中国の2020年の自動車販売台数は、前年比▲1.9%と3年連続で減少したものの、EV(電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池自動車)などの新エネルギー車(以下、新エネ車)は、政府の購入奨励策も相まって販売台数を伸ばし、前年比+10.9%の堅調な成長をみせました。
中国では、新エネ車の普及と関連産業の育成を後押しする政策が2009年から打ち出されています。新車販売台数における新エネ車の比率は未だ5.4%(2020年)という水準ではあるものの、販売台数では世界の半数を占める最大市場に成長しています。昨年11月に発表された「新エネルギー車産業発展計画」では、2025年までに新車販売台数に占める新エネ車の比率を20%程度に引き上げる目標が示され、市場は更なる拡大を遂げる見通しです。こうした状況を受け、近年中国では異業種からの新規参入が相次いでいます。中でもネット検索大手で世界最大の自動運転オープンプラットフォームを擁する「百度」や、スマートフォン大手の「小米(シャオミ)」など、IT分野の雄が次々に市場参入を発表しており、注目を集めています。
ところが足元では、昨年から続く世界的な半導体不足が新エネ車市場の足かせとなっています。2020年はコロナ禍の影響で自動車販売が落ち込んだ一方、スマートフォンやパソコンなどの需要が急拡大したため、各半導体メーカーはこうした分野への供給を強化しました。加えて、製品の高度化・自動化は半導体の需要を更に高めており、EV1台あたりに使用される半導体のコストはガソリン車の約2倍とも言われています。そうしたことから、半導体の調達が追いつかず、生産調整を余儀なくされる自動車メーカーが相次ぎました。
こうした状況は年半ばにかけて続くと予想されていますが、一方で半導体不足と新エネ車市場の活況は、中国の半導体産業の成長を後押しするとの見方もあります。中国のEV大手「BYD」は2004年に半導体製造事業を立ち上げ、中国では9割を輸入に頼る車載用パワー半導体の自給を行なっていますが、今後は半導体事業を単独上場させて生産量拡大をめざすとみられています。他にも、複数の自動車メーカーが世界の半導体大手と合弁事業を展開するほか、国内の半導体メーカーも続々と車載用の強化に向けた取り組みを加速させています。
このように、新エネ車市場の活況は、中国自動車産業のサプライチェーンを徐々に内製化させる役割も果たすとみられ、スマートフォンや家電などと同様に、関連産業の振興が期待されています。加えて、自動車産業において先進国の後塵を拝してきた中国は、新エネ車市場でのいち早い主導権の掌握をめざしており、政策による後押しも続くと予想されます。成長を続ける中国の新エネ車市場からは、引き続き目が離せません。
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![【図表】[左図]中国の自動車販売台数の推移、[右図]新エネ車販売の国別マーケットシェア](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1696.jpg)
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