中国経済のいち早い回復に加え、他の国・地域での積極的な金融・財政政策や経済活動再開に伴なう需要回復などを受け、銅を中心に工業用金属の価格が急上昇し、中国での需要急増で市況が高騰した2000年代の高値に迫っています。

銅は幅広い製品に用いられることから、その需要や価格は景気動向を映すとされています。国際指標のLME(ロンドン金属取引所)銅3ヵ月先物の価格は5月5日に一時、1トン=1万米ドルを上回り、2011年2月につけた最高値の1万190米ドルに迫りました。また、アルミニウム価格も2018年以来の高値となっています。そして、新型コロナウイルスのワクチン接種の普及などに伴ない、経済活動の再開が進むに連れ、工業用金属には今後も堅調な需要が見込まれるほか、バイデン米政権が掲げる大型インフラ投資計画が実現する場合などには、需要が一段と押し上げられることも考えられます。

また、配線や電子部品などに用いられる銅の場合、脱炭素化の取り組みが世界で強化されつつあることも、需要押し上げ要因となっています。EV(電気自動車)を例にすると、配線に必要な銅の量はガソリン車の2~3倍とされています。

なお、好況時に買われる銅の価格を、不況時に安全資産として買われる金の価格で割った「銅金レシオ」は、世界景気の改善時に上昇、悪化時に低下する傾向があり、米長期金利と似た動きをすることで知られています。ただし、足元では、同レシオの上昇が続く一方で、米長期金利の上昇は一服気味と、両者に乖離が見られます。

ここで、工業用金属以外の商品の市況に言及すると、農作物についても、主要生産国での悪天候などを背景とした世界的な在庫低下に伴ない、小麦やトウモロコシ、大豆の価格が2013年以来の高値となるなど、市況が高騰しています。また、貴金属については、昨年、史上最高値を更新した金がやや水準を下げたものの、依然、高水準で推移しています。さらに、OPEC(石油輸出国機構)および非加盟の産油国による原油の協調減産の効果などもあり、エネルギー価格は回復しています。こうしたことなどから、国際商品全般の市況は2014年以来の高水準となっています。

こうした中、鉄鋼の原料となる鉄鉱石の価格が10年ぶりに最高値を更新したのを受け、鉄鋼メーカーが製品価格への転嫁を進めていると4月末に報じられました。景気回復が続く中、原材料価格の上昇を転嫁する動きが他にも拡がるようであれば、物価上昇に弾みがつくとの見方が台頭し、米長期金利の上昇が再び加速することも考えられます。それだけに、国際商品市況上昇の今後の動向に加え、価格転嫁の動きが注目されます。

【図表】[左図]国際商品市況の推移、[右図]銅金レシオと米長期金利の推移
  • (信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。