温室効果ガスの排出量をゼロにするという、「脱炭素化」の流れが世界的に加速しています。
脱炭素化は、地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定が2016年11月に発効したことに伴ない、各国が取り組むべき課題とされていましたが、2017年に世界第2位のCO2(二酸化炭素)排出国である米国が、当時の大統領であったトランプ氏のもとで同協定からの離脱を発表し、実効性が大きく低下するとして、暗雲が立ち込めていました。しかし、2020年9月に開催された国連総会において、世界最大のCO2排出国である中国の習近平国家主席が「2060年までに実質的な排出量をゼロにする」と、カーボンニュートラル*を宣言したことに伴ない、再び、国際社会において注目が高まるようになりました。
温室効果ガスの排出と吸収でネットゼロにすること
昨年は、「アップル」が2030年までに、サプライチェーンや製品ライフサイクルにおけるカーボンニュートラルをめざすと発表したことや、「グーグル」も、2030年までにオフィスや世界中のデータセンタで使う電源について、温室効果ガスを排出しない、カーボンフリー化をめざすと発表したことなども、世界における脱炭素化への機運を高めたと考えられます。これに加えて、バイデン氏が大統領に就任したことに伴ない、2月に米国がパリ協定に正式復帰したことは、脱炭素化が世界的に加速に向かうことを印象付けました。
脱炭素化への動きとともに、近年では、再生可能エネルギー市場が拡大基調となっていますが、中国がそのけん引役となっていることは、意外と知られていないかもしれません。IRENA(国際再生可能エネルギー機関)が発表したデータによると、再生可能エネルギーの発電設備容量で、2018年に世界でトップとなったのは中国でした。
もともと、約14億人の人口を抱える中国は、目覚ましい経済発展を遂げる一方、世界最大のエネルギー消費国としての存在感も高まっていました。そして、化石燃料を使った電力消費量の増大などにより、大気汚染が社会問題化する中、中国政府は、「第13次5ヵ年計画(2016年~2020年)」において、石炭から再生可能エネルギーへのシフトを鮮明にしました。また、今年からの「第14次5ヵ年計画(2021年~2025年)」では、GDP1単位当たりのエネルギー消費量やCO2排出量の削減などの数値目標が掲げられており、カーボンニュートラル達成に向けて、しっかりと歩む姿勢が示されています。
脱炭素化は、これまで国際的な協力テーマであったものの、今や太陽光発電や風力発電、電気自動車関連の分野などを中心に、国家間の産業競争の場にもなりつつあります。それだけに、官民一体となって、今後どの国・企業が競争優位を高めていくかが注目されます。そして、株式市場においても投資家の高い関心を集めていくと考えられます。
![【図表】[左図]「脱炭素」に向けた世界の主な流れ、[右図]一次エネルギーシェアの世界見通し](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1698.jpg)
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