新型コロナウイルス(以下、新型ウイルス)の感染が拡大する中でも、堅調に推移していた日本株式ですが、足元では上値の重い状況が続いています。
昨年3月上旬のコロナ・ショックで、日本株式は大きく値下がりしたものの、3月下旬以降は上昇に転じました。2021年に入ってからも上昇基調は変わらず、2月には、日経平均株価は1990年8月以来約30年ぶりに、3万円台を突破しました。
こうした上昇の背景には、主要国・地域の政府・中央銀行による大規模な財政・金融政策に加え、昨年末以降、新型ウイルス向けワクチンの接種が世界各地で開始されたことによる景気回復期待の高まりなどがあります。また、コロナ禍に伴なう「巣ごもり」消費や幅広い分野におけるデジタル化の進展などを受け、製造業やIT企業など幅広い業種で、2021年3月期業績予想の上方修正が相次いだことなども好感されました。
ところが、足元では、日経平均株価は2万9,000円から3万円近辺を行き来する状況が続いています。株価が歴史的な高値水準にあることへの警戒感や新型ウイルスの変異株の感染拡大、金融緩和の長期化をにらんでの日銀の政策修正に加え、米国での長期金利の上昇と金融緩和縮小への懸念などが重石になっているとみられます。
米国では、大型の追加経済政策成立やワクチン接種の進展などを受け、景気回復への期待が高まっており、それに伴ない、2021年初以降、長期金利が上昇傾向にあります。通常、景気回復に伴なう金利上昇は「良い金利上昇」とされますが、今回の金利上昇は、世界的な株価上昇の一因となってきた大規模な金融緩和の早期縮小につながりかねないとして、警戒感が広がっています。2月下旬には、米10年国債利回りが約1年ぶりの水準に急上昇したことに伴ない、それまで堅調だったハイテク株の割高感が意識されて、米国株式市場は大幅に下落しました。これを受けて、日本でも日経平均株価が1日で4%近く下落するなど、株式市場に動揺が走ったほか、長期金利が上昇しました。
なお、パウエル米FRB(連邦準備制度理事会)議長は、2021年の景気見通しを引き上げた3月のFOMC(連邦公開市場委員会)で、量的緩和の縮小開始を議論するのは時期尚早との認識から、引き続き、金融緩和を長期にわたって維持する方針を示しました。しかし、米長期金利の上昇には歯止めがかかっていません。
ただし、こうした金利の動きは、米国経済の回復期待の高まりを反映しているとも言えます。実際、2021年の業績見通しを上方修正する動きが拡がっており、今月半ばから始まる米国企業の1-3月期決算発表に注目が集まっています。今後、米国をけん引役に世界経済の先行きに明るさが増すようであれば、企業業績の改善期待などを通じて、日本株式市場においても、上昇基調を取り戻すと期待されます。

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