要政策金利である1週間物レポ金利を従来の17%から19%へ引き上げました。昨年12月以来3会合ぶりの利上げということに加え、利上げ幅が市場予想の倍となったこともあり、決定を受けて通貨リラが買われました。ところが、エルドアン大統領は20日、過去2年弱で3度目となる、中央銀行総裁の更迭に踏み切りました。
今回、更迭されたアーバル氏は、前任者が大統領に更迭されたことを受け、昨年11月に中央銀行総裁に就きました。当時、エルドアン大統領は「必要なら苦い薬も飲む」として、インフレ抑制に向けたあらゆる措置を支持する意向を示した一方、仲間内の会合では高金利がインフレの原因だとの持論を繰り返していました。それでも、アーバル氏が就任後2ヵ月連続で利上げを決定すると、リラの対米ドル相場は、昨年11月の史上最安値から今年2月半ばまでに2割弱上昇しました。その後は、米長期金利の上昇などに伴ない、米ドルが反発した影響もあり、リラは軟調気味となっていました。そうした状況下で決定された今回の追加利上げで、アーバル氏就任以降の利上げ幅は8.75%ポイントに達しました。しかも、中央銀行は、更なる利上げの可能性に言及するなど、物価安定に向けて今後も毅然とした姿勢を貫く決意を示しました。こうしたことを受け、中央銀行に対する市場の信頼が一段と回復し、それに連れてリラが持ち直しに向かうと期待されていた矢先だけに、総裁が再度、更迭されたことにより、市場での失望が大きくなる可能性があります。
なお、中央銀行の新総裁には、エルドアン大統領率いる与党・AKP(公正発展党)の元議員、カブジュオール氏が就任しました。同氏については、利上げに反対するコラムを今年2月に地元紙に寄稿したと報じられており、金融緩和を志向する大統領に近い見解を持っているとみられます。
トルコでは、リラ安に加え、原油価格の回復などもあり、物価が上昇基調にあります。直近2月の消費者物価指数は前年同月比+15.61%と、物価目標を大きく上回る高水準となりました。こうした状況下、中央銀行は今回の利上げについて、物価のさらなる上昇とリラの下落に先手を打つために「前倒し」的に対応したと説明しています。その一方、原油価格の回復に足元で一服感がみられることもあり、リラが持ち直せば、物価上昇の加速にもそろそろ歯止めがかかることになり、今回の引き締め局面での更なる利上げは回避できるとの見方も台頭していました。しかし、総裁更迭により、リラが再び大きな売り圧力にさらされることになれば、物価押し上げ要因となってしまいます。ましてや、新総裁の下で中央銀行が利下げを急ぐようなことを示唆すれば、市場の信頼を一段と損ね、リラ安とインフレの再加速を招きかねないだけに、今後の中央銀行の動きには注意が必要です。
![【図表】[左図]トルコ・リラの推移、[右図]トルコの物価および主要政策金利の推移](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1689.jpg)
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