ここ数日、インフレへの警戒感などから金融市場が世界的に不安定となっていました。そうした中、12日に発表された、米国の4月の消費者物価指数が予想を大きく上回り、インフレへの警戒感が一段と強まると、欧米の長期金利が上昇したほか、ハイテク株だけでなく、景気敏感株まで売られるなど、米株式相場が大幅続落となりました。また、13日の日本でも、株価が続落しました。

米国の4月の消費者物価指数は、全体が前年同月比+4.2%、食品・エネルギーを除いたコア・ベースでも+3.0%と、それぞれ、2008年9月、1996年1月以来の高い伸びとなりました。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、前年に物価水準が低下した反動などから、前年比の伸びは高まると想定されていたものの、予想を上回ったほか、前月比でも、コア・ベースで+0.9%と、予想を上回り、1982年4月以来の高い伸びとなりました。

こうした背景には、新型コロナウイルスのワクチン接種の普及に伴ない、経済活動の再開が進む中、経済対策の現金給付などの寄与もあり、広範な分野で需要が拡大した一方、供給が追いついていないことの影響が大きかったとみられます。例えば、前月比+10.0%と、大幅上昇を記録した中古車価格の場合、寒波に見舞われた米工場の操業停止や日本での工場火災といったトラブルなどに伴なう半導体の供給不足などを背景に、新車の生産が落ち込んだ影響もあり、中古車の需要が大きく膨らんだことが価格上昇につながりました。

米FRB(連邦準備制度理事会)のクラリダ副議長は、4月の消費者物価指数の発表を受け、その急伸に驚いたことを認めた一方、物価の急上昇はしばらく続くものの、主に一過性の要因によるものであり、年末に向けて落ち着く可能性が高いとの見解を示しました。そして、現行の積極的な金融緩和策を縮小するのは、まだしばらく先になると示唆しました。

同副議長のコメントどおり、物価の先行きの見極めには、少なくとも数ヵ月を要するとみられ、その間に一過性の要因が解消に向かえば、インフレ懸念も和らぐと考えられます。例えば、前述の半導体の供給不足以外に、4月は求人が旺盛だったにもかかわらず、雇用者増加数が市場予想を大きく下回ったことも、インフレ懸念につながりました。その背景として、半導体不足に伴なう自動車の生産調整で製造業の雇用が減少したことなどに加え、失業給付の上乗せ・延長による、失業者の再就職意欲の後退も指摘されています。しかし、失業給付の上乗せの期限である9月6日を待たずに、今後、求職活動再開の動きが拡がると見込まれます。一方、一過性の要因がいつもまでも解消に向かわないなど、インフレ観測が強まる場合、FRBが金融政策の修正に舵を切る可能性も考えられます。

【図表】[左図]米消費者物価指数の推移、[右図]米主要金利の推移
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成。
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。