昨年2月下旬のコロナ・ショックの影響を受け、大きく値下がりしたJ-REIT(不動産投信)は、秋から大きな反発を見せ、足元では東証REIT指数で2,000ポイントをうかがう水準まで戻しました。
コロナ禍で経済活動が制限されるなか、J-REIT各社は、テナントの経営に配慮し、賃料の減免や見直しを迫られるケースが多く見られました。
足元のJ-REITの決算からは、テレワークの普及などもありオフィスの空室率が以前より高まっていることがうかがえます。ただ、J-REITの保有するオフィスは概して優良物件が多く、テナント退去後も早い時期に次のテナントが決まるなど、大きな痛手とはなっていません。一方で商業施設の回復は道半ばであり、ホテルに至ってはまだ回復の兆しが見えないケースもあるようです。
半面、eコマースの増加などにより物流施設の稼働率は概して高く、賃貸住宅なども底堅い推移を見せるなど、J-REITにはコロナ禍でも堅調なセクターもあり、REITの業績は各社各様となっています。
【長期投資の観点でみたJ-REIT】
2001年9月に時価総額2,600億円程度から始まったJ-REIT市場は、20年近い時を経て時価総額15兆円台(2021年2月末)の市場に成長しました。この間、J-REITの分配金額(グラフ参照)は、リーマン・ショックなどの影響を受け、一時的に減少することもありましたが、J-REITが増資などを行なうことで保有資産の拡大を進め、運営の効率化や賃貸料の引き上げ(賃料収入の向上)を目指した結果、現在ではJ-REIT誕生時を30%上回る水準にまで増加しています。
そもそもREITは、安定した賃料収入の獲得を目指す金融商品として開発されており、その利回りは相対的に高い状態を保ってきました。
実際に2003年3月に投資した場合、どの程度の分配金が得られたかについて、東証REIT指数とその分配金利回りから算出すると、各月の分配金相当額の累積は、足元で2003年3月時点の投資額を既に上回っており、高い利回りが期待される商品を長期間保有する場合の効果がうかがえます。また、同期間におけるJ-REIT価格も2倍近くまで上昇しており、分配金と合わせた約20年間の総合損益は投資額の約3倍になりました。
ともすればJ-REITは、不動産市況やREITを取り巻く需給問題と合わせて語られることが多いですが、分配金利回りの相対的な高さと、分配金額自体の安定的な成長が、長期投資にもたらす効果にも注目したいです。

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