米国などを中心にワクチン接種が進む一方、変異株が猛威を振るっている国・地域も多く、新型コロナウイルスは引き続き市場の大きな関心を集めていますが、それに劣らない注目材料となっているのが、米国の財政・金融政策の行方です。

バイデン新政権は今年3月末、8年間で総額2兆米ドル超のインフラ投資計画を掲げ、財源に法人税率の引き上げなどを充てる意向を示しました。景気刺激と気候変動対策の両面で効果が期待される同計画について、与党・民主党は7月4日の独立記念日までの下院通過を目指すとしていますが、増税規模などを巡り、党内に異論もあります。また、増税に反対の野党・共和党は、投資規模を6,000億米ドル程度に抑え、ガソリン税の引き上げなどを財源の柱とする対案を準備中とされています。

なお、同計画は成長戦略の第1弾とされ、第2弾として発表される予定の社会福祉拡充策とあわせて、8月の議会休会入り前に成立する可能性も見込まれています。バイデン大統領は、就任後最初の100日間、いわゆる「ハネムーン期間」を4月末で終えますが、それとほぼ重なる28日に施政方針演説を行ないます。その際、第2弾の発表に加え、富裕層に対するキャピタルゲイン課税の税率引き上げにも言及する模様です。そして、最終的な規模と成立の時期は、米国の長期金利や金融政策などに影響を及ぼすと考えられます。

また、ワクチンの普及や大型経済対策などを背景に、経済活動正常化への期待や物価上昇観測などが拡がり、米長期金利が上昇気味となる中、「バーナンキ・ショック」あるいは「テーパー・タントラム」と呼ばれる、約8年前に起きたような金融市場の混乱を今回は回避できるかどうか、米FRB(連邦準備制度理事会)が今後、市場とどのように対話していくのかが注目されます。

FRBは、同ショックからの教訓もあり、量的金融緩和の縮小開始について、事前に余裕をもって周知させる意向です。そして、同緩和を、完全雇用と物価安定に近づくまで継続するとの指針を掲げていますが、パウエル議長は今月14日、利上げを検討するかなり前の段階で緩和の縮小を開始する可能性に言及しています。

FRBが今年3月に発表した経済見通し(中央値ベース)では、政策金利は少なくとも2023年末まで現状(0.00~0.25%)維持となっています。景気回復が続くことに加え、前述のインフラ投資計画が成立する可能性が高まるなどして、FRBの経済見通しが上方修正される場合、量的緩和の縮小開始について行き過ぎた憶測が市場で拡がることも考えられます。そうした憶測の台頭を防ぐべく、FRBが将来のシナリオについてさらなる指針を示すことが期待されます。

【図表】米国の主要日程
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成。スケジュールは予告なしに変更される可能性があります。
  • 上記は過去のものおよび予定であり、将来を約束するものではありません。