2020年、コロナ禍で多くの国が導入した外出制限措置により、EC(電子商取引)利用が急増しました。今後は、ワクチン接種の進展などによる制限緩和を受け、消費者が実店舗に回帰するとみられています。しかし、消費者の行動や企業の取り組みを考察すると、実店舗とECを相互活用する新たな消費スタイルが見えてきます。

コロナ禍でECが急増
2020年の主要7ヵ国*の小売売上高は前年比1%減となりましたが、EC販売は同22%増と大きく伸びました。EC販売を分野別にみると、配車や旅行などのサービス関連は需要低迷で急減しましたが、消費財を取り扱う米Amazonや米Walmartなどが好調でした。また、関連企業ではカナダのShopifyが提供するEC向けプラットフォームの販売が大きく伸びました。
豪、カナダ、中国、韓国、シンガポール、英国、米国/2019年の世界EC販売の65%を占める
(UNCTAD(国連貿易開発会議)のレポートより)

実店舗とECの融合がスタンダードに
早くから実店舗とECの融合を進めている米Walmartの取り組みを紹介します。

同社は、オンラインで購入した商品を店舗で車のトランクに積んでもらうサービス、「カーブサイドピックアップ」を2015年ごろから導入しました。

さらに、2020年に新型コロナウイルスの感染が拡大する中、宅配を希望する消費者向けのサービス、「エクスプレスデリバリー」も開始しました。このサービスは、商品の在庫状況や配送車・配達員の空き状況、交通状況、気象情報などをもとに機械学習を活用して最適な配達経路を導き、受注から2時間以内に宅配するものです。こうして、実店舗とECの融合により、顧客の利便性が向上したのです。

このほか、ECサイトが実店舗を出店する事例として、例えば日本の藤巻百貨店があります。「日本をテーマにした逸品のみ」を取り扱い、メルマガ会員約10万人(2021年1月現在)を有するECサイトで、実物を見てから購入したい、という消費者ニーズに応えて実店舗の出店を始めました。

実店舗は、消費者に試着や体験などをしてもらうことで商品の魅力が伝わり易く、消費者の声も直接聞けるメリットがある一方、賃料などのコスト負担や来店客・営業時間が限定されるなどのデメリットがあります。デジタル活用は、このデメリットを補完するだけではなく、クーポン配布で実店舗の集客を増やし、ECサイトで閲覧した商品を実店舗で見てもらうことで成約率を上げる、といった相乗効果も期待されるのです。

人は一度便利さを知ると元に戻りたくなくなるものです。今後は、ECの利便性を享受しつつ、実店舗で試着・体験する、といった消費スタイルが主流になるかもしれません。

【図表】[左図]主要国の小売総売上高に占めるEC比率、[右図]世界のEC小売市場
  • 記載の銘柄について、売買を推奨するものでも、将来の価格の上昇または下落を示唆するものでもありません。また、当社ファンドにおける保有、非保有、および将来の個別銘柄の組み入れまたは売却を示唆するものでもありません。
  • 上記は過去のものおよび予想であり、将来の運用成果等を約束するものではありません。