人の移動や交通に変革を起こす「MaaS(Mobility as a Service)」*の存在感が、異業種との連携によって、足元で高まりつつあります。
マイカー以外の複数の交通手段を組み合わせた、最適な経路の提案や決済まで行なうことができるサービスの総称
MaaSは、2017年に世界で初めてフィンランドでアプリとして導入されました。マース・グローバル社のウィム(Whim)というサービスによって、利用者がアプリに目的地を入力すると、電車やバスだけでなく、タクシーや自転車などを考慮した最適な移動手段や経路が複数提案され、希望を選択するだけで、予約から決済までをアプリ上で完結できます。現在では、日本を含む複数国で展開されるなど拡がりをみせています。また、フィンランドにおける導入後の調査では、マイカーの利用割合が大きく減少したとの結果が出ていることから、温室効果ガスの排出や交通渋滞の減少などの環境対策にも寄与することが期待されています。類似のアプリによるサービス提供は、日本でもトヨタ自動車が複数の移動手段を組み合わせた経路の提案から決済までを完結できる「my route(マイルート)」を一部地域で開始したほか、同様のアプリをJR東日本は「Ringo Pass(リンゴパス)」、小田急電鉄が「EMot(エモット)」としてサービスを開始しています。
一部には、新型コロナウイルス感染拡大によって、人との接触を避ける動きが強まったことが、公共交通機関などを活用するMaaSの発展に対する向かい風になるのではないかとの見方があります。しかしながら、足元では、異業種とMaaSの連携によって、社会問題を解決する「Beyond MaaS」の拡がりが、MaaS市場の成長を後押しすることが期待されます。
例えば、不動産業との連携では、MaaSアプリの利用を前提とした住宅販売によって、マイカーや駐車場が不要となり、居住面積を最大化できるだけでなく、渋滞緩和などの社会問題の解決が期待されます。また、医療業との連携では、看護師が同乗しているオンライン診療可能な車がMaaSアプリによって示された最適なルートで患者宅を巡回することで、患者の移動負担を軽減するだけでなく、質の高い医療の維持や、医師不足への対応が可能となります。
MaaS市場は、米国・欧州・中国の合計で、2018年の約1,000億米ドルから2030年には1.2兆米ドルにまで拡大すると予想されています。新型ウイルス感染拡大により、人々の移動に制約が生じる中、「Beyond MaaS」の拡がりが、MaaSの社会的な価値を高めるだけでなく、更なる市場拡大に寄与すると期待されます。
![【図表】[左図]米国・欧州・中国のMaaS市場規模、[右図]「Beyond MaaS」の事例](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-1701.jpg)
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