IMF(国際通貨基金)は、4月6日に発表した最新の経済見通しで、世界の今年のGDP成長率を少なくとも1980年以降で最高となる前年比+6.0%へ引き上げました。また、来年についても、+4.4%へ上方修正しました。

世界の今年の成長率が高水準となる主な背景に、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、昨年の成長率が第2次世界大戦後で最悪の▲3.3%となった反動という面もあります。ただし、今回発表された世界の今年のGDP成長率見通しは、ワクチンの普及に伴ない、景気回復の加速が見込まれることや、バイデン新政権の下、今年3月に米国で1.9兆米ドル規模の経済対策が成立したことなどを反映し、前回1月の見通しから0.5ポイント上方修正されています。なお、米国自体の今年の成長率は1.3ポイント上方修正され、1984年以来の高水準となる+6.4%とされています。その米国が、今年、+8.4%の成長を見込まれている中国と共に、世界の回復をけん引する形となっています。

IMFは、世界で累計16兆米ドル(1,760兆円、1米ドル=110円で換算)に及ぶ財政支出が決まったことなどにより、はるかに悪い結果を免れることができたとする一方、ワクチン接種の進捗や経済対策の規模、さらに、観光業への依存度などの構造的要因の影響で、国・地域によって回復にばらつきがあると指摘しています。

コロナ禍前のGDP水準への回復という点では、既に中国が昨年、達成し、今年はそれに米国が続く見通しです。日本も、四半期ベースでは今年後半に回復する見通しですが、ユーロ圏の場合、日本を上回る成長率が見込まれているものの、2022年以降までかかるとされています。さらに、新興国の場合は総じて2023年までかかる見通しです。こうした背景には、コロナ禍の影響は2008年の世界金融危機の影響ほど大きくならない見通しながら、今回は、先進国と比べ、新興国により大きな打撃が長く続くとみられているほか、新興国では財政余地が限られていることなどがあります。

なお、IMFは、予測には引き続き高い不確実性が伴なうとして、ワクチン接種の普及スピードや、ワクチンが効かない新たな変異株発生の可能性に加え、米長期金利が予期しない形で更に上昇することなどをその要因に挙げています。また、主要中央銀行に対し、緩和的な金融政策を将来、見直すに際しては、2013年に起こったバーナンキ・ショックのような事態を避けるべく、事前に明確なガイダンスを提供するなど、準備に向けて十分な時間を割くよう促しています。

【図表】[左図]IMFの世界経済見通し、[右図]主要国・地域の24年のGDP予測の振れ
  • 上記は過去のものおよび予測であり、将来を約束するものではありません。