世界の株式市場は足元、下落基調となっています。米ナスダック総合指数は約1ヵ月半ぶり、日経平均株価は約3ヵ月半ぶりの安値水準となりました。

【下落の背景】
下落の背景には、米国で新型コロナウイルス向けワクチン接種が進展し、景気回復が進んでいることや、原油などの商品価格が足元で上昇していることなどから、インフレ懸念が強まっていることがあります。これを受けて、市場では、FRB(米連邦準備制度理事会)が金融緩和の縮小時期を早めるとの見方につながり、金利上昇に対する警戒感が高まっています。

こうしたことにより、これまで低金利環境が追い風になっていた、高PER(株価収益率)の米ハイテク株の割高感が意識されて株価が急落したことを受け、ハイテク株比率の高い台湾株や日本株も大きく売られるなど、世界の株式市場に影響が伝播しています。

【米国のインフレ率】
米国で12日に発表された4月の消費者物価指数は前年比4.2%の伸びとなり、市場予想(同3.6%)を大きく上回りました。これを受けて、米長期金利は上昇し、株式市場ではハイテク株を中心に株価が下落しました。

米消費者物価指数は、昨年4~5月に、新型コロナウイルス感染拡大による都市封鎖などの影響を受けて大幅に鈍化しており、前年比でみれば、経済再開が進む足元の物価水準が、統計上、高い数値になることは、想定内との見方もあります。FRB当局者も、以前から、インフレ率が今年上昇しても一時的なものになるとの見方を繰り返し示しています。

【リスクと今後について】
インフレ見通しについて、当局と市場の見方にギャップが生じていることが、株式市場の価格変動性を高める要因になっているとみられます。米当局者から新たなアナウンスなどがなければ、しばらくこうした状況が続く可能性はあります。

しかし、米IT機器大手やeコマース大手の21年1-3月期の業績は、米政府による個人向け現金給付も追い風となり、良好な結果となりました。さらに、市場予想によると、ナスダック総合指数のEPS(1株当たり利益)は、21年4-6月期に前年比2倍、7-9月期に同46%増と好調が見込まれています。

こうしたことなどから、足元で市場心理は動揺しているものの、実体経済が悪化し始めている訳ではないとみられます。そのため、市場の動揺が落ち着けば、業績が好調なハイテク株を中心に株価は戻ると期待されます。

【図表】[左図]日・米株価指数と米長期金利の推移、[右図]米・消費者物価指数の推移
  • 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。